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2003/08/15
なぜYAHOO!は最強のブランドなのか
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 16750部>━
=今週の選書=
■なぜYAHOO!は最強のブランドなのか
■カレン・エンジェル (著), 長野 弘子 (翻訳)
■英治出版
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■■ 選書サマリー
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落ちこぼれの大学院生2人が趣味で始めたサービスが、あっという
間に巨大メディア企業へと変貌!ヤフーの秘密に迫ります。
【1】
インターネットブームの熱狂を振り返ったとき、まず思い浮かぶ企
業、それがヤフーだ。
スタンフォード大学の電子工学科で学ぶ2人の大学院生がキャンパ
ス内のトレイラーで始めたホームページは、瞬く間に巨大メディア
企業に成長した。
ヤフーは1990年代のポップカルチャー、起業家精神、株式市場のあ
り方を象徴するばかりか、時代そのものを象徴した企業だと言える。
ヤフーの物語は、巨万の富を得て世界の頂点に立ったインターネッ
ト企業の成功物語であると同時に、ネットバブル崩壊で、一変して
苦難の道を歩むことになった、波乱万丈の物語なのだ。
【2】
もともとヤフーは株価情報からチャットルーム、不妊症、さらには
生物化学兵器に至るまで、ありとあらゆるジャンルのサイトをわか
りやすくまとめたディレクトリ・サイトとしてはじまった。
当時25歳のジェリー・ヤンと、27歳のデビッド・ファイロは、大
学の博士論文を書くのに飽きていて、お気に入りのウェブサイトを
集め、それをサイトで公開することに没頭していた。
その後、さらにサイトを効率よく見つけ、さくいん化するために便
利な検索エンジンを開発、できるだけ多くのサイトを分類しようと
した。その検索エンジンは使い易さからまたたく間に人気を博した。
次第に多くのユーザーがヤフーサイトを訪れるようになった。その
間、アナリストたちは「インターネットはテレビや新聞に代わるメ
ディアになる」と予測、この波に乗ってヤフーは大きく飛躍した。
【3】
1996年、ヤフーは株式公開する。すでにプロバイダーなどのインフ
ラ企業は株式公開しており、投資家達は次のターゲットとして消費
者向けのサービス、すなわちコンテンツ事業に注目し始めていた。
すでに、ヤフーの競合企業であるエキサイトやライコスは株式公開
の計画を発表していた。ヤフーも、次のステージに飛躍するために
は彼らに遅れをとるわけにはいかなかった。
当時、競合他社より早く上場することが何より大事と考えられてい
た。なぜなら早く上場すれば、より多くの資金が集まるからだ。よ
り多く資金が集まれば、より多くの企業を買収できることになる。
結局「ヤフーは21世紀を代表する巨大企業になる」という期待感か
ら、株式公開は大成功に終わった。ヤフーの時価総額は8億4800
万ドルにおよび、これが投資家たちを熱狂させた。
【4】
この時ヤフーを狙う会社の一つに、年商17億ドルのソフトバンクが
あった。孫社長はヤフーの可能性を高く評価し、自らカリフォルニ
ア飛び、創業者2人に直接会い、ヤフー買収を申し出た。
ヤフーはすでにAOLやマイクロソフトからも買収の申し出を受け
ていたが、いずれも断っており、売却など考えてもいなかった。そ
こで孫社長は1億ドルの投資を申し出た。
ヤンとファイロは、この提案に苦しんだ。承諾すればヤフーの3分
の1を手放すことになる。株主が体制に懸念を持つかもしれない。
また自由な企業文化に大きな影響が及ぶかもしれない。
このようにいろいろな意見が出たものの合理的に判断して、この申
し出を受け入れることにした。
【5】
上場に成功してから、ヤフーは世界に目を転じた。当時、既にユー
ザーの35%が国外から来ており、世界進出でさらに多くの海外ユー
ザーを獲得できることは確実だった。第一歩は日本市場に決めた。
上場のわずか10日後、ヤフー・ジャパン開設が発表された。橋渡し
役はソフトバンクだ。こうして米国のIT企業の中で、最も早く世
界進出したヤフーは、その後も次々に国際市場を攻めることになる。
特にヤフー・ジャパンはヤフーにとっても最大の利益を生み出す事
業になった。その理由のひとつに、日本の広告主にはドットコム企
業が少なかったことがあげられる。
当時ヤフー・ジャパンの広告売上にドットコム企業が占める割合は
わずか25%、他は旧来の企業だった。結果論だが、これがバブル崩
壊後ヤフーの売上が激減することを防いでくれたと言われている。
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■■ 選書コメント
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大学院生2人が趣味ではじめたサービスが、瞬く間に巨大企業に変
貌したのはなぜでしょう?またバブルの象徴だった同社が、バブル
崩壊後も生き残り、最強のブランドになったのはなぜでしょう?
本書を読むことで、その疑問の答えが出るかも知れません。本書は、
米ヤフーの設立から、現在にいたるまでの歴史を、大勢の関係者に
話を聞くことでまとめられたものです。
特に、設立の様子をよく知るレンタルCEOのフィル・モネゴーなど、
これまで表舞台にはあまり登場してこなかったマイナーな人にまで
取材しており、情報は貴重なものばかりです。
本書を読むことで、ヤフーの強さのヒミツが垣間見えるはずです。
また米国のITの歴史を学ぶことができます。さらに我々の起業マ
インドを刺激して、わくわくさせてくれる内容になっています。
お休みに本を読んで元気をチャージしたい方、眠っている起業マイ
ンドを呼び覚まし、自らを奮い立たせたい方にお勧めの一冊と言え
そうです。
本書を読むことで、バブル崩壊後のITの歴史を知ることができま
す。実は、我々はこの時期のIT業界の事情について、あまり学ぶ
手段がありません。
バブルのまっただ中では、猫も杓子もITで、ビジネス書の世界に
もIT本が氾濫していました。しかしバブルがはじけてから、この
手の本はあまり出版されていません。
理由は、かつてのようなIT立志伝があまり無く、耳目を集めるネ
タに乏しいからです。しかしかつても紹介した「失敗学」にもある
とおり、ビジネスは失敗の現場にこそ、多くの学びがあるのです。
ネット時代の幕開けとなったブラウザー「モザイクV1.0」の登場か
ら今年でちょうど(わずか!)10年。ここでヤフーの歴史を振り返
ることは、ビジネスの将来を占う意味でもいい機会だと思います。
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