2014/08/29
自分でつくるセーフティネット 生存戦略としてのIT入門
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失われつつあるセーフティネット
昭和の時代は「きずな」や「団結」があった。「黙々とやっていれば、きっと誰かが気づいてくれる」「見てくれている人は見ている」という価値観があった。この時代の会社には「理」と「情」の二つの世界が、裏表の二重底になっていて、うまく動いていた。理論的には正しくても、感情が反発してしまう時、上司の情けで救われたりしたのだ...
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■今週の選書
■自分でつくるセーフティネット 生存戦略としてのIT入門
■佐々木俊尚
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■■選書サマリー
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失われつつあるセーフティネット
【1】
昭和の時代は「きずな」や「団結」があった。「黙々とやっていれ
ば、きっと誰かが気づいてくれる」「見てくれている人は見ている」
という価値観があった。
この時代の会社には「理」と「情」の二つの世界が、裏表の二重底
になっていて、うまく動いていた。理論的には正しくても、感情が
反発してしまう時、上司の情けで救われたりしたのだ。
たとえば、仕事の失敗で、誰かが責任を取らなければならなくなっ
て、自分がその責任を取らされることになったとする。その時、
上司が「俺はわかっているから」と言ってくれれば納得できた。
ところが、最近、そんな「情の世界」乏しくなっている。終身雇用
が崩壊し、若い人が非正規雇用に追いやられたことで、こうした「情
の維持」ができにくくなってきているのだ。
一方、グローバリゼーションという極めつきの超強烈な「理の世界」
が、日本に押し寄せている。日本企業は、防戦一方だ。中には、敗
退するところも出てきた。
その結果、私たちのセーフティネットが危なくなっている。今こそ、
新しい「情の世界」を興し、それをグローバリゼーションという「理
の世界」と組み合わせ「理」と「情」の二重底を再構築するべきだ。
【2】
二十一世紀になって、変わったことが二つある。ひとつは、セーフ
ティネットが見えにくくなったということだ。かつては「会社」と
いう枠組みが堅く、そこにさえ収まっていれば、誰もが安心できた。
ところが、今では「会社が傾いた」「リストラされた」という話を
よく聞くようになった。安定を望んでも、定職に就けない、結婚で
きないという若者が増えてきた。
その結果、自分のセーフティネットは大丈夫か。ほころんだり、破
れたりしてないか、もしかしたら、そんなセーフティネットなど、
最初からなかったのではないか、と考えざるを得なくなっている。
【3】
二つ目は、情報技術が発達したことで、私たちの人生は隠しごとが
しにくくなった。何でも見られてしまう「総透明社会」になってき
たのだ。
フェイスブックのようなSNSでは、レストランや旅行自慢をして
いる人が多い。だが、本来はそういう場所ではない。本当の意味は、
ふたつある。
まず人間関係を維持していく道具だ。遠くにいる人と人間関係を維
持していくことは難しい。しかし、フェイスブックを使えば、互い
の生活ぶりが分かるし「いいね!」を押せば、意思疎通もできる。
また、自分という人間の信頼を保証してくれる道具だ。かつては、
会社の名刺が信頼度の物差しだった。しかし、今はいつリストラ
されるかわからないし、会社が潰れることもある。
そんな名刺の代わりになったのが、ファイスブックだ。そこには、
プロフィールが書き込める。さらに、長く使うほど、毎日の日記や
コメントや写真、友人関係が溜まってくる。
そこには、人間性や性格が現れる。そういう過去の蓄積が、その人
の人間性を物語る雄弁な証拠になってくれるのだ。
【4】
総透明社会では、悪意に満ちた発言は、自分の評価を下げる。たと
えば、上司のツイッターに、誰かの悪口が延々と言い続けられてい
たら、それだけでこの上司の見方は変わってしまうはずだ。
一方、善意も丸見えになる。たとえば、山崎製パンのドライバーが、
雪で立ち往生していた人たちに、荷台のパンをふるまったことが、
ツイッターで紹介されて、美談として話題になった。
雪で孤立している場所でのできごとだし、以前なら新聞やテレビは
気づかなかったはずだ。スマホが普及していてツイッターやフェイ
スブックがあったから、写真が拡散し、多くの人に届いたのだ。
総透明社会は、悪意も善意も丸見えだ。この社会は後戻りしない。
この社会に合わせて、私たちは人間関係や社会との付き合い方を考
え直さなければならないのだ。
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■■選書コメント
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ITジャーナリストの佐々木俊尚氏の新刊です。ソーシャルメディ
アの普及で、世の中はどんな風に変わるのか、その本質を描きます。
これから私たちは、どう考え、どう行動すべきかがわかります。
政府や会社が守ってくれる時代は終わりました。それどころか、地
域や家族さえ、当てにならなくなりました。そんな時代に、お金や
肩書きだけでは、セーフティネットになりません。
頼りになるのは、ネットを介した不特定多数との緩いつながりです。
それを、どんなふうに構築すればいいのか、ネット人格時代の生存
戦略を教えてくれます。
「ソーシャルの時代、コミュニティの時代、シェアの時代」の到来
が叫ばれていますが、具体的に何をすればいいのか、わかりかねて
いる人が大半ではないでしょうか。
ツイッターやフェイスブックは始めてみたものの、旅行や飲み会の
写真を載せて終わりというだけでは、楽しくても「これが未来に生
きてくる」と、なかなか確信を持てません。
本書は、そうしたツールが作り出す時代の本質をズバリ教えます。
ネットが、どうリアルと融合し、その結果、私たちの暮らしはどう
なるかさすがの考察です。
カギを握るのが、そこでつながる緩い人間関係です。すでに、こう
したつながりを介して、不特定多数から人や仕事を紹介されるなど、
助けられる機会が増えています。
将来に不安を感じる人はもちろん、新しい時代を読み解いて、自分
のキャリアやビジネスに生かしたいと考える前向きな人まで、すべ
てのビジネスパーソンにお勧めします。
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