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2003/11/21
経済大転換―反デフレ・反バブルの政策学

経済大転換―反デフレ・反バブルの政策学

「分裂と不安定の時代」と呼ぶのにふさわしい現代を行く抜くための政策をマスコミでお馴染みの論客が提言します。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 19200部>━
=今週の選書=
■経済大転換―反デフレ・反バブルの政策学
■ちくま新書
■金子 勝 (著)
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■■  選書サマリー

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「分裂と不安定の時代」と呼ぶのにふさわしい現代を行く抜くため
の政策をマスコミでお馴染みの論客が提言します。

【1】

ブッシュ政権の最大のアキレス腱は経済だ。イラク戦争終結宣言後
に株価は回復傾向を見せているために根拠のない楽観論が台頭し始
めている。だが現実にはイラク戦争は終わっていない。

米国経済の悪化が進めば、ブッシュは再選を果たせないだろう。だ
から戦争しかカードを持たないブッシュ政権は、経済が悪化すれば、
それに従い、終わらない戦争をもたらす危険がある。

ブッシュ邸に招かれて有頂天になっている小泉政権だが、その共同
声明は危険な内容を含んでいる。北朝鮮の核問題について、両者は
平和的に解決に向け努力することで一致した。

その中でブッシュは「強硬な措置を講じる」と表現している。それ
を日本は勝手に経済制裁と解釈している。だがブッシュのいうそれ
は、北朝鮮への先制攻撃を含んでいる。

【2】

イラク戦争がもたらした学習効果は楽観を許さない。北朝鮮は、核
武装以外にアメリカから政権を保持する方法ないと考えている。一
方、アメリカは占領にメリットがないことを学んだ。

しかも北朝鮮には資源がない。アメリカが北朝鮮を攻撃する際には、
大量破壊兵器を徹底的に使うだろう。その結果は悲惨なものになる
はずだ。

ブッシュ政権によって、国連安保理は機能しないことが露呈した。
イラク戦争の過程でもフランスとドイツは反対の姿勢を崩さなかっ
た。

結局、崩壊したのは冷戦体制でなく、第二次大戦後の戦後体制だっ
た。その意味で新しい時代は分裂の時代に入ったと言える。問題は
国際社会の分裂が修復不可能なほどに広がりつつあることだ。

【3】

その間、EUは独自の動きを強めた。EUは新憲法案において大統領制
をとるとともに、独自軍を強化して世界の治安維持機能を担うこと
を打ち出している。

これは、クリントン政権時代にアメリカ政府の説得でEU側が思いと
どまった構想だ。これをブッシュ政権は止めることができなかった。

一方、資本の流れを見ても国際的には米欧が分裂する傾向が進んで
いる。2002年以降、ヨーロッパ諸国の対米株式投資は着実に減少傾
向を示している。それがドルに対するユーロ高に結びついていた。

同時に、EUはユーロの基軸通貨化を進めるために石油代金の決済に
ユーロを使う動きを強めた。さらに国際会計基準やBIS規制などの
グローバルスタンダードをめぐる交渉やWTO交渉において、アメリ
カとEU諸国の合意は次第に難しくなっている。

【4】

ところがブッシュ政権の傲慢さは強まる一方だ。どんなに国際社会
を分裂させても、あるいはどこへ反テロの戦争を仕掛けようともブ
ッシュ政権はアメリカ国民の大多数と日本、英国の主要プレーヤー
が必ず彼を支持すると確信しているのだ。

それが、ブッシュ政権が必要とするすべてだ。一国主義に陥ったブ
ッシュ政権は。国外でどのように受け取られるかには全く関心がな
いのだ。

小泉政権は「北朝鮮が攻めてきたら、米軍に守ってもらうしかない」
と言って有事法制を整えて米国への全面協力体制を築こうとしてい
る。

だが皮肉なことにブッシュ政権への支持を表明すればするほど、ブ
ッシュ政権による北朝鮮への先制攻撃の危険性は強まっていくことになる。

日本が果たすべき役割は、アメリカに自制を求めて新たな分裂を回
避するように努力することだ。一旦グローバリゼーションによって
一体化した世界経済が切り裂かれるコストは著しく高くつくからだ。

【5】

やがてアメリカの住宅バブルははじけるだろう。問題はそのタイミ
ングだ。それと重なるようにして史上最悪の双子の赤字が急激なド
ル安・株安をもたらす。

その場合、先進諸国の国際的な政策協調がとれなければ、分裂のコ
ストは甚大で取返しがつかないものになる。

とりわけ外交面でも経済政策でもアメリカのと一蓮托生の道にある
日本は、取返しのつかない打撃を被るだろう。もちろんこうした最
悪の事態がいつどのように起きるかは誰にも断言できない。

だからといって、発生する可能性がある巨大なリスクを無視して良
いということにはならないだろう。今こそ未来へのビジョンへを構
想しつつ、何をしたらいいか考えなくてはならない。

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■■  選書コメント  
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テレビや雑誌などでお馴染み、自ら「竹中大臣のマングース」と名
乗ってはばからない稀代の論客、金子勝氏が送る「分裂と不安定の
時代」に向けた政策提言です。

人間は過去の延長線上にしか未来を描こうとしません。しかし間違
った過去の延長には、間違った未来しかありません。だから過去の
延長線上でないゼロベースの発想に立った変革が必要になるのです。

思えば会社という、国家に比べれば本当に小さな組織であっても、
過去のリセットは容易ではありません。そのために取返しが付かな
くなる前に外国人をトップに据えるなどの荒治療をしています。

会社とは比較にならないほど複雑な国家という組織が、過去をリセ
ットし、復活するには、一度崩壊するしかないのかも知れません。
そして焦土の中から立ち上がるしかないのかもしれません。

著者は「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言っています。
そして時代の転換期にある今こそ歴史に学ぶべきだと言っています。

デフレ下の不況というのは70年ぶりですから、戦後の経済はずっと
インフレの時代だったのです。つまり今、誰も経験したことのない
事態に直面しているのです。

ところが、多くの人が歴史から学ぼうとせず、自分の経験から類推
した手段を講じようとしています。だから「大きな政府か小さな政
府か」「景気対策か規制緩和か」といった時代遅れの2分法の間を
行ったり来たりし、失敗を繰り返しているのです。

我々が、経験でなく歴史から学ぶにはどうしたらいいでしょうか?
私は読書に尽きると思います。私自身、実体験を学習のベースにし
ながら、自ら経験できない事柄は読書で補ってきました。

幸い日本ではあらゆる書籍が極めて安く手に入ります。時代を代表
する専門家が、何年もかけて研究した成果をたった数千円で学べる
のです。投資回収率で考えれば、ものすごいことです。

読書の秋です。もっと読書の価値を認め、読んでみることをお勧め
します。本はあなたの時間とお金の小さな投資に、きっと答えてく
れるはずです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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