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2006/04/14
日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法
日本は世界に冠たる「富裕層大国」だ。これは1988年、外資系広告
代理店の副社長だった私が行った調査でわかったことだ。当時、金
融資産1億円以上という富裕層が、大変な勢いで増えつつあった。
世界の富裕層の17%を日本人が占めており、アメリカに次ぐ富裕層
大国だということがわかったのだ。日本国内に富裕層は130万人、
これは人口の1%以上を占めていた。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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■今週の選書
■日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法
■臼井 宥文/宝島社
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価格でも性能でもない、富裕層が飛びつくビジネスの作り方を公開
します。
【1】
日本は世界に冠たる「富裕層大国」だ。これは1988年、外資系広告
代理店の副社長だった私が行った調査でわかったことだ。当時、金
融資産1億円以上という富裕層が、大変な勢いで増えつつあった。
世界の富裕層の17%を日本人が占めており、アメリカに次ぐ富裕層
大国だということがわかったのだ。日本国内に富裕層は130万人、
これは人口の1%以上を占めていた。
さらに調べると、ロールスロイスの売上は日本が世界で2番目だっ
た。それなのに、当時、国内のロールスロイスのセールス担当者は、
10人に満たなかった。130万人の富裕層に対し、あまりに少ない。
つまり、日本は富裕層大国であるにもかかわらず、富裕層市場はま
ったく未成熟だったのだ。富裕層向け商品やサービスを欲しい人は
たくさんいるのに、売る人間がいないという状態だったのだ。
【2】
富裕層ビジネスは、効率のよい事業だ。一つ10円のガムで40億円の
売上を上げるには、4億個売らなければならない。宣伝費、販路拡
大にかかる人件費や経費、開発・研究費を考えると大変な仕事だ。
しかし、40億円のプライベートジェットなら、たった一人のお金持
ちに売るだけでいい。より少ない人数、より小額のマーケティング
経費で同じ売上を確保することができるのだ。
それなのに、こうした富裕層マーケティングをおこなっている会社
はほとんどなかった。どこも同じように、投資効率の悪い薄利多売
に走っていた。
そこで「富裕層マーケティングの会社を作ろう」と決意した。だが、
世間の反響は悪かった。「バカをいうな、日本人の99%は一般庶民
なんだ」「金持ちの話なんて聞いても面白くない」などなどだ。
【3】
これまで、日本ではお金持ちはあまり優遇されてこなかった。その
証拠に、時代劇に出てくる典型的なお金持ちは「越後屋」、アニメ
では「スネ夫」だ。どちらも腹黒く、陰険で、ケチな印象だ。
富裕層はこれまで「成金」とさげすまれてきたのだ。だから、彼ら
はなるべく目立たないようにお金を使ってきた。ところが、最近は
事情が変わってきたようだ。
格差問題が取りざたされる一方で、ITビジネスなどで成功した「ニ
ューリッチ」や、有名人でお金持ちな「セレブ」といった言葉が広
まるようになったのだ。
同時に、彼らの愛用する商品、すなわちブランド品は、従来の「ム
ダに高い」商品という認識から「高品位なサービスと商品管理を行
っている」商品として、広く世間一般に信頼を得るようになった。
【4】
現在、日本にはどれくらい富裕層がいるのだろうか。メリルリンチ
証券のレポートでは、2003年末時点で金融資産100万ドル以上の人口
は131万人超、前年より7万人以上増えている。世界第4位だ。
収入面を見ると、2002年に申告所得2000万円以上の人は3.5%、3000
万円以上は1.7%となっている。すなわち、100人に3人以上が年間
2000万円を稼いでいる。
さらに納税データを見ると、被相続人35万人強のうち、約12.%が1
億円以上の財産を相続している。5億円以上で約1%、20億円以上で
も201人いる。2007年の団塊世代退職後にはこうした層はさらに増え
る。彼らの退職金をあわせると、ざっと見積もって60兆円だ。
ニューリッチの台頭も富裕層拡大の大きな要因だ。M&Aや金融業
界の弁護士は、普通の人に比べ、一桁も二桁も違う年収を稼ぎ出し
ている。ストックオプションや株で儲ける人も少なくない。
投資効率から考えれば、一般企業に勤めるビジネスマンを相手にす
るより、富裕層をターゲットにしたほうが断然有利だ。また、先行
き不透明なこの時代、いつ揺らぐかわからない大企業より、すでに
資産を築いた富裕層のほうが安全パイだ。
日本では、これから富裕層が飛躍的に増加し、富裕層市場もまた急
拡大していく。ここに目を向ければ、眼前に無限の可能性が広がる
ことがわかるはずだ。
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■■選書コメント
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本書は、世界に冠たる富裕層大国ニッポンにおいて、富裕層に向け
たマーケティングを展開することの重要性と、その具体的な方法を
説いた本です。
著者は、富裕層に特化したマーケティングの会社の経営する富裕層
の専門家で、世界中の富裕層とも親交が深い方です。その著者が、
日本の富裕層の実態と、彼らを口説き落とす方法を説きます。
ユニークなのは、富裕層をタイプ別に分類し、タイプ別に攻略法を
解説している点です。中には、富裕層でない人間には思いも寄らな
いニーズがあることが分かり、大変に参考になります。
また、富裕層が好むブランドも、我々がイメージしているモノとは
少々異なるようです。いろいろな意味で、富裕層でない人間の、富
裕層に対するイメージを変えてくれる内容です。
最近は、格差が社会問題になっています。もちろん、社会問題とし
て、見逃せない問題です。その時、メディアなどで取り上げられる
のは下流のほうですから、そちらに目が向きがちです。
しかし、ひとたび上流に目を向ければ、そこには膨大なビジネスチ
ャンスが広がっていることに気がつきます。ビジネスの現場に身を
置くモノとして、そのチャンスについて学ぼうとしないことは、大
変な怠慢と言えるかもしれません。
そんなわけで、富裕層については、一応抑えておきたいと思います。
最適なのは本書だと思います。あの『下流社会』の著者、三浦展氏
との対談が収録されているのも、にくい演出です。
マーケティング担当者や、社名で富裕層マーケットを担当させられ
て戸惑っている人、新しいビジネスを模索中の経営者など、いろい
ろな人に新しいインスピレーションを与えてくれるはずです。
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■■昨日、読んだ本
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『その言い方では、人はついてこない』(原孝)
→ http://tinyurl.com/zfz7z
※ロジックだけではうまくいかないビジネスの現場で役立つ感情ス
キルが修得できます。
『英語力パズル』(小池直己、佐藤誠司)
→ http://tinyurl.com/jh6ld
※思いのほかハマりました。寝不足に注意。
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