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2011/01/21
愛国消費
「日本、大好き」な若者たち
近年、日本が好きだと考える若者が増えている。この40年あまりで若者の「日本好き度」は着実に増加している。そのことは、様々な調査からも見て取ることができる。とはいえ、若い世代の実際の衣食住が日本的になっているわけではない。米の消費量は減っているし、部屋も洋室が多い。服も、日常的にはほとんど洋服だ...
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■今週の選書
■愛国消費
■三浦展/徳間書店
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■■選書サマリー
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「日本、大好き」な若者たち
【1】
近年、日本が好きだと考える若者が増えている。この40年あまりで
若者の「日本好き度」は着実に増加している。そのことは、様々な
調査からも見て取ることができる。
とはいえ、若い世代の実際の衣食住が日本的になっているわけでは
ない。米の消費量は減っているし、部屋も洋室が多い。服も、日常
的にはほとんど洋服だ。
浴衣を着るのは夏の花火大会の時か、旅館に泊まった時くらいだ。
本格的な着物は、成人式にしか着ない人がほとんどだ。しかし、だ
からこそ日本の伝統的な衣食住が若い世代には新鮮なのだ。
それだけではない。彼らが欲しているのは、日本人としての「正統
性」の感覚、「文化的、歴史的に正しいことをしている」という感
覚なのだ。
【2】
古い神社やお寺に興味を持つ者なら、誰でも京都や奈良に行きたい
と思うはずだ。実際、京都市への観光客数は1995年以降増加し、現
在は、年間4500万人ほどもある。
団塊世代が行くようになったことの影響が大きいが、若い世代でも
かなり増えている。団塊世代の母親と娘というパターンも多い。出
版物でも京都に関するものは増えている。
さらに興味深いのは、京都市への観光客が増えた時期は、海外旅行
者数が減り始めた時期でもあるということだ。特に、20代の若者の
海外旅行が減り始めた時期とかなり重なっている。
【3】
こうした「日本」を求める心理は、1990年代に広がったようだ。こ
の時期は、サッカーのJリーグがスタートし、フランスでのワール
ドカップ出場を果たした。
1995年には、野茂英雄が大リーグに挑戦した。つまり、スポーツを
通じた愛国心が、連日マスメディアによって、昂揚させられ始めた
時期なのだ。
その後、オリンピックやワールドベースボール・クラシックなどの
スポーツ報道を通じて「日本のために」「日の丸を背負って」「日
本の誇り」という言葉を頻繁に聞くようになったのだ。
当時は「自分探し」「自分らしさ」が若者のテーマだとされていた。
しかし、その裏側で、実は「日本探し」「日本らしさ」が求められ
ていたのだ。このことは注目に値する。
【4】
若い世代が「日本好き」で、日本的な行動をとるようになったから
といって、彼らがナショナリストになったわけではない。祝日に日
の丸を飾る人はほとんどいない。
若い世代の日本好きは、政治的な意味での日本好きではない。「豊
かで」「文化的で」「美しい生活のできる国」として、日本が好ま
れているのだ。
もちろん、スポーツ報道を通じたナショナリズムの昂揚が、政治的
なナショナリズムと無縁とは言えない。昨今の尖閣諸島問題などを
契機に、ナショナリズムが生まれていないとも限らない。
豊かで美しい国としての日本を好む心理も、そうした政治的なナシ
ョナリズムを育む土壌になりうる可能性がある。その点は、注意し
なくてはならない。
【5】
一方、日本的な行動をとるようになったからといって、西洋的な行
動をとらなくなったわけでもない。彼らはクリスマスもバレンタイ
ンデーも楽しんでいる。むしろそこに日本的行動をプラスしている。
昨今の日本志向は、生活が西洋化、雑種化する中で、むしろ「だか
らこそ、純粋な日本を愛おしみたい」という感覚の増大なのだ。今、
日本人が求めているのは「日本」であり、日本への「誇り」なのだ。
かと言って、日本的なものの消費が伸びているわけではない。とは
いえ、こうした日本志向が消費に結びついた「愛国消費」が、いつ
か必ず起こるはずだ。
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■■選書コメント
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本書は、現代の日本の若者を中心に見うけられる「日本好き」「愛
国主義」に着目、それを分析しながら「どうすれば消費につなげる
ことができるのか」に関して、ヒントを探そうとする本です。
著者は「下流」という言葉と、その存在を世に広めたベストセラー、
『下流社会』の著者で、消費社会研究家・マーケティングアナリス
トの三浦展さんです。
確かに、最近は若い女性が歴史にはまったり、京都への観光客が増
えたり、『阿修羅展』がヒットしたりなど、日本古来のものを支持
する人が増えています。
それは、単なるノスタルジーでも、イデオロギーでもない、新しい
タイプの愛国主義、多くの国民が共有する国家のイメージ、「大き
な物語」としての愛国主義だと著者は分析しています。
残念ながら、この新しい「愛国主義」は、今のところ、大きな消費
を生み出すには至っていません。
確かに、国内に目が向いているうちは、高級ブランド、外車、海外
旅行などなどの高額商品の消費にはつながりません。それどころか
らエコと結び付き、消費の反作用にさえなっているといいます。
ただし、これが将来、日本人の消費トレンドの一大テーマになる可
能性はあります。その時、企業は、マーケティングは、何に、どう
取り組むべきなのか、そのヒントを与えてくれます。
本書は、著者のこれまでの本同様、大胆な仮説を、たくさんの調査
で駆使して検証していくという手法で書かれています。本書をもと
に、自分なりの仮説を立ててみるという読み方もできます。
マーケティング関連の仕事に携わる方はもちろん、経営者や幹部な
ど、会社のかじ取りをする人、私を含め、こうした市場分析の本が
好きな方にお勧めします。
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2011
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