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2010/03/05
未来思考 10年先を読む統計力
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常識を疑え―――
私たちは錯覚の中で暮らしている。テレビなどで報道される情報は、すでに加工されたものだ。ニュースでさえ、目を引くように加工されているのが普通だ。これは私たちが新奇なニュースを欲している以上、ある程度はやむを得ない。それに、真偽は生データか学術論文に当たらなければ分からない。だが、それは大変に手間のかかることなのだ。
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■■ ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数56,118部>━
■今週の選書
■未来思考 10年先を読む統計力
■神永正博/朝日新聞出版
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■■選書サマリー
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常識を疑え
【1】
私たちは錯覚の中で暮らしている。テレビなどで報道される情報は、
すでに加工されたものだ。ニュースでさえ、目を引くように加工さ
れているのが普通だ。
これは私たちが新奇なニュースを欲している以上、ある程度はやむ
を得ない。それに、真偽は生データか学術論文に当たらなければ分
からない。だが、それは大変に手間のかかることなのだ。
たとえば、日本では少子化が大問題になっている。そもそも少子化
の原因は何か。人口学の基礎理論の一つ「人口転換論」によれば、
最大の原因は、乳児死亡率の急激な低下だ。
大正時代には1000人中170前後の新生児が一歳まで生きられなかっ
た。出産で亡くなる母親も4%を超えた。ところが、今そのような
子どもは1000人中2~3人、母親の死亡率も0.4~0.5%程度だ。
衛生・医療の劇的向上で、子どもの死という悲劇がなくなり、少子
化が進んだのだ。出産は母体にとって大きな負担だから、たくさん
産むより、少なく産んで、しっかり育てる人が増えたのだ。
【2】
日本では、結婚しないまま子どもを産むケースは少ない。日本の婚
外子は2%以下と、スウェーデン55.4%、イギリス42.9%、アメリ
カ36.8%、イタリア13.8%などに比べてケタ違いに低い。
日本では婚外子の許容度が低いからだ。この状態では、未婚率の上
昇が、少子化につながってしまう。実際、50歳時点で未婚の人の割
合は、女性が7%程度、男性は15%と増えている。
だが、男性独身者の87%、女性の90%が「将来は結婚したい」と考
えている。「いずれ結婚するつもり」とする人の割合は安定してい
る。独身主義者が増えているのでなく、結婚できないのだ。
また、結婚する時期が遅くなれば、女性も男性も、生物学的に持て
る子供数が限られてくる。今後、平均初婚年齢が上がれば、生物学
的限界がリアルな問題になる可能性もあるのだ。
【3】
交際相手がいて、結婚意欲のある未婚者を対象に結婚の障害をたず
ねると「結婚資金」の割合が下がっている一方「職業や仕事上の問
題」を理由に挙げる人が男女とも増えてきている。
結婚資金に先立つものとして「仕事がない」とか「仕事が安定しな
い」といった状態なのだ。現実に、男性の収入と既婚者の割合には
関係がある。699万円以下では、年収が高いほど有配偶率が高い。
ただ、年収が低いと結婚できないわけではない。たとえば、30歳~
34歳で年収200万円~249万円の男性のうち40.8%が結婚している。
年収と結婚については「25歳から35歳の独身女性の40%が、年収
600万円以上の男性を希望している」という調査結果が引用される
ことが多い。だが、これはあくまでも東京の女性に対する調査だ。
東京でも60%は年収600万円なくてもいいと言っている。「年収が
低いと結婚さえできない」というのは、ちょっと大げさだ。
【3】
少子化対策の中であまり議論にならないことだが、母子家庭でも子
育てをする上で、大きな問題がないように支援するべきだ。
出産後に離婚や死別になれば、母子家庭になる。日本で母子家庭が
子どもを育てるのは過酷だ。母子世帯の貧困率は際立って高く、66%
にも達する。OECD諸国でトルコについで2位という有様だ。
まず、セーフティーネットを用意することが必要だ。子どもを産め、
産めと言っておきながら、セーフティーネットも用意せず「勝手に
頑張れ」では、あまりにも無責任だ。
また、昔の女性は結婚せずに生きていくのが困難だったため、結婚
「しなければならなかった」しかし、これは必ずしも望ましいこと
ではない。婚外子でも社会的に不利にならないようにするべきだ。
世の中には、あたかも子供さえ増やせば、突然世の中が明るくなる
かのような意見が幅を利かせている。だが、統計を冷静に分析して
みると、解決すべき問題は他にあることが見えてくる。
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■■選書コメント
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日本の未来を人口推計など統計学データに基づき、さらに経済的、
社会学的な捕捉をしながら予測します。それは、世間で常識とされ
ているものとは、少し違うものでした。
「日本は少子化へ向かう」「都市化が進む」「格差社会が進む」な
ど、日本には解決の難しい問題が山積みで、未来はお先真っ暗であ
るかのような報道が、世に溢れています。本当にそうでしょうか?
このあたりを、著者が統計データという客観的な事実を用いて切り
込みます。それに対するユニークな解決策も見出していきます。本
当のところが浮き彫りになる本です。
文中には、たくさんの統計データや資料が出てきます。だからと言
って、読んでいて、難しいとか、退屈ということは、全くありませ
ん。著者のユニークな切り口と筆力で、ぐいぐい引き込まれます。
現代社会は情報の洪水です。中には捏造、操作されたもの、誇張さ
れたものもあります。このような中で、私たちは何が本当なのか、
真実を見極めにくくなっています。
この錯覚を見破るためには「統計データ」などの客観的な事実を自
ら入手し、分析し、自分で判断する必要があります。しかし、そう
したデータの入手も分析も、素人には容易ではありません。
そこで、本書に学びます、もちろん、すでに持論を持つ人が、参考
にすることもできますし、これからデータを自ら分析し、持論を持
ちたい人が、その方法を学ぶこともできます。
少子化、高齢化、仕事など、日本の未来について、本当のところが
知りたい方、考えたい方、統計を用いた説得力のある理論に興味が
ある方など、すべてのビジネスパーソンにお勧めします。
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