無料版・バックナンバー
- ビジネス選書&サマリーのバックナンバーをご覧いただけます。
2005/10/28
アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ
この世には一見「ただ」と思われるものがたくさんある。たとえば、
たまたま友達がレストランの「一食無料ランチ券」を持っていたと
する。
彼がその券であなたにランチをおごってくれても、「ただでご馳走
してくれたにすぎない」と、あなたは思ってしまうに違いない。た
しかにその場にお金のやりとりはなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■ ビジネス選書&サマリー
■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 43,935部>━
■今週の選書
■アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ
■ゲーリーE.クレイトン、大和総研教育事業部 (監修)/WAVE出版
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アメリカの経済学の教科書は、ビジネスパーソンにも役立つ!
【1】
この世には一見「ただ」と思われるものがたくさんある。たとえば、
たまたま友達がレストランの「一食無料ランチ券」を持っていたと
する。
彼がその券であなたにランチをおごってくれても、「ただでご馳走
してくれたにすぎない」と、あなたは思ってしまうに違いない。た
しかにその場にお金のやりとりはなかった。
でも、考えてみて欲しい。誰かが農家に肥料の代金を支払い、トラ
ックの運転手に運送費を渡し、コックに給料を払い、ウエイターや
ウエイトレスにチップを与えたわけだ。
その「誰か」とは、いったい誰なのだろう?驚くかもしれないが、
それはひょっとするとあなたなのかもしれないのだ。
【2】
レストランが無料でランチを提供するとき、費用はどうやって埋め
合わせされているのか、誰でも不思議に思うだろう。じつはこうし
たお金は料理の価格の中に埋もれている。
無料ランチを食べた人が、後日そのお店でお金を払って食べれば、
お店は無料ランチの痛手を回収することができる。もし二度とお店
に行かなかったとしても、別の誰かが高いランチを食べればいい。
しかし、お店は無料ランチの券をばらまけばばら撒くほど、メニュ
ーの価格を上げざるを得なくなる。無料ランチの価格を、ランチの
料金に転嫁せざるを得ないからだ。
というわけで残念なことだが、この世に無料のものなどまずない。
誰かが生産物に対する対価を支払わなければならないからだ。つま
り「ただで手に入るものなどない」のだ。
【3】
「この世に無料のものなどまずない」ことを知ることは、基本的な
経済問題を理解する重要なカギのひとつになる。すべての社会が直
面する根本的な経済問題は「希少性」だからだ。
社会資源には限りがある。人々が欲するものをすべて作り出すわけ
にはいかない。なぜか?「お金がないから」とあなたは言うかもし
れないが、希少性は資金不足が原因で起こるわけではないのだ。
すべての人が突然大金持ちになったとしても、みんなが欲しいもの
を手に入れることはできない。大金を手にすれば、みな働く気が失
せ、豪邸や高価な車、バカンスなどに資金を費やそうとするだろう。
もちろん、最初のうちは売り手も大満足。だが、次第にみんな焦り
始める。商品の仕入れが次第に難しくなっていからだ。
だいたい働いている人が減ってしまうので、工場から注文どおりの
在庫を取り寄せることが不可能になる。在庫はまもなく底を尽き、
店先から商品がなくなってしまうだろう。
【4】
すべての人が所得を大幅に増やせたとしても「希少性」という経済
問題は解消されないのだ。むしろ経済活動全体が停止し、お金が無
価値になってしまうなど悪影響のほうが大きいのだ。
つまり、「希少性」という問題の原因は「資金不足」ではなく、人々
が欲するものを作るための「資源不足」にあるのだ。
人々が欲するものを作るための資源を経済用語で「生産要素」とい
う。具体的には、土地、資本、労働力、起業家の4つだ。
土地は「自然の恵み」つまり人間の努力では作り出せない天然資源
のこと。資本は生産に使われる道具、設備、工場などのこと。労働
力は、あらゆる努力を行う能力と技術を持った人間のことだ。
起業家は新しい事業を立ち上げ、商品を市場に送り出す人のことだ。
そのイニチアシブが土地、労働力、資本を結合させ、あらたな製品
を生み出す。いわばアメリカ経済の原動力といってもよいだろう。
資源には限りがあり、人間の欲求は無限だ。これら二つがぶつかり
合うからこそ、希少性が生まれ、選