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2003/08/29
リーダーシップの本質―真のリーダーシップとは何か
「リーダーシップは学んで掴み取るもの」という著者によるリーダーシップの本質論です。
日本の歴代の首相で、真のリーダーシップを発揮した本当のリーダ
ーは、現職時には評価されなかった人が多い。大反対を押し切って
強い権限を行使したからだ。彼らは大衆の判断に従わなかった。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 16958部>━
=今週の選書=
■リーダーシップの本質―真のリーダーシップとは何か
■堀 紘一
■ダイヤモンド社
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■■ 選書サマリー
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「リーダーシップは学んで掴み取るもの」という著者によるリーダ
ーシップの本質論です。
【1】
日本の歴代の首相で、真のリーダーシップを発揮した本当のリーダ
ーは、現職時には評価されなかった人が多い。大反対を押し切って
強い権限を行使したからだ。彼らは大衆の判断に従わなかった。
大きな反対を無視して進むことは、民主主義の概念と矛盾するよう
だ。だが彼らが戦後の日本を正しい方向に導いたのは事実だ。
民主主義とは全体の幸福を実現するための基本理念だ。しかし状況
判断や意思決定に全員が関わる必要はない。なぜなら状況を的確に
判断するには極めて高い能力、技術、知識、経験が必要だからだ。
仮にそこに全員が参加すれば、判断を誤る危険性が高くなる。私利
私欲が入る可能性も高まる。少なくとも国家や企業の重要な決定に
は、現在だけでなく未来の予測も加えて判断する先見性も不可欠だ。
だからこそ、私益を超えて公益を求める犠牲的精神、豊富な情報を
集め分析する力、風向きをとらえ正しい認識ができる力、常に最善
の選択をする決断力を持つ真のリーダーが、一人で決断すべきだ。
【2】
これからの社会では、こうしたリーダーシップが不可欠だ。その大
切さは、皆すでに感じている。だが今の日本には、正しくリーダー
シップを行使する真のリーダーが極めて少ない。
自分の利益のためだけでなく、組織全体のことを考え、理性的精神
をもって組織を向かうべき方向にリードする意志と能力を持ったリ
ーダーの不在は、特に政治の分野においてはなはだしい。
日本リーダーがいないのは、意識して育てて来なかったからだ。日
本で民主主義とは平等のことだ。しかもそれは機会の平等でなく、
結果の平等だ。だから横並び教育をむねとしてきた。
だがリーダーシップ教育とは、上に立つ者が責任を担って権力行使
を行うためのものであり、一種のエリート教育であるべきた。これ
は日本では、むしろ悪いものとされ、行われてこなかった。
【3】
組織を発展、存続させるうえでリーダーシップは必須だ。だが日本
のトップはこれを学ぶ機会が与えられなかった。東証1部上場の大
企業ですらリーダーシップを持たない社長が相当いる。
そのリーダーシップの欠如が、企業を停滞させている。だが社長だ
け責めるのは酷な話と言えよう。彼らはサラリーマンとして管理職
の階段を上って社長になったのだ。
人格が優れ、仕事ができる、実績もあるという理由で選ばれたのが
日本の社長だ。当然、リーダーシップ教育など受けたことがない。
だから役職は代表取締役社長でも、真のリーダーシップを持たない。
これが本人だけでなく社員や株主まで不幸にしている。
【4】
リーダーシップ教育の欠如は、戦後の学校教育のあり方に関連する。
日本では、生徒が何も考えない教育がされてきた。言われたことを
言われた通りに、きちんと果たす人間が好まれてきたのだ。
例えば日本の小学校では、運動会が近づくと一斉に入場行進の練習
をする。しかし運動会できれいに足をそろえて入場する必要など、
今やどこにもない。
それは自動車など精度の高い製品を世界に送り出し、日本を豊かに
することに役立った。だがそのシナリオはすでに過去のものだ。に
もかかわらず、教育の現場では今もその考えない教育を続けている。
今、求められているのは自分の頭で考え、創意工夫できる人間だ。
まして経営者なら、それ以上に大きく、深く考え、会社を誤りのな
い方向に導いていかなければならない。だがそうした教育は全く行
われていない。
【5】
今、この苦境によって表情に苦悩をにじませている経営者の多くが、
その原因がリーダーたる自分の責任だということに気づいていない。
組織はリーダー次第で平凡にも非凡にもなるのだ。それを自覚する
には、リーダー自身が、リーダーシップについてもっと真剣に考え
なければならない。
そして将来リーダーになろうと考える人は、20歳前後の学生時代か
ら、他の人とは違う心構えを持つ必要がある。その段階から特別に
学び、身につけ、それに従って行動するべきなのだ。
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■■ 選書コメント
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日本を代表する経営コンサルタントの堀紘一氏が語るリーダーシッ
プ論です。リーダーに必要な圧倒的な能力、人間の大きさを得るた
めの方法を解説しています。
私自身、堀紘一氏の著書はほとんど読みましたが、本書には類書と
違う気迫を感じます。20年の経営コンサルティングの中で、日本を
代表する経営者たちとの接近戦を総括した感じです。
ベースにあるのは「リーダーシップは学んで掴み取るもの」という
信念です。一般に経営者は絶大な権力とリーダーシップを発揮して、
会社をぐいぐい引っ張る頼もしい存在としてイメージされています。
そのため経営者とは何か天性の、特殊な能力を持った存在で、生ま
れつき経営者だったような印象を持たれがちです。しかし実情は、
かなり努力も、苦労もしているつらい立場なのです。
しかもそのつらさ、社内の誰も理解しません。何せ他の誰一人とし
て経営者になったことが無いのですから。一番つらいのは、誰にも
責任転嫁できないところです。
問題が起きても、社長に責任がないということはありえません。誰
かのせいにしても「では、それをやらせたのは誰だ」ということに
なり、最後は社長に行き着くのです。
まあ、それでも経営者の中には、経営の不振を社員の無能のせいに
する人もたくさんいます。ただ、それは「天に向かってツバをする」
ことで、本来は許されないことです。
だから私は「経営者が社員の悪口を言うことは許されないことだ」
と言いながら、できるだけつき合っています。それは当の経営者も
わかっていながら、私にしか話せないのだ、と思うからです。
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