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2010/08/13
日本一元気な30人の総合商社

「ヘン」なもの扱って年商２年で５倍！

神保町の町はずれの小さなビルに、私の会社「イービストレード」はある。従業員はたったの30人。扱う商材はおまけ、倒産寸前の会社、シベリアの中古品と、ヘンなものばかりだ。それでも、れっきとした「総合商社」だ。年商は２年で５倍以上、83億6600万円になった。長引く不況と言われるが、やりようでは、これだけの数字を上げることができるのだ。

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■今週の選書
■日本一元気な30人の総合商社
■寺井良治／小学館
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■■選書サマリー　　
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「ヘン」なもの扱って年商２年で５倍！

【１】

神保町の町はずれの小さなビルに、私の会社「イービストレード」
はある。従業員はたったの30人。扱う商材はおまけ、倒産寸前の会
社、シベリアの中古品と、ヘンなものばかりだ。

それでも、れっきとした「総合商社」だ。年商は２年で５倍以上、
83億6600万円になった。長引く不況と言われるが、やりようでは、
これだけの数字を上げることができるのだ。

まだ、誰も目をつけていない商売のタネは、たくさん落ちている。
たとえば、わが社に持ち込まれるのは、大手商社で興味どころか、
話も聞いてもらえなかった商材だ。

そんな、大手が相手にしなくなった「小さな商材」ばかりを私たち
は扱っている。だからこそ「大きなビジネス」の可能性が秘められ
ているのだ。

【２】

たとえば、わが社が扱う「水浄化システム」は、そんな「金の卵」
の一つだ。このシステムは、水浄化装置を手がける長崎の会社「マ
リン技研」から持ち込まれたものだ。

実はこの会社、話を持ち込んできた時、資金調達ができなければ、
倒産も免れない状況下にあった。そのため、自社の株券と特許を担
保に、明日までに１億円の資金を融通してほしいと言ってきたのだ。

社長とは、会ったばかりだったが、私はこの特許技術が「金の卵」
であることを確信した。水質汚染が深刻な場所は、世界中にあるの
だ。そして、一晩で１億円を支援することにした。

読みは当たった。１年目で２億円、２年目はその２倍となり、４年
目の2012年度には、10倍以上の25億円までなりそうだ。最終的に
は「1兆円ビジネス」になる可能性も秘めている。

世界的な不況で、閉塞感が漂う日本だが、優れた技術はまだまだ埋
もれている。ところが、その目利きがいないために、せっかくの商
品が世に出る機会を失っていることが多いのだ。

【３】

当社に持ち込まれる商材は、年間1000件以上ある。そんな中、商品
の発掘を可能にしたのは、大手商社には決して真似できない「小さ
な商社」の即断即決の機動力だ。

一般に、会社の規模が大きくなればなるほど、案件が持ち込まれて
から、判断して実行に移すまでの時間が長くなる。一方で、勝ち残
るために「経営のスピード化」が求められている。

当社では、経営幹部５人が、日頃から顔を合わせている。そのため、
判断から実行までのスピードが格段に違う。水浄化装置を手がける
マリン技研のケースは、「即断即決」が功を奏した象徴的な事例だ。

当社では、水ビジネスの他に、雑誌の付録や商品のおまけにつく
ＤＶＤやＣＤ、空港に設置されている金属探知機、果てはシベリア
貿易まで行っている。

これらは、一見何のつながりもないように映るかもしれない。「結
局、何でも屋か」と思われるかもしれない。しかし、まったく関連
性のないような、これらの事業の根底には共通項がある。

それは、大手企業が扱うには小さすぎ、零細企業や個人商店が扱う
には手に余る分野だということだ。つまり、どちらの企業にも手に
負えない「すき間」、すなわちニッチに入る商材なのだ。

【４】

最近「勝ち組」と言われる大企業は、より大きなビジネスを志向し、
勝ち組を目指す企業もそれに追随しようとしている。片や零細企業
は、規模縮小を余儀なくされ、背伸びの余裕もなく、縮小の一方だ。

そうなると「大」と「小」がかけ離れていく。その「中間」である
すき間は、実はどんどん大きくなっている。それこそが、われわれ
の「主戦場」なのだ。

もちろん、私たちは、ビジネスをさらに躍進させ、かつて貿易立国
を支えた商社本来の姿まで回帰させることを本気で狙っている。

そのためには、単にすき間を狙うだけでなく、他所にはまねのでき
ない圧倒的チャンピオンになる。それが、私たちの狙うビジネスだ。
マリン技研のケースはその真骨頂がフルに発揮されたケースなのだ。
 
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■■選書コメント
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この不況下に、売上を２年で５倍に伸ばした、すごい社長の奮闘記
です。著者の会社は「おまけ」「倒産寸前の会社」「シベリアの中
古品」など、ちょっとユニークな商品を扱う商社です。

扱う商材ばかりでなく、社長の経歴も、この手のベンチャーとして
はユニークです。日商岩井のサラリーマンとして、社命で社長に就
任しながら、親会社が消滅するという数奇な経験をされています。

そんな経歴もあって、すごい業績を残した会社の社長の本にもかか
わらず「本当は、ベンチャー企業の社長など、やりたくなかった」
と告白するなど、いわゆる武勇伝とは異なる趣です。

一般に、ベンチャー経営者というと、生まれつき天才だったり、時
代の波や幸運が後押ししたりしています。そのため、普通の人には
その経歴が、現実味を帯びてこないのです。

その点、本書の著者は、サラリーマン出身で、いわゆる人事異動で
社長のキャリアを、不承不承スタートさせています。その分、他の
経営者より親近感が持てそうです。

もちろん、本書は社長の私的な武勇伝に終始するものではありませ
ん。経験から得たノウハウを、処方箋としてまとめてあります。普
通のビジネスパーソンでも活かせるように、という配慮からです。

その内容も「身の丈を知る」「社長の仕事は会社を潰さないこと」、
「他人の顔色を見る」など、すごい業績を成し遂げた社長らしから
ぬ謙虚なものです。

サラリーマン出身の社長の言葉だけに、普通のサラリーマンでも、
考え方や言葉の一つ一つに共感でき、無理なく仕事にも生かせるは
ずです。日本のすべてのビジネスパーソンにお勧めします。

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