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2013/08/23
私がマッキンゼーを辞めた理由

私がマッキンゼーを辞めた理由

マッキンゼーから芸人に!?

私は、東京大学を卒業後、同大学の大学院に進み、2008年4月に、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に新卒の社員として、入社した。当時の私は、マジメで、レールから外れることを自分に許さない、典型的なプライドの高い東大生だった。そして、ほとんどの東大生がそうするように、一斉に就職活動を始め、一流企業を受けた...


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マッキンゼーから芸人に!?

【1】

私は、東京大学を卒業後、同大学の大学院に進み、2008年4月に、
マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に新卒の社員として、
入社した。

当時の私は、マジメで、レールから外れることを自分に許さない、
典型的なプライドの高い東大生だった。そして、ほとんどの東大生
がそうするように、一斉に就職活動を始め、一流企業を受けた。

そうして入ったマッキンゼーだが、09年8月に退職した。約1年4
カ月の会社員生活だった。現在、芸能プロダクションのワタナベエ
ンターテインメントに所属する、芸歴3年目のお笑い芸人だ。

傍から見れば"エリート街道"を驀進していたかもしれない私が、
なぜ、マッキンゼーを辞めたのか。また、辞めることができたのか。

【2】

「マッキンゼーを辞めてお笑い芸人になる」という、嘘のような、
人生最大の勇気を要した決断は、実はマッキンゼーで教わった問題
解決スキルなくしてはできなかったものだ。

コンサルタントの仕事では、まず「イシュー」と呼ばれる"解決す
べき問題"を特定し、その問題に対する解決策の「仮設」を先に立
てる。

そして、その仮説が正しいか、さまざまな情報をもとに検証する。
仮説が間違っていると分かれば、すぐに書き換える。そんな強烈な
「仮説思考」のもとに進められる。

この時、仮説を検証するための情報集めも、分析も、早くて速い。
仮説が間違っていると分かった瞬間、それまでそれなりに注いだ労
力を惜しむこともなく、バッサリと捨てるのも早い。

限られた時間でより精度のいい解に近づかなければいけないのだか
ら、このサイクルをできるだけ速く回すことが求められる。結果的
にすべての行動がスピーディーにならざるを得ない。

このような環境で仕事をするうちに、もともとやるべきことをダラ
ダラと先送りにしがちだった私にも「即断、即決、即行動」のマイ
ンドセットが植えつけられていった。

【3】

「お笑い芸人になる」という最後の一押しをしてくれたのは、他で
もない、この「即断・即決・即行動」というマインドセットだった。

私が、最も強くマッキンゼーで学んだこの仮説思考と行動ルールを、
お笑い芸人に舵を切るにあたって、まさに"ビジネスに限らず"自
分自身の人生に応用したのだ。

「どうしたら人生後悔しないか?」と自問し「お笑い芸人になる」
という強烈な仮説が生まれた以上、仮説を検証するべく即行動する
しかなかったのだ。

この仮説思考のいいところは、「仮説が間違っていた」と分かれば、
即、書き換えればいいことだ。私の場合なら「芸人になるのは違っ
た」と分かれば、すぐに他の生き方を探せばいいだけのことだ。

それに気づくと挑戦への気持ちが楽になり、また挑戦しない理由が
見当たらなくなった。これこそが、私がマッキンゼーで教わった、
人生を切り開く決断力なのだ。

【4】

使い古された言い回しだが、自分の人生は1度きりだ。「やりたい
ことをやればよかったな」「もっと冒険したかったな」そんなふう
に後悔しながら死ぬのはイヤだと痛烈に感じた。

だから、私は決断したのだ。それ以来、周囲からは散々「もったい
ない」と言われてきた。しかし「もったいない」の定義は、人それ
ぞれだ。

私にとって、本当にもったいないのは、お金やステータスを手放す
ことでなく、やりたいことに挑戦せず、1度しかない人生を終えて
しまうことだった。

たとえそれが、他人から言わせれば、にわかに信じがたいようなこ
とであってもだ。本当にやりたいことのためには、他人の目なんか
気にしている場合ではない。気にしていたら、何もできないのだ。
 
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■■選書コメント
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東大・同大学院を修了し、マッキンゼーに入社、そんなエリート街
道まっしぐらのキャリアを捨て、お笑い芸人に転身したユニークな
著者に、生き方、考え方、そして決断の手法を学びます。

著者は、マッキンゼーで学んだ問題解決のスキルを自分の生き方に
当てはめてみたところ「お笑い芸人になる」という仮説にいたり、
それを検証するために自ら行動したそうです。

というと簡単なようですが、実際は孤独で、勇気と精神力を要する
七転八倒のプロセスだったようです。本書ではそのあたりも赤裸々
らに語っていて、体当たり系の自己啓発書になっています。

個人の奮闘記は、これまであまり扱いませんでした。たいていは、
すでに成功した人の美化された武勇伝で鼻につくからです。何より、
結末がわかっているだけに、ワクワクしないからです。

しかし、今回は、著者が今も奮闘中ということで参考になります。
同じように奮闘中のビジネスパーソンにも共感でき、特に決断につ
いては、指針になる所が多いと思います。

たとえば「即断、即決、即行動」「バリューを出す」「決断とは捨
てること」「自分は何ものでもないことを知る」などは、私も勇気
づけられ、参考になりました。

著者も言う通り、人生は一度きりです。他人の都合にあわせたり、
世間体を気にしたりして、やりたいことから目をそむけるのは、バ
カげています。

日々「やりたいことができていない」とボヤいても何も変わりませ
ん。小さくてもいいから行動することです。そんな小さな一歩を踏
み出すことを、本書はきっと後押ししてくれるはずです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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