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2006/11/24
超・格差社会アメリカの真実
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アメリカの影響が強い日本では「アメリカでは、」という前置きを
頻繁に耳にする。だが、そこで語られているアメリカ像は一面的で
あることが多い。
アメリカだけでなく、どこの国でも「語られていない」部分は多い。
しかし「語られていない」部分を見落とすと、全体像の把握が難し
く、誤解も避けられない。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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■今週の選書
■超・格差社会アメリカの真実
■小林由美/日経BP社
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■■選書サマリー
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富の6割が5%の金持ち層に集中する国、アメリカの真実とは?
【1】
アメリカの影響が強い日本では「アメリカでは、」という前置きを
頻繁に耳にする。だが、そこで語られているアメリカ像は一面的で
あることが多い。
アメリカだけでなく、どこの国でも「語られていない」部分は多い。
しかし「語られていない」部分を見落とすと、全体像の把握が難し
く、誤解も避けられない。
誤解の上に推測を積み重ねていくと、他者の成功事例から学んで真
似ることも、失敗事例から学んで同じ轍を踏まないようにすること
も難しい。
しかし、住んだことがない国について、ズレに気づくことは難しい。
また、気づいたとしても、その原因を突き止め、空白の部分を埋め、
国や社会の全体像を理解するには、かなり時間と努力を要する。
そこで、ここではアメリカと日本の様々なズレに着目しつつ、アメ
リカという国の社会の構造について、日本人にも皮膚感覚で実感で
きるように解き明かしていきたいと思う。
【2】
たとえば、アメリカは階層社会と言われるが、さらに詳しく言えば、
「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「おちこぼれ」
の4つの階層に分かれた社会と言える。
「特権階級」とは、米国内に400世帯前後とされる純資産10億ドル
(1200億円)以上のビリオネアと、5000世帯強とされる純資産1億ド
ル(120億円)以上の金持ちとで構成される特権的富裕層のことだ。
「プロフェッショナル階級」は、35万世帯前後と推察される純資産
1000万ドル(12億円)以上の富裕層と、純資産200万ドル(2億4000
万円)以上かつ年間取得20万ドル以上のアッパーミドル層からなる。
「特権階級」と「プロフェッショナル階級」の上位2階層を合わせ
た500万世帯前後、総世帯の上位5%未満の層に、全米の60%の富が
集中しているのが実態だ。
【3】
では、アメリカ国民の60?70%を占めるといわれた中産階級はどこ
に行ってしまったのだろうか。
アメリカの中産階級は70年代以降、一部は専門スキルやノウハウを
磨き「プロフェッショナル階級」へステップアップした。だが、メ
ーカーなどで働く中産階級の大半は「貧困層」への道を辿っている。
「落ちこぼれ」ている層とは、貧困ライン(4人家族で年間世帯所
得2万3100ドル=約280万円)に満たない世帯のことだ。彼らはアメ
リカの人口の25?30%前後を占めている。
このアメリカ社会の最下層には、都市のスラムや南部諸州に集中す
る黒人やヒスパニック、インディアン保留区から抜け出せずにいる
アメリカン・インディアン、アラスカ州のイヌイットといったネイ
ティブ・アメリカン、移民や密入国した違法移民なども含まれる。
【4】
もともと、アメリカは「自由・平等・民主主義」を旗印に建国され
た国だ。その基本理念が貫かれているがゆえに、世界で最も魅力的
で、安心して暮らせる国の1つであり続けた。
だが、アメリカが究極の社会かと言えば、そうではない。わずか5%
の人達に社会の富の6割%が集中している現実を見れば、本当に自
由で、平等で、民主的な国だと受け入れられるはずがない。
アメリカの理念と現実との間には、隠しようのない乖離がある。と
ころが、あえて形骸化しつつある理念や理想を常に唱え、それを信
じて行動しようとする二重心理が働いている。
そして、その乖離を「進歩」で埋めようとし、それができると信じ
る楽観主義がある。ここにアメリカを理解する鍵が隠れている。
日本は、良くも悪くも、さまざまな面でアメリカの後を追っている。
現在のアメリカの姿は、もしかしたら日本の将来像を示しているの
かもしれない。
一方、歴史的な背景の違いから生じた日米社会の基本的な違いを理
解すれば、日本が決してアメリカと同じになり得ない違いや限界、
同じ轍を踏まず、避けて通れる道も見えてくるはずだ。
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■■選書コメント
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本書は、アメリカの社会構造とその生成過程を、著者自らの経験に
基づいて描き出したものです。特に、日本ではあまり語られないア
メリカの本当の姿が赤裸々に描かれています。
著者は、エコノミスト、証券アナリスト、コンサルタントとして、
アメリカで26年間活躍してきた方です。自分のビジネスの実体験と
独自の調査に基づき、アメリカの姿を的確に捉えて描いています。
日本では、日常会話でも、メディアでも、すぐに「アメリカでは」
と言いがちです。しかし、日本人が語るアメリカは、得てして先入
観と偏見でゆがめられています。
たとえば、日本では「格差」の問題が話題ですが、これをもって「
日本もアメリカ型の弱肉強食社会が到来した結果だ」などと、アメ
リカを引っ張り出して表現したりします。
しかし、社会構造も、文化的背景も違うアメリカの「格差」と、日
本のそれを比較して議論するのは、かなり無理があります。便宜的
に「格差」と一言で表現していても、中身はまるで違うからです。
もちろん、日本はアメリカの真似をしているフシが多分にあり、結
果的に日本の社会、それどころか世界中が、アメリカの社会に似て
きている側面があると思います。
だからこそ、私たちはアメリカの実態を正しく把握するべきです。
本書は、そのために役立ちます。特に、著者が日本人ですから、日
本人のアメリカ感を前提に書いており、大変理解しやすいです。
日本を考えたい人が、参考書として読むのはもちろん、海外部門の
アメリカ担当者や、アメリカ進出を目論む経営者など、単純にアメ
リカの実態を詳しく知りたい方にもお薦めです。
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