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2006/06/30
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
経済のグローバル化によって、中国で生産できるものは中国で、イ
ンドでできるものはインドでというように、少しでも人件費が安く
済む地域へ引っ張られるようになった。
一方、人件費の高い人々はアメリカへと引っ張られる。高いトレー
ディング能力を持つ人が、ゴールドマン・サックスに引き抜かれれ
ば、年俸億単位の世界基準給与を貰うことができる。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数50840部>━
■今週の選書
■ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
■ダニエル・ピンク(著)大前 研一 (訳)/三笠書房
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21世紀にも、まともな給料をもらい続けるには?
【1】
経済のグローバル化によって、中国で生産できるものは中国で、イ
ンドでできるものはインドでというように、少しでも人件費が安く
済む地域へ引っ張られるようになった。
一方、人件費の高い人々はアメリカへと引っ張られる。高いトレー
ディング能力を持つ人が、ゴールドマン・サックスに引き抜かれれ
ば、年俸億単位の世界基準給与を貰うことができる。
つまり、中低所得層と高所得層という二つのピークがある「M型社
会」が到来しているのだ。
では、21世紀にまともな給料をもらって、よい生活をするにはどう
したらいいのか。格差社会を生き抜くための方法とは何だろうか。
ポイントは、次の3つだ。
1.よその国、とくに途上国にできることは避ける。
2.コンピュータやロボットにできることは避ける。
3.反復性のあることは避ける。
【2】
今後、反復性のあることはロボットやコンピュータがやってしまう
か、海外にアウトソーシングされてしまう。インドや中国、または
コンピュータやロボットとの競争は避けねばならないのだ。
注目すべきは、イノベーション、クリエイティブ、プロデュースと
いったキーワードに代表される能力だ。
25年前、アルビン・トフラーは「第三の波」というベストセラーを
書き、農耕社会、産業社会に続いて到来する情報化社会について鋭
く指摘した。
実際、10年ほど前はピーター・ドラッガーが名づけた「ナレッジ・
ワーカー(知的労働者)」が礼賛されていた。しかし、これらの仕
事は、コンピュータやインターネットに取って代わられつつある。
【3】
情報化社会の花形ビジネスといえば、弁護士や会計士などだ。しか
し、最近は彼らを雇わなくても、コンピュータソフトを買えば済む
ようになった。
経済学の授業も、サミュエルソンの輪読会をやっているような授業
が多いが、サミュエルソン本人がインターネットで教えるようにな
れば、教師の多くは失職してしまうはずだ。
結局、第三の波が繁栄をもたらしたのは、マイクロソフトのような
一部企業だけだったのだ。それ以外の個人には、長期にわたる安定
した高収入をもたらすことはなかったのだ。
では、情報化社会の次にやってくる第四の波とは何か。それは「コ
ンセプトの時代」だ。これからの時代は「ハイ・コンセプト」、す
なわち新しいことを考え出す人が主人公になる時代なのだ。
彼らは「右脳を活かし、全体的に思考する力」「新しいものを発想
する力」を持っている。右脳でアイデアを働かせ、左脳でこれを評
価できる。この作業を繰り返し、優れたアイデアを出す。
また、デザイン、物語性、調和性、共感、遊び心、生きがい面とい
う6つの感性において優れたものを持っている。こうした能力の持
ち主こそが、これから富を支配するようになるのだ。
【4】
日本は、今まで欧米に追いつけ、追い越せでやってきた。つまり、
常に「答えのある世界」にいたのだ。しかし、これからは日本も「答
えのない世界」に突入せざるを得ない。
そこで求められるのは、やはり右脳を活かした全体的な思考能力と、
新しいものを発想する能力だ。だからこそ、日本人は左脳だけでな
く、脳全体を活性化し、6つの感性を磨く必要があるのだ。
問題は、この感性をいかに身につけるかということだ。ひとつは、
自分と対極的な人間と仲良くやることだ。自分が左脳型なら突拍子
もない発想をする右脳型とつきあい、逆に右脳型なら左脳型の友人
を探して会話を繰り返すのだ。
類は友を呼ぶ的な発想でいると、感性を磨くことはできない。自分
の脳につねに刺激を与え続ける癖をつけることだ。そうするうちに、
やがて今後の厳しい世界を生き抜くための力が備わるはずだ。
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■■選書コメント
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「21世紀に富を得るために、私たちは何をするべきか」
この問いに対する答えを示してくれる本として、本書は全米ベスト
セラーになりました。
著者ダニエル・ピンク氏は、米上院議員の経済政策担当補佐官や、
クリントン政権やゴア副大統領のもとでスピーチライターを努めた
人物です。講演などで世界中から引っ張りだこの人気者です。
情報の時代は終わりを告げ、これからはコンセプトの時代になると
説きます。そこで求められる能力は、これまで求められてきたもの
とは全く異質のものです。当然、求められる努力も異なってきます。
日本でも、所得格差が進んでおり、その傾向はさらに加速しそうで
す。そんな時代にしっかり稼ぐには、どんな能力を身につけたらい
いのでしょう。そのヒントが本書に書かれています。
ひとことで言うと、右脳の力です。従来重視されてきた左脳の力に
加えて、右脳が得意とする、全体的な思考能力や共感する能力など
が、これから強く求められてくるのです。
右脳が可能性を秘めているという指摘は、これまでも散々されてき
ました。しかし、その多くは怪しげで、自社商材や講座を売る口実
だったり、オカルトまがいというケースが少なくありませんでした。
本書は、そうしたPR本、オカルト本とは全く違います。頭脳労働
が海外の国々や、PCに置き換えられていく状況を指摘し、こうし
た状況下で生き残る方法として右脳を鍛えることを提言するのです。
「これからもビジネスの世界で生き残るために、努力は惜しまない」
と、誰が考えると思いますが、間違った努力をするのは命取りです。
そうならないために、本書を読んでおくことをお薦めします。
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