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2003/07/11
グローバル経済の本質■国境を越えるヒト・モノ・カネが経済を変える

グローバル経済の本質■国境を越えるヒト・モノ・カネが経済を変える

今週は気づかぬうちに我々の生活を取り巻くグローバル経済の流れの意味を身近でバラエティーに富んだテーマから解き明かす本です。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━< 読者数16850部 >━━
=今週の選書=
■■グローバル経済の本質
■国境を越えるヒト・モノ・カネが経済を変える
■伊藤 元重 (著)
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■■  選書サマリー

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今週は気づかぬうちに我々の生活を取り巻くグローバル経済の流れ
の意味を身近でバラエティーに富んだテーマから解き明かす本です。

【1】

9・11の同時多発テロは、世界経済がいかにニューヨークの、あ
の狭い地域と結びついているかを明らかにした。その影響はテロ発
生直後からはじまった。

当時、日本の株式市場では日経平均がかろうじて1万円の大台を維
持しており1万円を割るかどうかが大きな関心事だった。ところが
事件翌日の市場開始直後一万円を割り、その後大きく下げていった。

このときの東京市場の取引で、ソニーやホンダなどの国際銘柄の株
が大量に売られた。これを見た多くのマスコミは「アメリカ市場に
多くの製品を販売している企業の株が売られた」と報道していた。

しかし実際は、テロによって予想される経済の混乱に対応するため、
多くの外国人投資家が株などの資産を債権や預金といった、安全で、
流動性の高い資産に移したことが原因だ。

だから外国人が多く保有するソニーやホンダの株が売られたのだ。
このように世界中のマネーがベストのタイミングでその時開いてい
る市場を狙ってくる。まさに世界の市場は一体化しているのだ。

【2】

時間が経過するに連れて、事件による経済的波及が幅広く、かつ深
いものであることがわかってきた。

例えばニューヨークから何千キロも離れた台湾のハイテク企業は、
テロ直後から厳しい生産調整に追い込まれた。理由は現在、台湾で
生産されたハイテク部品は飛行機でアメリカに運ばれるからだ。

米国の工場はできるだけ在庫を持たない。トヨタのカンバン方式の
ように、必要なときに必要なだけ台湾の工場から届けてもらう仕組
みができあがっているのだ。

テロ直後からアメリカ発着の航空機はほとんど全面的にストップ状
態になり部品が運べなくなった。そのためアメリカの工場では操業
停止状態が続き、台湾の工場には在庫の山が積み上がったわけだ。

【3】

日本では、寿司の値段に異変が起きた。日本の寿司屋で売られてい
る高級マグロは、実はかなりの部分がボストンなどのアメリカ東海
岸から空路で日本に運ばれているのだ。

航空機のストップでマグロが入らなくなったため値が上がった。今
や国際航空システムが機能しなければ、日本にいても寿司さえ手に
入らない時代になっているのだ。

このテロで保険業界も大きな影響を受けた。巨大なビルが崩壊し、
多くの生命が奪われ、何機もの航空機が破壊された。また多くのビ
ジネスチャンスも犠牲になった。

このとき失われたものには、軒並み保険がかけられていた。そして、
そのほとんどすべてが保険金の支払いの対象になった。

現代では、保険会社は世界的な規模で複雑なネットワークを形成し
ている。個々の保険会社はいろいろな保険契約を受けるが、大きな
案件については他の保険会社に再保険をかけているのだ。

【4】

だから今回のような大きな事件や事故が起きると、世界のあらゆる
地域の保険会社が影響を受けてしまう。

しかも今回のテロは誰も想定できないような事件であった。そのた
め保険会社の負担は、想像をはるかに超える規模にふくらんだ。

日本の最大手の保険会社の負担は100億円規模で済んだ。だが欧州
の保険会社の中には「この事件が原因で破綻するところが出てもお
かしくない」とまでいわれた。


このように経済のグローバル化は進み、いまでは巨大なネットワー
クになっている。例えば何気なくスーパーで買っている牛肉も世界
中の気候、政治情勢、物流など様々な要素から影響を受けている。

【5】

こうした多様な要因が変化される中で生産され流通され、消費者の
口に入るまでに、どこかで需要と供給がバランスし、その上で様々
な経済活動が営まれているのだ。

そのため、遠く離れたところで起きた事件も、私たちの日常の生活
に影響を及ぼす。

これが私たちの豊かさを支えている反面、テロのような大きな事件
起きれば被害をこうむるリスクを抱えている。

私たちが日常生活しているローカルな経済は、意識していなくても
グローバルな世界とつながっているのだ。

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■■  選書コメント  
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本書を読むとグローバル経済の動きは、決して私たちから遠いとこ
ろでなく、日々の生活の中で起きているモノだということがよくわ
かります。

著者、伊藤元重氏は国際経済学、流通論が専門の経済学者ですが小
渕内閣時に経済戦略会議に参画するなど、経済全般にわたる幅広い
提言で知られる人物です。

「なるほど経済」(NHK) 「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東
京系) など著書でなく「ブラウン管でおなじみ」という方も多いの
ではないでしょうか?

"グローバル化"などと言うと大仰な感じがして「マルドメ(まる
でドメスティクの略。国外の事情とは無関係な人のこと)の自分に
は関係ない」と考える人も多いかも知れません。

しかしこの流れは海外などとは全く縁がないと考えている人々の生
活にも大きな影響を与えています。その動きを加速しているのが、
ご存じインターネットです。

いまでは国境という垣根は非常に低くなりました。パソコンと英語
読解力、そしてクレジットカードさえあれば、世界中のモノが、簡
単に安く手に入ります。

このようにお客さんが国際化している以上、自分たちがマルドメを
貫きたくても、否応なく海外のお店と競争しなければならず、それ
が不可能であることがわかるでしょう。

また今や情報とお金だけでモノを介さないビジネスなどいくらでも
あります。

例えば海外に住みネットで日本企業の仕事をし、給与は日本の口座
に振り込んでもらい、生活は日本発行のクレジットカードで済ませ
る。こうすれば国境など意識せず、海外で生活ができてしまいます。

これは、個人レベルでは単にモノが安く買える、海外で快適に仕事
ができるという話ですが、国というモノの役割、そして存在理由ま
でも揺るがしてしまいかねないレベルに発展する話なのです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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