2014/11/14
その損の9割は避けられる
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だから、その行動が損を呼ぶ!
人は、誰でも損をすることが嫌いだ。しかし「損をしたくない」という気持ちが、かえって大きな損を呼び込んでしまうことがある。しかも、その損に気づいていないことさえあるのだ。行動経済学の「プロスペクト理論」では、人は「得した喜び」より、「損した苦しみ」を2倍以上強烈に感じると言われている。だから、人は損失を回避することにとても敏感になる...
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■今週の選書
■その損の9割は避けられる
■大江英樹
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■■選書サマリー
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だから、その行動が損を呼ぶ!
【1】
人は、誰でも損をすることが嫌いだ。しかし「損をしたくない」と
いう気持ちが、かえって大きな損を呼び込んでしまうことがある。
しかも、その損に気づいていないことさえあるのだ。
行動経済学の「プロスペクト理論」では、人は「得した喜び」より、
「損した苦しみ」を2倍以上強烈に感じると言われている。だから、
人は損失を回避することにとても敏感になる。
具体的に言うと、株を買って上がったら「さらに儲かる」という期
待以上に「下がって損をする」という不安感のほうが大きくなる。
だから、わずかな利益でも売却してしまいがちなのだ。
ところが、株が下がると、今度は絶対損をしたくないという気持ち
になる。だから、売るタイミングが先延ばしになり、結果として損
が拡大してしまうのだ。
このように「損はしたくない」という心が、かえって大きな損を生
み出してしまうというパラドクスがある。このような例は、他にも
いろいろとある。
【2】
1時間300円というショッピングモールの駐車場に車を停め、買い
物をして勘定をしたら「あと500円買えば、駐車代が無料になる」
と知り、追加で買い物をしたことはないだろうか。
よく考えると不思議だ。本来なら、300円の駐車料金を払ったら、
終わりのはずだ。それなのに、駐車料金を無料にするために500円
余分な買い物をする。つまり200円も余計に使っているのだ。
たしかに、品物は残るが、その品物は「あと500円で駐車代無料」
と知るまでは、必要ではなかったものだ。買っても買わなくてもよ
かったのだ。これが「得をしたい」ために「損をする」例だ。
私たちの心は「無料」という言葉を聞くと、ある種のスイッチが入
ってしまう傾向がある。「値段ゼロ」というのは、単なる価格でな
く、不合理な興奮を生み出す感情のホットボタンなのだ。
【3】
観に行った映画が、実はあまり面白くなかった。それでも、最後ま
で席を立たない。そんな経験があるはずだ。お金は支払い済みだか
ら、ずっといようが、出て行こうが、支出は同じはずだ。
であれば、外に出て他の面白いことをしたほうが有意義だ。このよ
うに、すでに払ってしまっていて、戻ってくる可能性のないお金の
ことを、経済学では「サンクコスト」という。
やっかいなことに、人は、このサンクコストにとても強いこだわり
を持っている。なぜなら、「損をしたくない」という気持ちが強い
からだ。
つまらない映画の例でいえば、すでに損をしてしまっている。さら
に無駄な時間を使い続ければ、損を重ねることになる。だが「元を
とりたい」という気持ちが強すぎて、映画館に居続けてしまうのだ。
他にも、高い教材を買ったために無理な語学の勉強を続けてしまう
など、人は損を嫌うあまり、かえって損を拡大してしまうのだ。こ
のように不思議な心理現象は、あらゆるところで見られるのだ。
【4】
医療保険のCMで「高まるリスクに備える保険」と言うが、これは
論理矛盾だ。保険は滅多に起こらないことが、起きてしまった人に、
お金を出し合って、不幸な目に遭った人にお金を回すしくみだ。
もし、頻繁に起こることなら、保険は成立しなくなる。つまり、高
まるリスクには、保険は向いていないのだ。確かに年齢が高くなる
と、病気のリスクは高まる。
しかし、仮に100歳以上の人しか入れない生命保険があったとした
ら、おそらく保険料は保険金と同じくらいになるはずだ。なぜなら、
死亡確率は非常に高いからだ。
公的医療保険制度や高額療養費制度があるので、仮に月100万円以
上の治療費がかかっても大部分は戻る。だから、高まるリスクに備
えるには、保険よりも貯金のほうが合理的なのだ。
それでも、みんな保険に入る。それは「貯金は自分のお金、保険は
保険会社が払うお金」という感覚があるからだ。「自分のお金を出
したくない」という気持ちが、結局、損を大きくしているのだ。
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■■選書コメント
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ビジネスや日常生活で、正しい判断と選択をするために「心の仕組
み」を学びます。行動経済学をベースに、時に経済学や心理学の用
語も交えながら、わかりやすく教えてくれます。
人は「得した喜び」よりも「損した苦しみ」を2倍以上強く感じる
そうです。だから「損を避けたい」と思うあまり、かえって損をし
てしまいがちです。
これを避けるには、人間の心理のメカニズムを知っておくことです。
本書は、そんな誰もが遭遇するケースをさまざまに紹介し、それが
どんな理屈でそうなるのかを行動経済学の視点から解説します。
著者は、年金や資金運用のコンサルタントです。長年、相談に乗る
中で人間の損得感情の危うさを痛感、その解決に行動経済学の研究
成果を生かしてきたそうです。
内容は、専門用語も出てくるものの、全般的にコラム形式で読みや
すいです。買い物から、資産運用、人事評価の現場など、日常的な
シーン別に、約50のケースを紹介し、解説していきます。
紹介される事例もユニークです。「ビュッフェで元をとるには」「成
功率95%の手術と20回に1回失敗する手術のどちらが安全か」など、
損をしない答えをケーススタディ形式で教えます。
売り手は、人間の心理を調べつくしています。賢い判断をするには、
こちらも理論武装が必要です。その時、頼りになるのが行動経済学
なのです。
マーケティングの担当者はもちろん、行動経済学に興味のある方、
いつもうまい話に乗せられている気がする人も、興味深く読めるこ
と請け合いです。
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2014
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