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2006/01/20
ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
2001年秋、インターネット業界は衰退していた。私はネットビジネ
スのざせつから立ち直れないまま、それでも「インターネット伝説
はまだ甦るチャンスがある」と何気なくパソコンを前にした。
そして、グーグルの検索キーワードランキングをのぞいた。人気の
ある検索キーワードを調べ、数えていくと、そこには私たちが興味
を覚えたことや、かつては人気があったが、いまでは顧みられなく
なった事象が浮き彫りになっていった。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数48,289部>━
■今週の選書
■ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
■ジョン・バッテル (著)、中谷 和男 (翻訳)/日経BP社
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■■ 選書サマリー
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検索エンジン会社「グーグル」を取材した、初のノンフィクション
【1】
2001年秋、インターネット業界は衰退していた。私はネットビジネ
スのざせつから立ち直れないまま、それでも「インターネット伝説
はまだ甦るチャンスがある」と何気なくパソコンを前にした。
そして、グーグルの検索キーワードランキングをのぞいた。人気の
ある検索キーワードを調べ、数えていくと、そこには私たちが興味
を覚えたことや、かつては人気があったが、いまでは顧みられなく
なった事象が浮き彫りになっていった。
2001年秋、当時のトップ5位は「ノストラダムス」「CNN」「世
界貿易センタービル」「炭そ菌」「ハリー・ポッター」だった。さ
らにさかのぼると、「ポケモン」「ナップスター」「だれが億万長
者と結婚したいの」で優勝した女性などなどがあらわれた。
私は驚愕した。検索するうちにわかってきたのだが、グーグルは私
たちの文化の動向を探っているだけでなく、その文化の神経組織の
奥深くまで潜入していたのだ。
「なんてことだ!私たちの文明が求めているものを、グーグルは見
抜いているんだ!」私はこの壮大な文明の産物を「意思あるデータ
ベース」と呼ぶことにした。
【2】
グーグルは、情報の宝庫を持っている。すべての出版事業をひっく
るめても、このようなデータベース表現される「意思の痕跡」には
太刀打ちできない。
その証拠に、グーグルは、「グーグルニュース」というベータプロ
ジェクトに着手している。彼らがマーケットリサーチ会社を立ち上
げれば、顧客が何を買い、何を探しているか、あるいは、何を買い
たくないのかを的確に掴むことができるだろう。
eコマース事業を始めたら、断然、有利な立場に立てるはずだ。文
化人類学、心理学、歴史学、社会学の研究者にとっても、フィール
ドワークの無限の可能性が満ちているに違いない。
そして、グーグルは実際に「意思あるデータベース」としてビジネ
スを展開するようになった。手始めに立ち上げたのが、アドワーズ
など「検索連動型広告」だ。
5年も経たないうちに、このビジネスは40億ドルを超える収益をあ
げるまでに急成長した。もう5年経てば、4倍に達するはずだ。
【3】
この数年のうちに検索エンジンは、情報の世界をナビゲートする手
段として広く知られるようになった。ウィンドウズというインター
フェースが、われわれとパソコンの相互作用を規定するように、検
索エンジンは、インターネットとの相互関係を規定する。
そして、誰でも検索ボックスを見れば、どう検索をすればよいかわ
かるようになっている。このわかりやすさこそ、わたしたちの意思
あるデータベースを構築しているのだ。
検索は、テレビとパソコンのデータを、まるでおとぎ話のように融
合させる。それだけではない。いずれ人工知能へと発展するかもし
れない。
【4】
「2001年宇宙の旅」「ターミネーター」「マトリックス」に登場す
るロボットやコンピュータプログラムを思い出して欲しい。こうし
たマシンを生み出すのが、ひょっとすると検索かもしれない。
または、検索によってわたしたちは、声をあげ、政府との関係を再
構築できるようになるかもしれない。コンピューター科学者のダニ
ー・ヒルズは言う。「まちがいなく、検索エンジンは知能を持つこ
とができます。今それが始まっているのです」。
グーグルで社員番号一番のクレイグ・シルバースタインも口を揃え
る。「人々に役立つ情報を提供することこそグーグルの使命です。
そのためにはグーグルに、人間並みの理解力が備わっていなければ
なりません」
意思を持ち、考える検索エンジン、グーグルは、マーケティング、
ビジネス、さらには人類の文化における難問も解決できるようにな
る可能性を秘めているのだ。
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■■選書コメント
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本書は、あの検索エンジン「グーグル」を運営する会社、グーグル
の創業から現在までを描いた、ノンフィクションです。
検索することを「ググる」と言う人がいるくらい、「グーグル」に
よる検索は、日常生活に浸透しています。本書は、そんな、時代を
代表する会社の歴史を赤裸々に物語るドキュメンタリーです。
ただし、この手の書籍にありがちな、「グーグル万歳」では終わり
ません。政府の規制の可能性、プライバシーの問題など、同社が抱
える問題やリスク要因まで踏み込み、中立性を保っています。
また、同社の話にとどまらず、ネットビジネス史が概観できる内容
です。そもそも、タイトルからも分かるとおり、検索エンジンの歴
史や技術、検索ビジネスの展望など、検索の一般的な話にかなりの
紙面が割かれており、示唆に富んでいます。
われわれは、年がら年中、モノを探しています。ある統計によると、
普通の人は捜し物に、年間150時間も費やしているそうです。会社に
いる時間の1ヶ月近くは捜しものをしていたということになります。
インターネットが登場してから、捜す場所がさらに増えました。ネ
ットの世界です。そこでは、検索エンジンだけが頼りです。この検
索エンジン、すでにネットの世界を飛び出そうとしています。
まもなく、その検索対象を携帯電話やPDA、さらにはTV番組、
自動車など、あらゆるデジタル情報にまで広げることでしょう。書
籍の中身でさえ、オンライン書店によってデジタル化され、すでに
検索対象になっているくらいです。
ネットベンチャーにたずさわる人はもちろん、ネットベンチャーの
歴史をおさらいしたい人、検索ビジネスの将来性を見極め、自社の
ビジネスに活かしたい人には、ぜひお読みいただきたいです。
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