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2002/04/30
超大国日本は必ず甦える
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70年代「日本の大躍進」を予言した未来学者のハーマン・カーンが創設したハドソン研究所。そのメンバーが彼の予測に基づいて再び日本復活を予言します。
日本に今欠けているのは自信です。ところが、書店の店頭にある本はどうでしょう。ほとんどが日本悲観論です。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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=今週の選書=
■超大国日本は必ず甦えるハドソン研究所 (著), 楡井 浩一 (翻訳)■
徳間書店
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■■ 今週のサマリー
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【1】
時代への逆行、ファシズムへの傾斜と敗戦はあったが、日本はそのたびに並
外れた回復力を示してきた。
経済危機の渦中にあって、そこに備わるパワーが見過ごされているが、日本
は経済的優位を取り戻すのに必要な力、内的資源を失っていない。
まず日本の労働者はまじめで、世界一能力が高い。そして管理者はまじめで
向上心に満ちている。先進技術は経済活動のあらゆる側面に浸透している。
また20世紀の後半はコンピュータであったが21世紀の始まりはバイオテクノ
ロジーの時代だ。日本はこの分野で主導的役割を担う力がある。
もともと日本文化には成功と弾力性という要素が備わっている。日本人が無
気力になったり、悲観論者の見識を信じたりすることは大変な間違いだ。
【2】
もちろん巨額の債務、失業率、円安、株の持ち合い、不透明な企業会計、政
府の失政、改革を妨げる文化的障壁や慣習が存在することは認識している。
また経済の低迷、急速な高齢化といった困難な状況に加え、変化を好まない
国民性など問題はある。しかし日本には他の国にはない財産がある。
かつてハーマン・カーンが指摘した点には日本の将来を楽観させる根拠が豊
富にある。具体的には次のとおりだ。
・何度も内閣が変わっても安定したリーダーシップ
・依然として高い評価の日本製品
・高い貯蓄・投資率
・高いレベルの技術力と教育
・アジア諸国の中で断然高い貸付と株取引の集中
・一つの目的に向かって共同体のために働く国民性
・GNPの1%以下の防衛費
・政府が確約した不良債権処理への取組み
・コンピュータ、テレビ、カメラ、自動車など優位の優位性
・安定したインフレ率
・原子力エネルギーへの多額の投資
単独ではどれも日本の困難を解決できそうもない。しかし個々の強みではな
くこれらが結集した時、日本経済は上昇に向かうはずだ。
【3】
もちろん、これまでのような高い成長率は望めない。しかし2から3%の成長が
続けば、21世紀はじめに新世代の豊かな日本人が生まれるはずだ。
いくつかの複雑な技術革新が同時に起き、社会が大きく変化する時期がある。
日本では明治維新や第二次大戦の敗北の時期にこれを経験している。
次世代では、バイオと遺伝子工学、ナノテクと分子加工、宇宙資源の利用、
最先端情報科学とソフトウエア、非生物起源石油や天然ガスがこれをもたら
すだろう。
それは技術にとどまらず、社会・経済の新時代となる。これが21世紀最初の
数十年で爆発するはずだ。
こうした急激な社会転換に日本はこれまで西欧諸国以上に適合してきた。し
かもその後も日本人は日本であり続けてきたのだ。
【4】
日本はいま政治変革と社会変革を断行すべき状況に立たされている。
この二つの変革が成功すれば、現在の経済情勢に効率的に対処できるように
なる。日本が本来持っている強みを活かすことができるだろう。
70年代、資源の乏しい日本は、突然のエネルギー不足に直面し、産業界は危
機感に襲われた。
しかし70年代末までに"構造調整を果たして新たな経済勢力となり、工業競
争の最前線に躍り出た。20世紀初めには誰も想像しなかったがそうなった。
21世紀に足を踏み入れた今、日本人はこのことを思い出すべきではないか。
【5】
日本では農水省だけでなく、有識者のあいだにも外国からの米輸入や余剰農地
の利用転換に反対する意見が根強い。
だが高度に発達した穀物貯蔵法や輸送システムを有する日本が、狭い場所にひ
しめき合って暮らしているのは今も1920年代の土地利用パターンの枠組みにと
らわれているからだ。
住宅、公園、商店の建設に利用できる土地が、いまより10万ヘクタールから20
万ヘクタール多かったら、日本人の生活の質ははるかに向上したはずだ。
また農地の転用を緩和する政策がとられていたら、日本経済をここまで低迷さ
せた投機的な土地バブルを防ぐことができたはずだ。
今やひとつの遺伝子を導入するだけで、米の生産量を35%増やすことが可能な時
代だ。それでも日本人はこれまでの50年のように狭い場所で生きるのだろうか?
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■■ 今週のコメント
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70年代「日本の大躍進」を予言した未来学者のハーマン・カーンが創設したハ
ドソン研究所。そのメンバーが彼の予測に基づいて再び日本復活を予言します。
日本に今欠けているのは自信です。ところが、書店の店頭にある本はどうでし
ょう。ほとんどが日本悲観論です。
これを大別すると、次の二つに分かれます。
「ますます悪くなるぞ、日本経済」という"ますます悲観型"
「一体、誰がこんなにした日本経済」という"責任追及、八つ当たり型"
どちらも、言っても仕方ないことを愚痴るだけで、悲観論の域をでません。
いわば"愚痴り本"です。
こんな"愚痴り本"横行の本の中、本書は「いやいや、日本は大丈夫!」と
いう力づよい論調で展開する点が目を引きます。しかも海外の著書です。
本書の論拠は、日本に奇跡を起こした強みが、今も健在であることです。向
上心あふれた労働者、高い先進技術、そして次世代を担うバイオの分野でも
日本は主導的役割を担う力があるのです。
21世紀、世界の繁栄の鍵を握るのがアジア経済発展なら、その牽引役は日本
と断じます。そして、なんと日経平均は3万5千円をつけ、年間成長率は5%
を回復するといいます。
これだけ明るい見通しとエールを送られれば、もはや悲観論に明け暮れて自
信喪失している場合じゃありません。
もちろん本書も指摘するとおり、日本の先行きは手放しで楽観できません。
むしろ厳しい課題のほうが多そうです。しかし本書の良いところは、何が問
題で何をやるべきかを明言しているところです。そこが"愚痴り本"と違い
ます。
人はやるべきことが明らかなら、どんなに難しくてもがんばれます。そのが
んばりで元気になれます。
"景気の気は、気分の気"と言ったのは、かの堺屋太一さんです。それだけ
で"愚痴り本"は有害です。さあ"愚痴り本"に別れを告げ、明るい未来を
描こうではないですか!
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