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2005/03/04
30歳からの成長戦略「ほんとうの仕事術」を学ぼう
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企業の成長戦略を個人にあてはめれば、個人の成長戦略も見えてく
る。これからの個人は「かつての贅沢品が大衆化する市場を前提に」
「イノベーションによる成長と、価値成長を併せ呑み」「どうすれ
ば求められる経営者人材になれるか」を考えるべきなのだ。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 29,400部>━
■30歳からの成長戦略「ほんとうの仕事術」を学ぼう
■山本 真司 (著)
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■■ 選書サマリー
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勉強熱心な人ほど、どツボにはまっていませんか?なぜでしょう。
【1】
企業の成長戦略を個人にあてはめれば、個人の成長戦略も見えてく
る。これからの個人は「かつての贅沢品が大衆化する市場を前提に」
「イノベーションによる成長と、価値成長を併せ呑み」「どうすれ
ば求められる経営者人材になれるか」を考えるべきなのだ。
まず、かつての贅沢品が大衆化することを考えてみよう。本格化コ
ーヒーが大衆化したように「知」も、また大衆化が進んでいる。か
つてはMBA取得や外資系コンサルタントにしか継承されなかった
ビジネススキルが、専門学校や本屋にいけば低コストで手に入る。
ロジカルシンキング、プレゼンスキル、販売スキル、マーケティン
グスキルなどの情報がネット上で溢れ、これらを身につけた人たち
とそうでない人たちの間には、知の「ディバイド」が生じている。
そして、知を持つたちの間でカリスマ的な人物が「グル」となって
もてはやされている。
【2】
だが、よく考えてほしい。こういう知の大衆化時代で勝者となるの
はいったい誰だろう。供給される知の中には、低品質のものもある。
決定的な定番の商品が出てくるまでは、本物、偽物が玉石混淆で、
商品の程度には相当のばらつきがあるものだ。
とくにビジネスにおける知は、発展途上の段階にある。したがって、
こうした商品の大口の消費者になってしまうと、単に生産加工業者、
流通業者を儲けさせているだけに終わってしまう。
第一、大衆化した知を身に着けても、差別化にならない。そんなも
のをひと通り習得したところで、先は見えないのだ。手垢のついて
いない、イノベーションのネタがありそうな分野に投資するべきだ。
要するに人気のある分野については、超効率で駆け抜けたほうがよ
いのだ。でなければ勉強しても徒労感だけが残ることになるだろう。
【3】
では、どんな分野に投資を集中するべきなのか。私の方法論は「(人
気のないもの)×(好きなこと)」だ。理屈はきわめて簡単、今人
気のある分野を選んでも、差別化できないからだ。差別化するなら、
自分が一番札を引けるジャンルが望ましい。
もちろんいずれそのジャンルに人気が出てきて、参入者がどっと現
れても、あなたは勝ち続けてなくてはならない。そのときにものを
いうのが累積経験量だ。ある程度続けなくては意味がないのだ。
それには、なんといっても、好きなものでなければだめだ。続かな
いからだ。だから「天邪鬼」にならなくてはならない。ここでいう
天邪鬼とは、すぐに「違うよ」と反論する、あくの強い人間という
意味ではない。
「(人気のない)×(好きな)」を追いかけつつ、そこで得た発想
を論理的にまとめあげ、他人とコミュニケーションを図り、現実の
ビジネスに落とし込める人を、ここでは天邪鬼という。
さらに他人の意見にも耳を貸し、人間関係も良好な人だ。つまり「実
力派天邪鬼」だ。理想をいえば、イノベーションによる差別化意識
を持ち、基本的なビジネスキルも身につけている人間が望ましい。
【4】
基本的ビジネススキルは2つある。一つ目は、ロジカルシンキング、
インベストメント、ファイナンス、マーケティングなど、基礎的な
なスキルのことだ。
もうひとつは仕事術だ。力点の置き方、陥りやすい罠を回避する方
法、自己啓発が目的化し、時間や金、人脈づくりに無駄なエネルギ
ーを削いでいないかなどを点検するスキルだ。
最後に、経営者的な人材としての実力も身につけなければだめだ。
必要なのは、乾いた論理や数字でなく、人を動かすために必要な哲
学だ。「なんのために働いているのか」「誰のために生きているの
か」といった人生観、経営観をはっきり持つことだ。
ある経営者が「自分は無欲だ。だから強い」と言っていたが、こう
した境地に経つには、自分の心がマネジメントできなくてはだめだ。
これらの力をつけ、ふつうのビジネスパーソンや、勉強家ビジネス
パーソンを超えた"実力派天邪鬼"に変身すること、これこそがあ
なたがやらなければならないことなのだ。
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■■ 選書コメント
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本書は、外資系コンサルティング会社で経営層に上り詰めた著者が、
「勝たなければクビ」という厳しい環境下で生き残ってきた経験を
生かし、ビジネスパーソン全般に勉強法を指南する本です。
著者によると、多くのビジネスパーソンは勉強法を間違えていると
いいます。具体的には、戦略がないといいます。戦略なしに手当た
り次第に勉強しても、差別化ができず効果がないといいます。
戦略とは、もともと戦争用語で、戦いに勝つために立てる計画のこ
とです。限られた手持ちの駒を最大限有効に使い、自分の強みを発
揮し、相手の弱みを突いて、戦いを有利に進めることです。
ビジネスの世界も戦いですから、戦争生まれの概念との相性がいい
のです。会社同士の戦いに勝つためにヒト、モノ、カネという限り
ある資源を最大限活用しようと頭をひねることを戦略というのです。
ビジネスの現場では、会社だけでなく、そこで働く個人も個人間の
競争を意識しなければなりません。時間、お金など有限の資源を効
果的に使い、最大の効果を上げることを考えなくてはなりません。
思えば、学校でも、成績の優秀な生徒ほど要領がよく、勉強だけで
なくスポーツも遊びもうまかった記憶があります。反対に教科書を
丸暗記するようなガリ勉タイプは、テストの成績もイマイチでした。
ビジネスの現場でも、ガリ勉にはなりたくないものです。本書にあ
るような発想で、要領よく学習し、仕事も私生活も充実させたいも
のです。何せ人生は一度きりなのですから。
これから学習する人にとっては学習の指針に、学習してきた人には
学習を見直すきっかけになるでしょう。タイトルは「30代からの」
ですが、すべての年代の、勉強熱心なビジネスパーソンにとって、
読んで得るところの多い一冊です。
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