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2013/04/19
ノマドと社畜
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本当は怖い「ノマド」
日本では、2011年後半あたりから「ノマドワーキング」や「フリーエージェント」という言葉が、ネットやメディアで話題に上ることが増えてきた。どちらも、朝9時から夕方5時までオフィスで働くのではなく、ネットを駆使して、物理的空間や時間を気にせず、他者の管理を受けることなく、本人の裁量で「自由に働く」という意味がある...
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■今週の選書
■(金曜特別版)ノマドと社畜(谷本真由美)
■朝日出版社
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★本書の詳細、お買い求めは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4255007055/tachiyomi
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■■選書サマリー
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本当は怖い「ノマド」
【1】
日本では、2011年後半あたりから「ノマドワーキング」や「フリー
エージェント」という言葉が、ネットやメディアで話題に上ること
が増えてきた。
どちらも、朝9時から夕方5時までオフィスで働くのではなく、ネ
ットを駆使して、物理的空間や時間を気にせず、他者の管理を受け
ることなく、本人の裁量で「自由に働く」という意味がある。
日本のマスコミで取り上げられる「ノマドワーキング」では、アフ
ィリエイトや文筆業、ウェブデザイナーなどが目立つ。これらは、
一見、魅力的な働き方に思える。
しかし、実はノマドは大変厳しい世界だ。日本の若者は、その本質
と恐ろしさを十分に理解しないまま「出勤しなくていい」「なんだ
か最先端」など、うわべの格好よさだけにひかれ、乗せられている。
そして、ノマドに関するセミナーでは「脱サラして社畜を脱出しま
しょう」などと、ノマドを勧めながら、自社が販売する「ノマド用
のデジタル機器」や高価なノマドマニュアルを買わせたりしている。
つまり、ノマドブームはある意味、「デジタルな香りのする、新手
の貧困ビジネス」になりつつあるのだ。
【2】
一方、ノマドが日本よりも盛んなイギリスや大陸欧州には「ノマド
になるためのノウハウを売る」サービスはない。セミナーはあるが、
税務セミナーなどが主流だ。
ほかに、商品開発の方法、マーケティングなど、実際に役立つ「戦
術」を教える内容だ。その内容は、極めて実務に沿った、大変地味
なもので、あいまいな「夢」や「概念」を売るようなものはない。
講師は、長年自営業をやっている人や大学の先生、会計士、税理士
などだ。彼らが、起業や、その実務について体系的に教えているの
が、イギリスや大陸欧州のセミナーなのだ。
【3】
私が、ネットを見ていて気づいたのは、ネットで質問ばかりして、
自分は何も貢献しない「クレクレ詐欺君」と「ノマドになりたい」
という若い人の間には、共通点があるということだ。
それは、どちらも主体性がないということだ。「クレクレ詐欺君」
は、自分だけ得することを期待し「ノマド君」は自分で技能を磨か
ず、営業もせず「仕事は天から降ってくる」と思い込んでいる。
簡単にいえば「自分勝手でずるい人たち」だ。こういう人たちは、
自分勝手だから、ノマドになっても締め切りは守らないし、お客さ
んの要望をくみ取らない。結局、早々に仕事を干されるはずだ。
【4】
日本で、ノマドワーカーについて書籍やブログ、テレビ、講演会な
どで語る有名人を見て、気になることがある。
それは、彼らの多くが、出版や放送などマスメディア業界で仕事を
している人、もしくは人材や経営などのコンサルティング業界の人
だということだ。
この人たちが語る内容の多くは、メディア業界で仕事をするノマド
ワーカーのことだ。たとえば、ライターやデザイナー、コンサルタ
ント、事業プランナー、広報の専門家などが彼らの仕事だ。
しかし、こうした業界は、日本の産業全体の規模で考えると、実は
少数派だ。日本の産業分類別事業所数をみると、広告業は全体の
0.5%、映像・音声・文字情報制作業は0.2%にすぎない。
つまり、一見ノマドに向いていそうな職業は、従事できる人の数が
少ないのだ。
一方、私の知る限り、医療や情報通信、製造業などの分野では、プ
ロジェクト管理や、税アドバイザーなどでノマドワーカーが活躍し
ている。
日本でノマドワークを語る人たちは、「メディア業界やコンサルテ
ィング業界だけが、ノマドで活躍する場ではない」ということを、
十分理解し、説明する必要があるのだ。
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■■選書コメント
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昨今、話題の「ノマドワーキング」や「フリーエージェント」です
が、その本当のところを、組織で働く「社畜」と対比しながら、教
えてくれます。
「ノマド」という言葉が独り歩きしています。若い人の中には、Mac
を持って、スタバにこもり、Facebookでつながっていれば、仕事が
転がり込んでくると誤解している人がいます。
本書は、そんな間違ったノマド象を一刀両断し、本当に役に立つ情
報を教えてくれます。著者谷本真由美さんは@May_Romaとして発言
を続ける自称ツイッター芸人で、ロンドンに在住されています。
働き方は、私の最大の関心事ですので、大いに興味を持って読みま
した。海外のノマドワーカーたちの実態が、たいへん参考になりま
す。特に、彼らの能力の高さに驚かされました。
一方、日本のノマド論は、海外の請け売りか、大人が若者を食い物
にする手段に過ぎないと、著者は厳しく糾弾しています。
もちろん、ノマド的な働き方を否定するわけではありません。能力
がある人には、可能性を秘めた新しい働き方として推奨し、その正
しい取り組み方も教えてくれます。
具体的な解決策も提示されています。たとえば「いつか会社を辞め
てノマドで働きたい人」は「英語を習得すべし」と、具体的な英語
習得法まで、解説してくれています。
今は、組織で働いている人も、漫然と過ごしていられません。かと
いって、上司や先輩はお手本になりません。自分で考えるしかない
のです。そのきっかけを、本書はくれると思います。
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2013
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