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2021/10/01
観察力の鍛え方

観察力の鍛え方

観察力とは何か?
 
良いクリエイターの条件は観察力だ。人生は長い。インプットの質が長ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。インプットの質を高めるものが観察力なのだ。良い観察では、物事に仮説を持つ。客観的に観て、状態とのズレに気づき、仮説を更新する。悪い観察では、仮説と物事の状態に差がないと感じ、わかった状態になる。その結果、仮説の更新が止まる...


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■今週の選書
■観察力の鍛え方
■佐渡島庸平
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観察力とは何か?
 
【1】
 
良いクリエイターの条件は観察力だ。人生は長い。インプットの質
が長ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。インプットの
質を高めるものが観察力なのだ。
 
良い観察では、物事に仮説を持つ。客観的に観て、状態とのズレに
気づき、仮説を更新する。悪い観察では、仮説と物事の状態に差が
ないと感じ、わかった状態になる。その結果、仮説の更新が止まる。
 
観察は、問いと仮説の無限ループを生み出す。そのループが楽しい
から創作の源になるのだ。自分で見つけてしまった問いとセットだ
から、解きたくなる。これがモチベーションになるのだ。
 
【2】
 
観察を阻み、観察できない状態になってしまうのは、観察を阻む、
3つの要因があるからだ。この3つを避けることで、悪い観察に陥
ることがなくなる。
 
まず自分だ。観察を阻む原因は、たいてい自分にある。人は目でな
く、脳で観察している。脳内で何を見ようか先に決めて、脳が見た
いものを追認するような形で物を見ているのだ。
 
認知が先にあり、その後に観察があるのだ。つまり認知に関しては、
無意識的な行為なのだ。制御できない。その無意識的な認知を少し
でも把握するのが「仮説」なのだ。
 
仮説を言語化し、意識すれば、無意識的な認知も少しは意識できる
はずだ。観察を阻むものを理解すれば、仮説を歪めるものを理解す
ることにも通じるはずだ。
 
既存の認知が、観察を阻害する。悪い観察は、既存の認知が更新さ
れていない、既に知っていることを前提に観ている状態だ。これに
対し良い観察は、既存の認知に揺さぶりをかける行為なのだ。
 
【3】
 
観察を阻むものの2つ目は、身体・感情だ。観察は、自分自身の身
体・五感を通じて行われる。そのため、その状態によって質が大き
く左右されるのだ。
 
観察する対象は、絶対的なものではない。観察する主体の状態次第
で大きく変わるのだ。たとえば、疲労を抱えた体と体調万全の体で
は、同じものを見ても観察の質は変わってくる。
 
感情は、反応時間を短縮するために使われるものだ。思考をすっ飛
ばすツールなのだ。嫌なことを言われた時、ロジックを立てて怒る
かどうか決めことはない。すぐに判断し、反応する必要がある。
 
感情が観察を阻害することがある。そんな時は、思考を一回止める
べきだ。そして複数の感情を持ち、対象を見るクセをつけるように
するのだ。
 
複数の感情があるように、観察も感情によって見るべきポイントが
変わってくるのだ。このことを知っていれば、感情を利用して、対
象を見ることができるようになるはずだ。
 
【4】
 
観察を阻むものの3つ目は脳だ。人間の脳には、何かに注目すると
そこに「ロックオン」する特徴がある。注意をある一点に固定化し
てしまうのだ。だから、時間と空間を同時に注目できないのだ。
 
対象物だけを観察して、周りとの空間的な関係性や時間軸の前後を
意識せずに判断すると観察を誤る。時間・空間のコンテクストを同
時に観察することで、対象に迫ることができるのだ。
 
観察を阻害する時、3つの要因、すなわち「認知バイアス=脳」「身
体と感情=感覚器官」「コンテクスト=時空間」がバグを起こしや
すい。このことを意識するだけで、観察の精度は変わってくる。
 
この3つを総称して「メガネ」と呼ぶ。人は、メガネをかけて世界
を見ているのだ。多くの人は「自分はメガネなどかけていない」と思
い込んでいるが、メガネは絶対に外せない。
 
だから自分のメガネはどんなものかを理解し、それを利用すべきだ。
メガネを理解することが、観察を促進するのだ。短所が長所になる
ように、メガネも武器になるのだ。
 
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■■選書コメント
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見る力、「観察力」を考えます。クリエイティビティを高める上で
不可欠であり、最も重要なものです。注目すべき力が、観察
力です。
 
多くの人たちの感情を動かす作品も、大衆に愛される商品も、すべ
ては観察力から生まれます。でもその正体はよくわかりません。セ
ンスや直感・感性とされ、磨き方もわかりません。それを考えます。
 
著者は「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」「マチネの終わりに」を仕掛け、
新人マンガ家の育成に携わる方です。そんな著者が、ビジネス・ク
リエイティブで最重要な思考を語ります。
 
クリエイターを発掘、育成し、数々のメガヒットをプロデュースし
てきた著者が考えるクリエイターの条件は、観察力だそうです。ア
ウトプットの質は、インプットの質で決まるからです。
 
そんな、クリエイティブの核となる観察力の正体を考え、その鍛え
方を探求します。著者自身、観察力についてはぼんやりとしか理解
しておらず、2年ほど前からを考え始めたそうです。
 
なお、本書は観察力について体系的にまとめられたものではありま
せん。著者が良い創作のために思索したことを綴っています。体系
的、学術的に学びたい人には物足りないかも知れません。
 
それでも、日々超一流のクリエイターたちと思索を巡らせる著者が
考える観察力ですから、多くのヒントが詰まっています。また、本
文にはマンガがたくさん引用されていますので、楽しく読めます。
 
あらゆる仕事にクリエイティビティは求められます。そう考えると、
漫画家や小説家など、いわゆるクリエイティブな仕事を目指する人
はもちろん、すべてのビジネスパーソンにおすすめします。
 
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2021
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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