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2011/11/18
訣別-大前研一の新・国家戦略論
迷走日本に、ご意見番が喝!
バカな政府を持つと高くつく。過去の延長線でしか考えない官僚と、政局しか頭にない政治家に任せておけば、日本は衰退の一途だ。バカな政府を作ったのは国民だ。結局、自分達で変えるしかないのだ。過去に成功した「ニッポン・モデル」はすっかり陳腐化し、硬直化している。いまこそ、ゼロベースの大改革を断行し、新しい日本を作るときだ...
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■■ ビジネス選書&サマリー
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■今週の選書
■訣別-大前研一の新・国家戦略論
■大前研一
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■■選書サマリー
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迷走日本に、ご意見番が喝!
【1】
バカな政府を持つと高くつく。過去の延長線でしか考えない官僚と、
政局しか頭にない政治家に任せておけば、日本は衰退の一途だ。バ
カな政府を作ったのは国民だ。結局、自分達で変えるしかないのだ。
過去に成功した「ニッポン・モデル」はすっかり陳腐化し、硬直化
している。いまこそ、ゼロベースの大改革を断行し、新しい日本を
作るときだ。
悪政のツケは、国民の血や財産であがうことになる。それを浮き彫
りにしたのが、今回の原発事故だ。最終補償はどこまで膨らむかわ
からないが、最後は国が賠償を肩代わりすることになるはずだ。
また、避難指示、出荷制限、浜岡原発の停止など、政府の場当たり
的な対応が、補償額を膨れ上がらせている。いずれも政府の無能に
起因するものだが、そのツケを払うのは、最終的には納税者だ。
【2】
バカな政府を持つと恥をかく。震災では日本人の冷静さや結束力は
世界から賞賛を受けた。しかし、原発事故に対する政府・東電のも
たつき、情報公開の遅れで、称賛の声は疑念や不審変わった。
情報を小出しにして事態を過小評価しているかのようなアナウンス
を続ける日本政府をよそに、西欧諸国は早くから日本在住の自国民
に対して独自の対応をしていた。
消防士や作業員を平気で被ばくさせる先進国とは思えない、稚拙な
対応は、日本政府の危機能力の低さを世界にさらした。汚染水を海
に投棄するに及び、海外の論調は同情から怒りと侮蔑に変わった。
【3】
気が付けば、細川政権以降の20年間、日本はまともな政府を持った
ことがない。国民に負担をかけ、恥をかかせるような無能な政権ば
かりが続いてきた。
政権交代で多くの国民は選挙で政治が変わる感触を得たはずだ。と
ころが、民主党政権になっても何も変わらない。それどころか、外
交を破壊し、バラマキで国の借金を膨らませてしまった。
結局、首相の首を挿げ替えても、政権をたらいまわしにしても、日
本の状況は変わらない。自分たちで変えていくしかないのだ。
日本人は、追い込まれれば強い。石油ショックの時も、円高不況の
時も、追い込まれたからこそ、自分を変え、時代を切り開くことが
できた。
結局、人は危機感がなければ変わらないのだ。「路頭に迷うかもし
れない」「血が流れるかもしれない」という恐怖に直面しなければ、
危機感は生まれない。それがなければ、人はぜったいに変われない。
今回の震災は日本人の危機感を呼び覚ます可能性が高い。震災がき
っかけで、自ら変わることができるかもしれない。
【4】
それでも自分から変われないなら、あとは外圧だ。たとえば、黒船
が来航した幕末、幕府は開国と戦争の危機感の中、若くて優秀な人
材を必死で集めた。彼らが維新後に活躍したから近代化できたのだ。
戦後は占領軍とマッカーサーだ。ここで教育の自由化、財閥解体な
どを行い、一気に民主化した。その結果、若い人材が多数輩出し、
彼らが、奇跡的な戦後復興と高度成長の主役になった。
今、緩みきった日本のタガを締め上げてくれる外圧の可能性がある。
たとえば、日本国債が暴落して日本発の世界恐慌が懸念される事態
になれば、IMFが占領軍として乗り込んでくるかも知れない。
また、原発事故で「原子炉は国際管理すべし」という議論になって
いる。今後、IAEAなどの国際機関が原発占領軍として乗り込ん
でくる可能性がある。それを、日本人がどう受け止めるかだ。
日本は、バブル崩壊から未だに自力で抜け出せずにいる。このまま
危機感を持てず、変革ができなければ、日本は「世紀末に反映した
極東アジアの小国」として世界に記憶される存在に落ちぶれる。
今回の震災をきっかけに、日本人が危機意識を取り戻し、気力を奮
い立たせ、自ら変わるべきだ。それができれば、震災復興を日本の
復興につなげることが絶対できるはずだ。
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■■選書コメント
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ご存知、経営コンサルタント大前研一さんの国家論です。以前、大
ベストセラーとなった『平成維新』以来、久しぶりの本格的な国家
論になっています。
現在の日本の混迷とその原因、大国や新興国の動きを含めた世界の
趨勢、それに対して日本がとるべき対応策をビジョンとして鮮やか
に示します。
最終章に描かれる提言は『平成維新』の時と基本的に変わりません。
ただ、震災や原発事故など、当時想定できなかったことを盛り込ん
で、最新版として調整されています。
特に、ご自身の専門分野の一つでもある、原発事故に対する政府や
東電の対応に対する言及は鋭く、圧倒的に説得力のある内容になっ
ています。
大前さんの本の魅力は、現状分析や批判にとどまらず、必ず実行可
能な提言がついているところです。本来、これがなければ、ただの
愚痴や妄想ですが、そんな本が書店には溢れています。
本書が描く国家ビジョンは、今となっては政治家や官僚からさえも
聞かれなくなった壮大なビジョンです。これが独特の筆致で語られ
ますので、一気に読むことができ、納得できます。
大前さんは、私たちの世代にとってはカリスマ的な存在です。現在、
活躍するコンサルタントの多くが、彼に憧れてあこがれてその道を
選んでいるはずです。
しかし、若い人たちの中には、知らない人も増えているようです。
日本にもこのような論客がいることを知るためにも、ぜひ読んでく
ださい。もちろん、日本の未来を考えたいすべての人にお勧めです。
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