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2012/05/25
気づく仕事
文殊の知恵は、なぜ3人?
博報堂は、総合広告会社であり、様々な業務を手がけている。すべての業務に通底するのは「生活者の欲望を探りあてる」という営みだ。人は、自分の欲望に気づいていないものだ。その「欲望を発見」することが私たちの仕事だ...
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■今週の選書
■気づく仕事(博報堂 研究開発局)
■博報堂 研究開発局
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★本書の詳細、お買い求めは、
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087860140/tachiyomi-22
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■■選書サマリー
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文殊の知恵は、なぜ3人?
【1】
博報堂は、総合広告会社であり、様々な業務を手がけている。すべ
ての業務に通底するのは「生活者の欲望を探りあてる」という営み
だ。
人は、自分の欲望に気づいていないものだ。その「欲望を発見」す
ることが私たちの仕事だ。
発見を可能にするのが「気づき」という行為だ。私たちは「必要に
応じて」、本当は「必要に迫られて」、この「気づき」を繰り返し
積み重ねてきた。
つまり、博報堂の仕事の基本は、「気づく」ことにあると言える。
それは、ほとんど基本動作になっているものであり、もはやある
種の「体質のようなものにさえなっている。
「気づき」はどうやって生まれるのか。ある研究機関が博報堂の打
ち合わせを研究した結果、次のような特徴があった。
それは「ほぼ、7割が雑談でできている」ことと「打ち合わせの終
わり近くで一気にアイデアの芽吹きがある」ということだ。
もちろん、私たちはそれを「雑談」だとは思っていない。だが、ど
うやら、私たちのやり方は、他とは違っているのかもしれない。そ
のことを、第三者から指摘されて、認識するようになった。
【2】
「気づき」とは何か。そして、どうすれば「気づく」ことができる
のか。
普通、人は固定観念を持ちながら、いろいろなものごとを見ている。
それは、常識や単なる思い込み、個々の性格・クセや文化・習慣に
起因するものなど、あげればきりがない。
いずれにしろ、私たちは、これまでの経験や価値観に基づいて、も
のごとに対して「一通りのとらえ方」をしている。いわば、多種多
様な「メガネ」を通して、無意識に世界や対象を見ているのだ。
この固定観念という「メガネ」を自覚して、一度はずし、ものごと
の本質を探り当てる。それができるから、新しい発想が得られる。
その力こそが「気づき」なのだ。
【3】
「気づき」は、ちょっとした「違和感」の発見から始まる。違和感
とは「なんか、ひっかかるなあ」とか、「あれ、思ってたのと違う
なあ」といった「認識のズレ」のことだ。
この「なんか」がとても大切だ。「なんかって何だろう?」と考え、
その違和感の正体を探り当てていく。これは「自分の認識のピント
を補正していく」作業だ。
最初はボヤけていたピントが、その「なんか」にしっかり合った時、
人は新しい認識を獲得できる。つまり、これまでとは見え方が違う
「新しいメガネ」に「かけかえ」たわけだ。
【4】
気づきが、違和感、すなわち「認識のズレ」から始まるなら、その
発見と解明は、一人よりも多人数で行うほうが生産的だ。なぜなら、
何人かが集まれば、それぞれの認識は異なるからだ。
同じものに対しても、人によって違うとらえ方をする。だから、ズ
レを発見しやすいのだ。
たとえば「三人寄れば文殊の知恵」が、2人ではダメなのか。2人
の間の関係は「ひとつ」しかない。つまり、2人での議論からは、
認識のズレは「ひとつ」しか生まれないのだ。
こうなると「どちらが正しいか」という「二項対立」に陥りやすい。
しかし、3人なら、ズレは「3つ」生じる。これなら「誰かの認識
だけが正しい」ということにはなりにくい。
つまり「三人寄れ」ば、優劣を競い合わず「気づき合う関係」が生
まれるのだ。これが共同で「気づき」を得ることを可能にする。こ
の関係は、4人なら6つ、5人だと10と増えていく。
多人数になるほど、多様なズレが生まれやすくなる。もちろん、人
数さえ増やせば気づけるわけではない。ただ、共同で気づきあう場、
「打ち合わせ」こそ、気づきを生み出す上で重要な場なのだ。
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→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087860140/tachiyomi-22
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■■選書コメント
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博報堂のメンバーによる、ユニークな発想法の本です。広告代理店
といえば、発想の達人集団です。そんな達人たちが、どうやって、
日々、斬新なアイデアや着想を得ているのかを学びます。
本書を読んで、プロは違うと思いました。集団の英知を活用して、
気づきや着想を得られる仕組みが、日常的な「打ち合わせ」として、
職場に定着しているのです。
発想法というと、普通はフレームワークを学んだり、環境を整えた
りなど、一人の頭を駆使するものが大半です。それに対し、本書は、
複数の人間の脳を動員し、共同脳として発想する手法を教えます。
もちろん、漫然と打ち合わせをしているだけでは、せっかくの気づ
きも逃してしまいます。正しい方法でのアプローチが必要です。そ
れを解説してくれる解説書が本書です。
なお、本書は構成も工夫されています。前半は、背景やメカニズム、
考え方の解説、中盤は、事例として、疑似打ち合わせを紹介し、そ
れを中継する形で、解説してくれます。
もちろん、自分の打ち合わせは、事例の通りにはいかないと思いま
すが、本書の内容を理解する上で、この事例は便利です。
後半は、道具箱と称し、実際に使用する言葉や、姿勢を紹介します。
また、気付きを得るモデルを一枚の図解、マンダラとして表現して
くれています。手元に置いておくと便利です。
このように、本書は、考え方、事例、具体的な手法の紹介という風
に、ビジネス書が必要とする要素をすべて整えています。すぐに、
明日の仕事に活かせる、理想的な本だと思います。
企画や商品開発など発想に従事する人はもちろん、発想力を鍛えた
いという人、職場で連日行われる打ち合わせを、もう少し実りのあ
るものにしたいと考える人にお勧めします。
★本書の詳細、お買い求めは、
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087860140/tachiyomi-22
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2012
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