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2003/10/17
お金がないから成功できる「波乗り」経営
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 18720部>━
=今週の選書=
■お金がないから成功できる「波乗り」経営
■主藤 孝司 (著)
■フォレスト出版
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■■ 選書サマリー
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これからは「波」のように消えることを前提とした「波乗り経営」
でないと生き残れない!31歳で会長になった著者の経験に基づい
た戦略を紹介。
【1】
不景気だからもうからない。景気が悪いと企業に成功しない。常識
ではそうだ。しかし、本当は不景気だから儲かる。不景気でも儲け
るには、景気の良いときの逆をすればいい。
借り入れしない、在庫は持たない、規模を追求しない、人雇わない、
事務所を拡張しない、飛び込み営業をしない、インターネットに期
待しないなど、常識はずれが成功のコツだ。
不況の原因は、しょせん好況の反動だ。調整期間であり反動の時期
だ。夏の反対が冬であり、カーブの反対がシュート、フォローの反
対がアゲインストだ。だから景気のいいときの逆をやれば成功する。
おまけに周り人は一生懸命、儲からない前時代のノウハウで経営し
ている。だからほっといても沈んでいく。ちょっと工夫した人だけ
がぐんと伸びて成功し、儲かっていく。
周りが儲かって、成長している時に、さらに儲けるのは至難の業だ。
だが皆が沈む時代なら、ちょっと工夫して努力すれば、飛躍的に伸
びる。これが不況のほうが成功し、儲かることの本質だ。
【2】
好景気時代の成功パターンが不景気の時代に当てはまらず、大企業
モデルの起業法が中小企業にあてはまらないのは、それぞれ成功パ
ターンが違うからだ。
右肩上がりの成功パターンは、すべてが連続している。経営、しく
み、思考のすべてがつながっている。計算し予測や経験に基づいた
方法論、論理的で正確な発想だ。これが好況時、大企業の必勝法だ。
だがこれが行き過ぎると官僚主義になる、いわゆる大企業病だ。し
かし、一定規模を追求し、企業を大きくし、強い組織力で経営を行
うには必要不可欠な行動パターンだとも言える。
このような行動パターンは、世の中が過去から今日までのつながり
で好景気の波が続く限り、簡単に確実に、儲かる方法だ。成功へと
つながっていく道なのだ。
【3】
一方、中小企業が成功するパターはこうではない。特に不景気にお
いて成功するには、全く違うプロセスが必要だ。何の脈絡もつなが
りもない、理屈もない考え方をするべきだ。
いわば、思いつきで行動することだ。この連続性のない、思いつき
の考え方は「革新的意思決定」といわれている。それは定型化でき
ない、プログラムすることが不可能な思考プロセスだ。
これは、ノンルーチン作業と呼ばれるものだ。ノンルーチン作業と
は非日常的な作業だ。反対に日常的な作業をルーチン作業という。
実は、この常識はずれな思考法こそ、不景気で成功する起業家の考
え方なのだ。好景気でも、急速に伸びるベンチャー企業やゲリラ企
業の経営判断のプロセスは、この革新的意思決定をしている。
論理も常識も無視して、マーケティング調査も行わず実施されるビ
ジネスが、革新的なマーケットを築いていく。その辺りは、日米と
も同じで、学問的にも裏付けられている。
【4】
こうした革新的意志決定は常識はずれだから、ほとんど誰も行わな
い。だから逆にほんの少しでも確信的な考え方を行えば、業績は上
向く。
厄介なのは、日本の学校教育は、常識的な発想法をベースにしてい
ることだ。「革新的意思決定」のベースになる支離滅裂な思考は排
除、駆逐、非難される仕組みだ。だから日本人は変革に弱い。
普段思い付かないような奇抜なアイデアは、そのほとんどが革新的
意志決定をベースにしている。それを否定する日本の旧体制の元で
はアイデアが出ない。だからこそ、起業家も輩出されてこないのだ。
【5】
短期的に成果が上がるノウハウばかりに気をとられている経営者が
多い。上べだけのテクニック、戦術といわれるモノだ。例えば、広
告ノウハウや営業トーク、チラシの書き方などだ。
これらは、経営を行う上で非常に大切だ。だが、それだけでは起業
家として成功できない。ほとんどの起業家が戦術だけで成功すると
思っているが、だから失敗するのだ。
うまくいっている企業、儲かっている起業家ほど、これらテクニッ
クである「戦術」に終始していない。むしろそれをもとに経営の仕
組みをつくる戦略思考で経営を行っている。
戦略とは目に見えないので、わかりにくく、即効性もない。だから
こそ極める必要がある。上場企業は、株価維持、株主満足などのた
めに戦術に走りがちだ。こういうところからも、起業家は大企業を
手本すべきでないことがわかる。
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■■ 選書コメント
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本書は最初、読むべきかどうか迷った本です。何せ、見るからに、
ウサンくさいからです。書いてあることも「理念より儲け」「粗利
8割の成熟商品を扱え」...などなど。
一見、奇をてらった、いかがわしい本のようです。ただ、きちんと
読むと極めてまともなことが書いてある本であることがわかります。
本書を評価すべき点はいくつかあります。私が一番共感したのは、
タイトルにもある「お金が無いから成功できる」の点です。「お金が
"無くても"」ではなく「お金が"無いから"成功できる」のです。
世の中には起業=お金が必要、と思っていて、かえって動けない人
が多すぎます。起業志望者の中には、大した工夫もせず、安易にお
金の無心に来る人が多いのです。「お金があればできるんですが...」
という起業家を、ウンザリするほど見てきました。
一度、ある起業家が私のところに地元の某団体の創業支援担当者(
銀行からの天下り)と一緒に「すばらしいビジネスプランがありま
す。1億あれば成功できます。出資者紹介してくれませんか?」や
ってきたことがあります。
その人は、出資者を捜して5年もプータロウをしているとのことで
した。私は彼に「誰だって1億円あれば、そこそこ成功できますよ」
と言って、お引き取り願いました。
確かに、お金があればできることはあるでしょう。でもお金がなく
てもできることもまた、いくらでもあります。
私は、ビジネスは倍率で評価されるべきモノだと思っています。だ
から、1億円を10億円にできる起業家よりも、1万円を1億円にで
きる起業家のほうを尊敬します。
上述の起業家も、本物の起業家なら、その5年間を金の無心に費や
すのでなく、他のカネのかからないビジネスに費やしていたはずで
す。そして5年の間に、1億円くらいのお金は稼いでいたはずです。
5年という時間の重さを理解できず、それを金の無心だけに費やし
てしまうなんて、その点で起業家失格と言えます。
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