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2004/01/16
得する生活―お金持ちになる人の考え方
お金は、神様みたいなものだ。お金に価値があるのは、誰もがそれ
をお金だと信じて疑わないからだ。一万円札に価値があるのは、私
たちがそれに1万円の価値があると信じているからに過ぎない。
ただの紙切れに1万円の価値があるというのは、一種のほら話だ。
どうせでたらめなことなのだから、石ころでも、貝殻でも構わない。
事実、今では銀行の電子データがお金だと思われている。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 20,003部>━
=今週の選書=
■■得する生活―お金持ちになる人の考え方
■■橘 玲 (著)
■■幻冬舎
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■■ 選書サマリー
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お金持ちほど金を使わず、金の使い方を知っています。知っておき
たい「お金のヒミツと世の中のカラクリ」を解説します。すべては
経済合理的に考えることからはじまります!
【1】
お金は、神様みたいなものだ。お金に価値があるのは、誰もがそれ
をお金だと信じて疑わないからだ。一万円札に価値があるのは、私
たちがそれに1万円の価値があると信じているからに過ぎない。
ただの紙切れに1万円の価値があるというのは、一種のほら話だ。
どうせでたらめなことなのだから、石ころでも、貝殻でも構わない。
事実、今では銀行の電子データがお金だと思われている。
大事なのは貨幣の材質でなく、実態のないものに価値を認める信仰
心なのだ。つまり貨幣経済とは貨幣を神様とあがめる一種の宗教な
のだ。
神の姿をこの目で見ることができないように、我々は貨幣の実態を
証明することはできない。理屈の上では、一万円札は日本国の資産
を担保に発行されていることになっている。
だが、これは新興宗教の教祖が「私が神であることは、神である私
が知っている」と言っているようなものだ。根拠は全くないが、信
じるか信じないかは、その人の勝手だ。
【2】
国民が「紙切れはしょせん紙切れに過ぎない」ということに気付い
たら、貨幣制度は破綻する。幻想がはげてしまえば、1万円札もた
だのゴミと変わらない。
貨幣が神なら、貨幣経済は一種の世界宗教と言える。地球上には国
ごとに異なる神がいて、その神々は一定の比率で交換ができる。
キリスト教徒もイスラム教徒も仏教徒も、貨幣を神とあがめる世界
宗教から自由になることはできない。私たちがこの世界で生きるに
は、好むと好まざるとに関わらず、この宗教の信者になるしかない。
このように貨幣制度はしょせん共同幻想だ。貨幣にとらわれるのは、
夢や幻にとらわれるのと同じことだ。人が生まれ、成長し、老い、
死んでいく事実に比べれば、貨幣の多寡など何ほどの意味もない。
【3】
だが、一方で私たちの人生が、この夢や幻によって形作られている
ことも事実だ。人間は、幻想から現実を想像できる生き物なのだ。
神権によって成立した社会では、人の運命は気まぐれな神託に翻弄
される。同じように、貨幣経済のもとでは、人は貨幣という幻想に
翻弄されながら生きていくしかないのだ。
人生を豊かに生きるのに、金はさほど重要ではない。無ければ困る
が、所有する金の量に比例して幸福が増えるわけではないからだ。
1億の金が2億円になっても、人生が2倍幸せになるわけではない。
【4】
経済学的に言えば「生きる」ということは与えられた有限の時間の
中で、自らの人的資本を最大限に活かし、より多くの効用を獲得す
ることだ。カネはそのための手段だ。それ以上でも以下でもない。
私たちが生きる自由な社会では、法に反しない限り、どんな夢を見
ることも許されている、その夢を実現するために一定量のカネが必
要なら、短期間に効率的にカネを獲得すれば人生の可能性は広がる。
しかしカネはそれ自体では何も生み出さない。億万長者になっても、
失われた時間を取り戻すことはできない。それでもいたずらにカネ
を増やし、老いて死んでいくだけの人生は幸せと言えるだろうか?
すべての幸福をカネであがなうことはできない。これは紛れもない
真実だ。だからこそ、ムダなことに貴重な時間を費やす余裕はない。
経済合理的に生きるべきなのだ。
【5】
資本主義を一種のゲームと考えれば、仕掛けは貨幣の動きだ。この
動きを観察し、最短距離でより多くの貨幣を獲得する行動を「経済
合理的な行動」という。
例えば、私は2003年の春、ビジネスクラスでハワイ・マウイ島に渡
航し、高級リゾートで1週間を過ごした。費用はレンタカーや食費
を別にすれば、宿泊費、交通費込みでたった3万円だった。
何も特別なことをしたわけではない。経済合理的に行動しただけだ。
人間は完全な生き物ではない。だから人間の作る市場には必ず歪み
がでる。
その歪みを他人よりいち早く見つけ、利用することさえできれば、
誰でも同じことができるのだ。
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■■ 選書コメント
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今週は、お金について考える書籍です。著者は、かつてこのマガジ
ンでも紹介したベストセラー「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い
方」(幻冬舎)の著者、橘玲氏です。
前作「お金持ちになる?」では、税金や年金、生命保険を通してお
金について考えました。本書ではクレジットカードやマイレージ、
リゾート会員権などを通して、お金の本質に迫ります。
著者いわく、社会は不完全な人間が作るものだから、必ずどこかが
歪んでいます。その歪みが正される前に、誰よりも早くその歪みを
見つけ、味方につければ、人よりちょっと得がでます。その主張が、
様々なお金の道具を通して裏付けられていきます。
確かに「世の中には、うまい話はない」と言われながら、知ってい
るのと知らないのでは大違い、というおいしい話は結構あります。
本書にもあげられている、米系航空会社のマイレージや金券ショッ
プはその典型です。何を隠そう、私も愛用しています。
ただ、いわゆる「うまい話」には、ダマシが多いのも事実です。そ
れが本当にうまい話なのか、ダマシなのかの見極めが必要です。
見極めのポイントは、まず納得できる理由があるかどうかです。例
えば、航空券のタダ券の例で言えば「空気を運ぶくらいなら、お得
意さんをタダで乗せて、販促にした方がいい」という、航空会社
の説明は合理的で、納得ができます。
ところが世の中には、意味もなく「儲かる」といった類の話が溢れ
ています。これらはすべてダマシと思っていいでしょう。このよう
な話に騙されないために、合理性の有無を見極める知恵が必要です。
ただ、ハナから人を騙そうとする人は、この合理的な説明も巧みで
す。そもそも前提条件がウソなら、いくらでも合理的な説明がつき
ます。用心しすぎるに越したことはありません。
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