無料版・バックナンバー
- ビジネス選書&サマリーのバックナンバーをご覧いただけます。
2004/02/13
会社にお金が残らない本当の理由
ビジネスはゲームだ。その基本ルールは、儲けることだ。ところが、
中小企業の多くがこのルールを理解していない。そればかりか今で
は通用しない常識に惑わされ、正しい経営感覚を失っている。
「儲け」を出すには、利回りをあげなくてはならない。だが、資産
を銀行や郵便局に預金しているおばあちゃんより利回りが稼げない
という中小企業が多い。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■ ビジネス選書&サマリー
■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 20570部>━
=今週の選書=
■■会社にお金が残らない本当の理由
■■岡本 吏郎 (著)
■■フォレスト出版
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■ 選書サマリー
■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
どんなにアイデアや発想が素晴らしくても、経営の背景になってい
るシステムがわからなければ会社はつぶれます。本書ではシステム
を利用してお金を残す方法について詳解しています。
【1】
ビジネスはゲームだ。その基本ルールは、儲けることだ。ところが、
中小企業の多くがこのルールを理解していない。そればかりか今で
は通用しない常識に惑わされ、正しい経営感覚を失っている。
「儲け」を出すには、利回りをあげなくてはならない。だが、資産
を銀行や郵便局に預金しているおばあちゃんより利回りが稼げない
という中小企業が多い。
会計士はよく「大企業で利回り7パーセントぐらいが標準だから、
中小企業はそれより少なくていいですよ」などと言う。だがこれ
は間違いだ。
預金と違い、運用の世界では資産ボリュームが少ないほど利回りを
稼ぎやすいはずだからだ。当然、中小企業のほうが大企業より利率
が高くなくてはならないのだ。
「預金口座にちゃんとカネはある」「役員報酬で生活もできる」「
来月の支払いも大丈夫」と安心し、本来、稼ぐべき利回りを稼いで
いない中小企業が多いのだ。
【2】
中小企業経営者は投資する資産をなるべく少なく抑え、利益はギリ
ギリまで多く取るようにしなければならない。
点棒の計算ができない人に、マージャンのうまい人がいないように、
利回りが評価できない人に、経営上手はいない。こうした経営者は、
いわばゲームのルールも知らずに、駒を動かしているようなものだ。
幸運と奇跡を頼ってビジネスを続けるのは、あまりに危険だ。
利回りを上げたら、次は会社にお金を残さなくてはならない。これ
を「内部留保」という。会社の利益がゼロなら、役員報酬の一部を
内部留保しなければならない。役員報酬は、いわば社長の借受金だ。
それにもかかわらず、役員報酬をすべて自分で遣ってしまう経営者
がいる。本来、経営者の自由になるお金など、いくらもないのだ。
こうしてできるだけ内部留保したら、次の事業へ再投資を行う。つ
まり経営とは利回りを稼ぎ、内部留保し、再投資することで「アガ
リ」となるゲームなのだ。このサイクルは3年と考えればよい。
【3】
再投資どころか、ひたすら借入金の返済に必死になっている経営者
が多い。彼らは、過去の亡霊に追われているようなものだ。
ちなみに経営における「過去」とは「借入れの返済」、「現在」は
「売上と利益」、「未来」は「内部留保と再投資」だ。この3つを
バランスよく管理することが、経営というゲームの基本だ。
だが、現実には借入れにとらわれ、選択を誤る会社が多い。たとえ
ば町のメインストリートに出店している店があるとする。店主は、
まもなくショッピングセンターが近くに建設されることを知りつつ、
その中に入る踏ん切りがつかない。借入れの返済で頭が一杯なのだ。
このように、見たくない現実から目をそむけ、小手先の問題解決を
続けていると、結果的に経営は死に体になる。さらに周りを巻き込
みながら転落の道をたどるという、最悪の結果を招きかねない。
【4】
日本の中小企業が、ゲームのルールを忘れてしまったのは、ひとえ
に戦後日本がおこなってきた社会主義的政策のせいだ。
1955年頃から1990年まで、私たちは特殊な時代を生き、上昇気流
を満喫した。上昇気流は数々の矛盾も飲み込んでいった。
辻褄の合わない税法、ルールなきまま維持される経営、存在意義の
ない各種団体、社会保険制度、借入れ依存の企業体質。ぬるま湯の
なかで、戦う力と意欲をそがれ、中小企業は自ら考えることのない
依存体質へと骨抜きにされていった。
もはや、企業の平均寿命は20年を切っている。会社が人の寿命より
長い時代は、すでに過去のものとなったのだ。何世代にもわたって
受け継がれてきた原理原則や法則も、もはや通用しないのだ。
かつての常識では、生き残れない時代が現代なのだ。だが、もう一
度、基本ルールに立ち戻り、自分の頭と価値観で経営をおこなえば、
いろいろな問題が解決するはずだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■
■■ 選書コメント
■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本書は、中小企業の経営者に向けて書かれた会計の本です。この手
の本にしては、随分売れているようです。読んでみて「確かに、な
かなかおもしろいな」と思いました。
特に私の場合、お客さんが著者と同様、中小企業の経営者です。だ
から多くの点で共感できました。例えば、本書では「儲かったら内
部留保しろ、すぐベンツを買うな」と戒めます。
この言葉を言いたくなる気持ち、よくわかります。起業家も少しお
金が入ると、すぐにベンツに走ります。事情はいろいろあります。
例えば現金を残すと課税されますが、ベンツを社用車として購入す
れば、税金が減らせ、いざというとき現金になります。
しかし、少し傾き始めたら、ベンツを売って得られる金などひとた
まりもありません。だから、やはりちゃんと税金を払い、せっせと
お金を貯めておくべきです。
また、経営コンサルタントのような仕事の世界では、見てくれの大
事さが強調されます。「お客をとるために、無理をしてでも一流の事
務所を持ち、一流品を身につけろ」と同業者はよく言います。
そういう人も「車はベンツ」を勧めます。ベンツにこだわるのは、
誰が見ても高級車とわかるからです。ここでは、自分の趣味は二の
次、相手にわかることが大事なのです。
前出の起業家と違い、こちらがベンツを買うのは節税や虚栄心を満
たす道具ではなく、お客をとるための道具です。つまりベースは、
投資という発想です。
ベンツの購入費は出たきり戻らない消費でなく、回収が期待できる
投資です。だから「惜しまず、借金してでも買え」となるのです。
つまり我々の世界でベンツを買うのはお客さま募集中の証なのです。
私の知っているお金持ちの何人かは、ベンツどころか車すら持って
いません。また、彼らは自分がお金持ちに見られることを極端に嫌
います。お金持ちに見られて良いことなど一つもないと言います。
こう考えると、ベンツに乗って、自分をわざわざお金持ちに見せて
いる人に、本当のお金持ちは多くないのかもしれませんね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━