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2003/02/28
「超」納税法
著者自らの体験とわかりやすい事例をもとに提案する納税のノウハウを語ります。
「日本の税制度はサラリーマンにとって不利だ」と言われる。理由
は「サラリーマンは所得が給与なのでガラス張りで、税額が自動的
に決ってしまう」とからだ。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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=今週の選書=
■「超」納税法
■野口 悠紀雄 (著)
■新潮社
▼本書の詳細、お買い求めは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104329029/tachiyomi-22
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■■ 選書サマリー
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著者自らの体験とわかりやすい事例をもとに提案する納税のノウハ
ウを語ります。
【1】
「日本の税制度はサラリーマンにとって不利だ」と言われる。理由
は「サラリーマンは所得が給与なのでガラス張りで、税額が自動的
に決ってしまう」とからだ。
また「サラリーマンは必要経費を申告することもできない。一方、
事業所得や雑所得あるいは法人所得なら、あらゆる費用を経費や損
金として処理できる」ともいう。果たしてそうだろうか?
まず、意外かもしれないが、日本の会社の大半を占める同属会社の
社長もその家族も、税務上は給与所得者だ。
彼らの給与所得は、税務署に届けてあり、ガラス張りだ。税額も自
動的に決まる。この点はサラリーマンとかわらない。
【2】
これに対し「それ以前に所得を算出する際の経費に問題がある」と
の反論もある。例えば「事業者や法人の経費の範囲が広すぎる」と
して、次のように言う人がいる。
「経営者たちは、背広や私的な旅行・会食の費用、贈答品、子供の
結婚式の費用まで経費で落としている。高価な外車を乗り回す若者
は社長のどら息子で、車の費用は会社の損金に違いない。
しかし事業をやっていればこうした支出が経費になるという考えは
誤りだ。背広や結婚式の支出は、いかなる所得であれ経費や損金と
して認められない。
確かに、車関係の支出や旅行・会食費の一部は、経費として処理で
きるが「事業に必要なものか」という点が、税務調査でチェックさ
れ、事業に必要ないものは、まず税務調査を通らない。
【3】
また、サラリーマンに経費が認められていないというのも、誤解だ。
代わりに給与所得控除がある。これは経費の概算控除と言え、寛容
な経費控除が認められていると言える。
例えば、年間800万円の給与なら、給与所得控除は200万円になる。
これだけの額が、領収書も、収入との関連性の証明もなく、自動的
に「必要経費」と認められるのだ。
脱サラして事業を始めた人は「サラリーマン時代は楽だった」とい
う。自分で経費を積算しても、とても給与所得控除ほどの額になら
ないからだ。
現在の給与所得控除は、サラリーマンの経費概算としては、大きす
ぎると言わざるをえない。実際、国際的にみても日本の給与所得控
除は、著しく高い水準にあるのだ。
【4】
しかし「私的支出は、経費として認められない」と言いながら、こ
うした申告が通ってしまうことは、実際にはかなり多いと思われる。
だが申告を自分でしないサラリーマンには、そうした可能性がない。
また、上述のとおり同族会社の社長のほとんどが給与所得者であり、
彼らの給与に対しても給与所得控除がしっかり適用されている。
つまり、会社が売上げを得るための経費として、社長やその奥さん
の給与が控除され、さらに彼らの給与からも経費の概算である給与
控除がされているのだ。
これは2重控除だ。経費が2重に控除されれば、税額計算上、有利
になるに決まっている。これらは、本来税制改革で検討されるべき
重要な問題だが、今のところ検討すらされていない。
【5】
このように、日本の税制は歪んでいる。だが現在の日本の政治構造
で、サラリーマンの税制について本当の「抜本改革」が当局から提
案されると期待するのは「百年河清を俟つ 」ようなものだ。
ではサラリーマン税制の合理化は、不可能なのか?日本のサラリー
マンは、申告納税制度の外に置かれた現在の状態に、いつまでも甘
んじなければならないのだろうか?
そんなことはない。現行制度下でも、他の所得者と同じ扱いを受け
ることは可能だ。
サラリーマンが自ら会社を設立し、その社長に就任すればいいのだ。
そして現在の勤務先との間で契約を結んで報酬を得、その報酬から
自分と家族に給与や役員報酬を支払えばいいのだ。
▼本書のお買い求めは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104329029/tachiyomi-22
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■■ 選書コメント
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「超」シリーズの経済学者が、日本の税制の本質を語ります。著者
自らの体験と、わかりやすい事例をもとに、納税の仕組みを解説し
ています。
税金と言えば、昨年配信した「お金もちになれる黄金の羽根の拾い
方」でも、手法の中心は節税でした。こちらも好調に売れているよ
うで、税金(節税?)に関する関心の高さが伺えます。
今回の「超」納税は、この「お金持ちに?」の内容を包含していま
す。つまり「法人を作って、法人が赤字になるように自分と家族に
給与を払い、そこからさらに給与所得控除を引く」という方法です。
ただ「お金もちに?」のほうは、「サラリーマンは、惜しみなく奪わ
れる人」として、いわば見棄てているのに対し、本書では「サラリ
ーマン法人」というサラリーマンのための解決を示しています。
これは、会社からは形式上独立し、会社と業務委託契約を結び直す
というものです。こうすることで、現行の仕事の内容や勤務時間な
どを変えずに、節税が図れるというアイデアです。
私はこれを「サラリーマンのままで法人を持ち、節税できる」と勝
手に解釈し、自分の提唱する「週末起業」に活かせそうだと思い、
読み始めたのですが、そうでないことが分かり、がっかりでした。
結局、形式的とは言え、会社を辞めることになるからです。
ただ「サラリーマン法人」のコンセプトは、参考になります。今後、
好むと好まざるとに関わらず、サラリーマンの雇用形態はこうした
方向に進むと考えられるからです。
米国では、個人やミニ企業の形態で働く人が、すでに全労働者の約
4分の1になっているそうです。米国社会は組織の時代からフリー
エージェントの時代に転換しようとしているのです。
日本経済でも、こうした動きが一般的になることは間違いないでし
ょう。本書はそのとき「会社とどのように雇用条件を詰めたらいい
のか?」といった問いにも答えてくれる手引きになるでしょう。
▼関連書籍「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344002628/tachiyomi-22
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