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2004/07/16
上司は思いつきでものを言う

上司は思いつきでものを言う

上司は思いつきでものを言う。「なにかアイデアを出せ」と言われ、
すばらしい企画を出したにもかかわらず、思いつきでけちをつけら
れたことはないだろうか?
たとえば、あなたの会社が「埴輪の製造販売」をしているとする。
それも美術品としての埴輪ではなく、「古墳を作って人を葬り、そ
こに副葬品として埋める」ための埴輪だ。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 22710部>━
=今週の選書=
■上司は思いつきでものを言う
■橋本 治 (著)
■集英社
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■■  選書サマリー

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このタイトル、共感しない人はいないのでは?その原因を対処法を
探ります。

【1】

上司は思いつきでものを言う。「なにかアイデアを出せ」と言われ、
すばらしい企画を出したにもかかわらず、思いつきでけちをつけら
れたことはないだろうか?

たとえば、あなたの会社が「埴輪の製造販売」をしているとする。
それも美術品としての埴輪ではなく、「古墳を作って人を葬り、そ
こに副葬品として埋める」ための埴輪だ。

あなたの会社の業務内容は、あまりに特殊で、突飛といえる。今ど
き、埴輪を埋めるための古墳を作ったりする人はいないし、古墳の
築造会社もありはしない。

しかし、会社の上層部は「昔は古墳を作って埴輪を埋めるのは、地
方の豪族に限られていた。それが今では一般の人にまで広まりつつ
ある」と考え「わが社には存在理由がある」と胸を張っている。

案の定、会社は業績不振だ。そこで上層部は「わが社の持てる伝統
的な技術力、ノウハウを活かした新展開を考えろ」と言い出した。
あなたはどうするだろうか。

【2】

おそらく、あなたは埴輪そのものの利用法を考え、美術品としての
埴輪を売ろう」という企画を提出するだろう。埴輪は造形的に優れ
ており、すでに美術品として認められている。

いっそ、小さくして「ハニワくん」と名づけてもよい。ところが、
この至極まっとうな意見を会議で唱えたところ、上司は信じられな
い反応を見せた。

「埴輪は神聖なものだから、部屋に飾るのはいかがなものか」と言
うのだ。そして、突然「いっそ、わが社の空きスペースを利用して、
コンビニをやってはどうだろう?」などと言い出す。

これは、あくまでもたとえ話だが、しかしサラリーマン生活をして
いれば、同じようなことはいくらでも起こっているのではないだろ
うか。

【3】

いったい、なぜ上司は思いつきでものを言うのだろう。実は、あな
たの提案は、上司に「なぜ、売れもしない埴輪をこれまで作り続け
ていたんだ」と詰め寄ったも同然の内容だったのだ。

もちろん、あなたはよい企画を出そうと考えただけで、そんな意図
など持ってはいない。ところが上司は、自分が責められていると感
じてしまう。そこで「われわれの責任ではない」と言い張るのだ。

これは、上司が「無責任な人」だからではない。上司とは、上司で
あるがゆえに責任を回避するものなのだ。上司は「部下の上に立つ
もの」という立場に立たされている。会社側の立場に立ち、部下、
すなわち現場を統括する。

本来、会社にはふたつの風が吹いている。上から下へ吹く風と、下
から上へ吹く風だ。しかし、上から下へ吹く風のほうがずっと強く、
その反対の風は弱い。

【4】

会社とは利潤を追求する組織であり、利潤は現場から吸い上げられ
る。だから会社は現場をやせさせる。あなたの意見がどんなにまっ
とうでも、下から上に対する意見というものは、上司からはねつけ
られてしまうものなのだ。

かくして「無意味な埋葬品など作らず、美術品を製造販売しよう」
という現場の声は反映されず、会議はとんでもない方向へと流れて
いくのだ。話し合いは膠着状態に陥り、結局「このままじゃダメだ
から、各自、何か考えるように」ということでお開きになる。

あなたにはどうすることもできない。ヤケ酒をあおり「チクショー、
思いつきでものを言いやがって」とひとりくだを巻くが関の山だ。
なぜか?それはあなたが上司と対立せず、ただ「自分の意見に耳を
傾けて欲しい」と願うしかないからだ。

あなたは上司の責任を問わない。上司を「人間」として見てないか
らだ。あなたはただ、上司を自分より「上の立場にいる者」として
捉えている。

上から下へ命令を下そうとする上司と、上司という上の立場に気に
入られる企画を出したいあなた。そこに大きな対立が生まれるのだ。

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■■ 選書コメント  
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本書のタイトルに共感しない人はいないでしょう。中には上司の机
の上に、そっと置いておきたいという衝動に駆られる人もいそうで
す。それくらい上司は、思いつきでものを言っています。

著者は「桃尻娘」でお馴染みの小説家橋本治氏です。この方、会社
勤めの経験が皆無だそうです。会社勤めの経験もない人が書いた会
社の本に読む価値があるのか、賛否がありそうです。

さらに、本書の文体はいわゆるビジネス書とは全く異なります。よ
く言えば丁寧、悪く言えば回りくどいのです。何度も脱線しながら、
同じことを繰り返していきます。

また話が抽象的で、何が言いたいのかわからなくなります。たとえ
話もでてきますが、突飛な例ばかりで、かえってわからなくなりま
す。ビジネス書を読み慣れた人には、相当読みにくいはずです。そ
の点からも好き嫌いがわかれそうです。

私は、大変面白く読みました。私は読書を自分の視点を増やす機会
と考えているからです。読書を通じて著者の視点に触れることで、
読み手は新しい視点を手にできるのです。

そう考えると、できるだけ自分とは異なる視点を持った著者の本を
読むほうがいいことになります。会社について考えるなら、会社勤
めの経験のない人が書いた本が、うってつけと言えます。

だから私は意識して色々な著者の本を読みます。ジャンルもいろい
ろです。たとえば、今気に入っている本は「昆虫の世界へようこそ」
なんと昆虫の本です。暇さえあればぱらぱらと眺めています。

さらに、のめり込んでしまったのが、ダビンチ・コードです。現在、
世界中でベストセラーになっていますのでお読みになった方も多い
でしょう。

本書を読んで、すっかり西洋の、とりわけキリスト教の歴史に興味
を持ちました。サラリーマンのために夏の課題図書を選べと言われ
たら、今年は迷わずこれら2冊を選びます。

昆虫の世界へようこそ(ちくま新書)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480061835/tachiyomi-22

ダビンチ・コード(角川書店)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047914746/tachiyomi-22

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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Tel.(03)6273-7950
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