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2003/11/07
トラ・トラ・ライオン!
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 18913部>━
=今週の選書=
■トラ・トラ・ライオン!
■サミュエル・ライダー (著)、夏生 一暁 (翻訳)
■マガジンハウス
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■■ 選書サマリー
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Xデーが、いよいよ2004年夏に迫っているいいます。その時、あな
たの大切な虎の子が国庫に徴収されてしまうかもしれません。
【1】
日本丸という船が国債債務700兆円という重石を積んで、荒れ狂う
海の中、かろうじて航海を続けている。その船に乗っているのは、
世界の富の5分の1、1400兆円もの個人金融資産を持つ日本人だ。
世界一のお金持ちにもかかわらず、借金の重みで転覆しそうだとい
うのだから奇妙な話だ。いずれにしても破綻寸前のこの国を立て直
すために考えうるシナリオは、次の3つだ。
まず、第一の道として、大手術をせず自然に良くなることを待つこ
とだ。「経済のサイクルは波形に循環している。だから辛抱強く待て
ばいつか浮かび上がる」そう考えて耐えるのだ。
確かに、何もせずに自然に良くなるならベストだ。だがそれを望む
のはあまりにも楽天的だ。日本は、すでに後戻りできないほど債務
超過の底なし沼にはまりこんでいるのだ。
【2】
第二の道は、国の債務が雪だるま式に増え、ついに国家破綻に至る
道だ。この場合、日本は国際的な信用を失い、先進国から脱落する。
産業界は致命的キズを負い、国民は窮乏生活にあえぐことになる。
これは最悪のシナリオだ。国が破産したら会社も商店主も公務員も
長期間苦しむことになる。国家破産に部外者はあり得ない。いくら
資産を持っている人でも超インフレ下では、ひとたまりもない。
第三の道は、国民が大きな犠牲を払って国の破綻を防ぐ道だ。個人
金融資産1400兆円の一部を国庫に移し替えるのだ。その方法は、例
えば財産税や、30パーセントにも及ぶ消費税の徴収だ。
例えば、預金封鎖、デノミ、新円切替え、財産税などをセットにし
た究極の財政再建計画が考えられる。
【3】
新円切替えでは、お金は期限までに交換しないと紙くずになる。だ
から誰もがお金を銀行に持ち込む。ここで政府は国民の資産を正確
に把握、ここで財産税をかける。これではタンス預金も隠せない。
巨額のアングラマネーも、不正蓄財として没収できる。こうして政
府は何兆円というお金を一挙に獲得し、財政破綻の危機から逃れる
ことができるというわけだ。
この預金金利、デノミ、財産税は決して荒唐無稽な方法ではない。
国の財政が行き詰まったときにしばしば行われている。例えば財産
税は第一次大戦の後にドイツとイタリアがやっている。
デノミはフランス、ソ連、フィンランドが40年ほど前にやっている。
預金封鎖はほんの少し前に、インドネシアとアルゼンチンが実施し
ている。
【4】
日本では昭和21年2月16日に預金封鎖と財産税課税を行っている。
まず取付け騒ぎを防ぐために預金封鎖を行い、10万円を超える資産
に対し、25%?90%の財産税をかけたのだ。
その目的は、当時はびこっていたヤミ取引業者のアングラマネーの
没収だった。しかし結果的には多くの資産家が財産を失った。
ただ国民の犠牲があまりにも大きくなると、不景気がさらにひどく
なり、大恐慌になる可能性がある。だから第四の道が求められる。
景気を一気によくしつつ、日本復活を実現させる道だ。
例えば、新円切替えで一度お金が国庫に入ったら、今度は減税をし
たり、国民にお金を配ったりして、消費拡大をはかる。こうすれば
景気は良くなり、デフレは止まり、税収も増えるわけだ。
【5】
国の借金返済のほうは、国債の償還日が来たときに順次買い戻して
回収していけばいい。まずは景気の立て直しをしてそちらに資金を
回す方が上策だ。
いずれにしても政府はすでに2004年7月「お札のデザインを変え
る」と正式に発表した。その時、フタを空けてみると、新札のゼロ
が2つ少なくなっている、なんてことが起きるかも知れない。
これが実施されれば、日本は過去に経験したこともない急降下と急
上昇を一度に経験することになるだろう。これが本当の日本復活の
契機になるだろう。
これに対して国も、企業も、個人も、本気になって備えるべきだ。
そのために、しっかりとした戦略を練り臨むことが重要だ。
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■■ 選書コメント
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ベストセラーとなった前作「ライオンは眠れない」で、究極の財政
再建案、預金封鎖・デノミ・財産税を明らかにした謎のジャーナリ
スト、サミュエル・ライダー氏による待望の第二作です。
前作で話題になったXデーが、いよいよ2004年夏に迫るといいます。
その時、大切な虎の子が国庫に徴収されてしまうかもしれません。
この大変革を、我々はどのように生き延びればいいのでしょうか?
本書ではその詳細や、その時に起きるであろうシナリオ、そして新
しい政策提言をしています。そしてトラ、トラ、ライオンを謎解き
することで、小泉内閣の次の1手も予言しています。
なお、本書は戦略がメインテーマですから、"戦略"という言葉が随
所に出てきます。経営の現場における戦略とは、競争に勝って生き
残るために、環境に合わせて自社の持つ資源(ヒト、モノ、カネ)
を最適に配分することです。
考えてみれば、環境にあわせて生き残る必要があるのは、個人も同
じです。特に昨今の厳しい環境変化下で、個人もまた、今大きな変
化を求められています。
ところが、個人の戦略の必要性はあまり唱えられてきませんでした。
そのため旧態依然のまま放置されています。それが通勤電車の澱ん
だ空気に直結しているのかも知れません。
企業の戦略策定では、自社の経営資源、すなわち「今、自分は何を
持っているのか」を調べます。これは個人もぜひやるべきです。
私は起業支援という仕事をしている関係で、多くのサラリーマンに
お会いします。その時感じるのは、自分の持っているものを過小評
価している人が多いことです。そして無いものばかり数えています。
しかしサラリーマンというだけで、すでに多くの強みを持っていま
す。例えば週に2日のお休み、給与が安定的に支払われるのは強み
です。これは会社を飛び出した人間からすれば、すごいことです。
またものすごい才能を持っている人もいます。問題はこうした資源
が十分に活かされていないことなのです。まずは一度、ご自身の時
間、お金、情報、人脈、能力を棚卸ししてみることをお勧めします。
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