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2004/05/28
コトラーのマーケティング思考法
ヒット商品、サービスを編み出す、新しいマーケティング手法、そ
れが「ラテラル(水平)・マーケティング」だ。
新製品を市場投入しても、ほとんどが失敗に終わってしまう現代、
多種多様な製品が市場に出回り、これ以上新製品が割り込む余地な
ど残されていないかのように見える。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 21783部>━
=今週の選書=
■コトラーのマーケティング思考法
■フィリップ・コトラー、フェルナンド・トリアス・デ・ベス (著)
■東洋経済新報社
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■■ 選書サマリー
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ニーズが満たされすぎた時代にあるべきマーケティングの姿とは?
マーケティング界の権威・コトラーがまったく新しいマーケティン
グ手法「ラテラル・マーケティング」を伝授します。
【1】
ヒット商品、サービスを編み出す、新しいマーケティング手法、そ
れが「ラテラル(水平)・マーケティング」だ。
新製品を市場投入しても、ほとんどが失敗に終わってしまう現代、
多種多様な製品が市場に出回り、これ以上新製品が割り込む余地な
ど残されていないかのように見える。
今までは、マーケティングの基本戦略STP(セグメンテーション、
ターゲティング、ポジショニング)を実践すれば、競争優位が確立
され、ビジネス機会や新製品を生み出すことができるとされてきた。
だが成熟市場においては、このメカニズムだけではもはや太刀打ち
できない。1960?1970年代のマーケティングとは、あきらかに異質
な活動が必要とされているのだ。
【2】
まず、企業が保有するブランドの数は極端に増えた。製品ライフサ
イクルも大幅に短縮され、人々は「修理するより安いから」と、次
から次へと製品を買い替えるようになった。
デジタル技術の発展も、多くの市場に革命をもたらす結果となった。
新製品、サービスの市場投入が容易になり、登録商標や特許数もま
すます増加している。
広告も飽和状態だ。消費者の選択権の幅は大きく広がり、新製品を
印象づけることが難しくなった。またセグメントが増えすぎたため
に、新製品の投入余地は少なくなったうえ、これまで以上にコスト
がかかるようになった。
現代は、これまでのマーケティングの課題であった顧客ニーズを満
たすという段階を突き抜けてしまった。むしろ過剰満足の時代に到
達したのだ。
【3】
もはや、市場定義を定めてマーケティング・プロセスを垂直的に進
める従来のやり方では、既存の製品、サービスのバリエーションの
域を超えた新製品を生み出すことはできない。
たとえば、製品の成分、サイズ、パッケージ、消費者の負担軽減な
どを工夫し、市場に投入したところで、製品の基本的特性が変わら
ない限り、新たなカテゴリー、市場が創出されることはない。
そのうえ、同じカテゴリー内で生まれた製品は、カテゴリー内の競
争をかえって煽ることとなる。結果的にますます市場飽和度を高め
てしまうはずだ。
たとえばコレステロールがまったく含まれないチーズを開発したと
ころで、競合他社が同様の製品を開発すれば、購買層=健康志向派
のセグメントをさらに細分化せねばならなくなる、といった具合だ。
これ以上、細分化を進めると、きわめて小さな市場セグメントしか
得られず、収益はほとんど望めなくなる。今、マーケティングにア
イデア創出の新たな枠組みが求められているのだ。
【4】
近年、見られるようになったのが、水平思考(ラテラルシンキング)
による新しい製品・サービスの開発だ。
たとえば、次のようなものが、その例だ。
・牛乳が不要で歩きながらでも食べられるバー状のシリアル
・スーパーマーケットを併設したガソリンスタンド
・宅配ピザ並みの美味しさを誇る冷凍ピザ
これらは皆、従来とは全く異なる思考プロセス、すなわち「水平的
思考法」によって創出された。これは従来のように市場を定義しセ
グメンテーションやリポジショニングを繰返す垂直的思考ではない。
あくまでも水平的に思考を展開させてゆく独特の思考プロセスだ。
この思考法を使えば、従来顧みられることのなかったニーズや顧客
を満足させることができる。そのため既存製品を抜本的に改変する
ことができる。
もちろん従来のバーティカル(垂直)・マーケティングも重要だが、
これを補完するうえで、今後ぜひ組み込みたいのが、水平思考に基
づくラテラル・マーケティングだ。均質化された市場で厳しい競争
を繰り返す企業にとって、強力な武器になるはずだ。
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■■ 選書コメント
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本書はマーケティングの父、フィリップ・コトラー教授が、気鋭の
コンサルタントとタッグを組んで生まれた本です。ニーズがすっか
り満たされた時代に新しいマーケティングの姿を提示します。
それは、従来型垂直思考に基づくマーケティングではなく、水平思
考で発想するマーケティングです。その具体的な思考法をラテラル
シンキングと名付け、具体的な手法を解説しています。
原題もズバリ「ラテラル・マーケティング」です。ただし内容は発
想法の解説本で、むしろ邦訳「コトラーのマーケティング思考法」
のほうがニュアンスを正しく伝えている感じです。
本書にもあるとおり、現代は「コーンフレーク=朝食」と思ってい
ても、売れる商品は生み出せません。市場の細分化は進み、すでに
考えつくかぎりの製品が世に出回っている時代だからです。
よく「ヒット商品を生み出すには、市場のニーズを探り、そのニー
ズを満たす商品を作れ」と言います。でもこのご時世、これ以上、
満たされないニーズなどあるのでしょうか。
そんな時代に、市場をひたすら細分化していくだけでは、斬新な新
製品など生み出せません。結果、誰もが「しょせんヒット商品なん
てまぐれ当りだ」そんな風に思っています。
しかし「水平思考」を使ってマーケティング視野を水平方向に広げ
ることで発想の転換をすれば、消費者でさえ自分が求めていること
に気づいていない商品を発想することができます。
マーケティング関連の仕事をしている人はもちろん、職場で斬新な
発想を得るための発想法を身につけたい人にもぜひお勧めしたい1
冊です。
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