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2003/07/25
はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━< 読者数16800部 >━━
=今週の選書=
■はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
■マイケル・E. ガーバー (著)、原田 喜浩 (翻訳)
■世界文化社
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■■ 選書サマリー
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アメリカの起業家たちに最も影響を与え続けているバイブル的な一
冊です。今まで日本にはなかった、スモールビジネス版「金のなる
木」のつくり方を解説します。
【1】
経営者は必死でがんばっている。だがどんなにがんばっても会社の
業績は低迷し、十分な収益を確保できない。これが起業したばかり
の小さな会社の現状ではないだろうか?
こうして、起業した会社の大半は倒産に追い込まれていく。事実、
米国では毎年100万人以上が会社を立ち上げるが、1年目で40%、5
年で80%の会社が姿を消している。
さらに5年間生き延びた会社も、80%が次の5年で姿を消す。原因
は経営者の努力が足りないからではない。
努力の方法が間違っているからだ。例えば、多くの人が、起業に対
する間違った前提を持っている。これが失敗の確率を高めている。
【2】
高い理想を持ち、地道な努力を重ねた起業家が、最後に成功を勝ち
取る。これが起業家のイメージではないだろうか?だがそれはテレ
ビや雑誌のサクセスストーリーのために美化した神話に過ぎない。
実際には、そのような起業家はほとんどいない。確かに最初はビジ
ョンや情熱を持っているかもしれない。だが、そんなものは仕事を
するうちに失われていくものだ。
多くの人が会社を立ち上げるきっかけは、ふと「何のためにこの仕
事をしているのだろう?どうしてあんな上司のために働いているの
だろう?」などという考えが頭をよぎった瞬間だ。
こうした考えが「人から指図をされず、自分だけの仕事がしたい」
という気持ちに発展する。こうして起業に突き進む。だがこうして
起業した人の多くは財産を失い人生を棒に振ることになる。
【3】
「自分はその道のプロだ」と自負して起業する人が多いが、それは
「事業の中心になる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は
備わっている」と考えるからだ。しかし、それは決定的間違いだ。
事業の中で専門的な仕事をすることと、その能力を活かして事業を
立ち上げることは別の問題なのだ。にもかかわらず、多くの人たち
は会社を経営するという面を見落としたまま起業してしまう。
こうして大工や電気工、美容師、技術者、ミュージシャンと言った
人たちが自営業者となる。彼らは専門的知識さえあればその分野で
事業を立ち上げ、成功することができると信じているのだ。
ところがいざ起業してみると、帳簿をつけたり人を雇ったりと、こ
れまで経験したこともない仕事が次々とわき出してくる。こうした
予想もしなかった仕事に追われ本業に手が回らなくなってしまう。
【4】
事業をおこしたばかりの人は3重人格者だ。「起業家」「マネージャ
ー」「職人」の3つの人格をあわせ持っている。その人の内面では、
それぞれの人格のどれもが主役になりたくて主導権争いをしている。
状況に応じてこの人格のどれかが、残りの2つをコントロールして
いる。「起業家」が事業を立ち上げ、「マネージャー」が管理し、「職
人」が実務をこなしていく。
この3つのバランスがとれた時、人は驚くような能力を発揮する。
しかしこの3つをバランスよく備えた人はほとんどいない。
起業することが会社勤めより大変なのはこの点だ。会社勤めの人が
この3つのうち一つだけ発揮すればいいのに対し、起業するとこれ
らすべての能力を高め、発揮していかなくてはならないからなのだ。
【5】
人が成長するように事業も成長する。事業が大きくなれば、それを
支えるもっと強い仕組みが必要になる。経営者の仕事とは自分と事
業が成長するための準備をすることであり、それを作ることなのだ。
具体的には、収益を生み出す事業を定型化して、パッケージにする
ことなどが考えられる。つまり自分がいなくても、ほかの人が同じ
ように事業を回せる仕組みをつくるのだ。
その時フランチャイズの成功の要因を知り、自社に応用すると成功
確率は格段に高くなる。フランチャイズを賞賛するわけではないが、
フランチャイズ企業のほうが、生き残る確率が高いのも事実だ。
そして何よりも大事なことは、会社を変えたいなら、まず自分が変
わらねばならないということだ。自分が変化を望み、変わらない限
り、会社が収益を生む仕組みになることは、決してないのだ。
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■■ 選書コメント
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スモールビジネスを対象に経営コンサルティングを20年以上行い、
25000社に及ぶ企業にアドバイスをしてきた著者が、その経験を通
して得たスモールビジネス成功のノウハウを明かします。
本書は人に任せても事業が成長する仕組みの作り方を詳しく解説し
ています。経営者が本物の経営者に脱皮するための参考書として、
一読をおすすめします。
内容もさることながら、個人的には同業者として著者のスピリッツ
に共感します。著者は「スモールビジネスは道場だ」と言います。
スモールビジネス経営は絶えず新しい試みが求められる学習の場な
のです。
確かにスモールビジネスは、手頃なサイズに縮小された小宇宙と言
えます。自分の行動が即、結果として表れるほど小さく、また完結
しているため、自分のアイデアを試みるのにぴったりなのです。
ここで自分が質の高い商品やサービスを提供すれば、お客様も従業
員も感動させるような世界を実現することができます。そこにおも
しろさも醍醐味もあるわけです。
会社勤めを何十年続けても、ビジネスを完結する機会が持てる人は
多くありません。組織で働く限り、営業、経理などの仕事をパーツ
として経験するのがせいぜいだと思います。
こうなると自分の働きかけがビジネスそのものを変える経験はでき
ません。その点スモールビジネスなら、小さいながらも自分のふる
まいが企業の価値を高めたり低めたりすることになります。
小さな小宇宙を手にできること、これがスモールビジネスであり最
大の魅力です。
起業する人の中には、自分のビジネスを単なるお金儲けの道具と考
える人もいますが、むしろ自分の腕試しの場、そして自分が成長す
るための道場と考えれば、経営はもっと面白くなるはずです。
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