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2022/12/16
「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方
情緒に流されない力と地図を読み換える力
物事は正しく判断するべきだ。直感としては正しい、感覚的には間違っていると思える、だが根拠はないからとりあえず反対意見を言う、相手を攻める、叩く、批判するという人が増えている。本当の頭のよさがあれば、誰かの言葉を鵜呑みにすることなく、なんとなく雰囲気に流されるのでもなく、自分の考えに基づいて「これは正しい」「これは間違っている」などの判断ができるはずだ...
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■今週の選書
■「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方
■茂木健一郎
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■■選書サマリー
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情緒に流されない力と地図を読み換える力
【1】
物事は正しく判断するべきだ。直感としては正しい、感覚的には間
違っていると思える、だが根拠はないからとりあえず反対意見を言
う、相手を攻める、叩く、批判するという人が増えている。
本当の頭のよさがあれば、誰かの言葉を鵜呑みにすることなく、な
んとなく雰囲気に流されるのでもなく、自分の考えに基づいて「こ
れは正しい」「これは間違っている」などの判断ができるはずだ。
それは単に論理的ということではない。いわば直感に従いながら、
論理的でもある、直感と論理の両面から正しい答えを導き出せる
ということだ。
【2】
「本当に頭がいい人」が持っている力は4つある。すなわち「情緒
に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマルスピリッツ」
「妄想する力」の4つの力だ。
1つ目の力「情緒に流されない力」を鍛えることは、正解のない社
会で生きていく強い力だ。情緒に流されない、つまりロジックの
力、論理的思考力だ。
論理的思考力に関わるのは脳の前頭前野だ。これは活力やコミュニ
ケーション力に関わる部位だ。鍛えるには「笑う」「叱られる」
「会話する」などの刺激が必要だ。想像するだけでも訓練になる。
論理的思考力が高い人、すなわち前頭前野が発達している人は、情
緒に流されず「自分が欲しいもの」でなく「相手が望むこと」を見
抜き、相手の望みに沿って振る舞える。主語を相手に置けるのだ。
この能力は、日々の習慣で身につけるしかない。「私がしたいこと
は」と考えている自分に気づいたら「いやいや相手が望むことはな
んだろう」と機械的に、主語を「私」から「相手」に切り替える。
【3】
2つ目の力は「地図を読み換える力」だ。ここで必要になるツール
が「コンパス」だ。「地図よりコンパスが大事」なのだ。これは
「仮説力」と言い換えることができる。
不確実な現代社会を生き抜くには仮説の精度が問われる。緻密な仮
説を立てれば、それが荒海をゆくコンパスになる。結果として地図
を書き換えることもできる。
精度の高いコンパス、すなわち緻密な仮説を立て、地図を書き換え
るには情報が必要だ。ただ、それだけでは仮説は立てられない。情
報を組み立てて仮説を立てるには、抽象化する能力が必要だ。
何かを分析することになり、データを集めたものの「分析」を間違
えたということがある。理由を掘り下げていくと、データを抽象化
する力が足りなかったという場合が多いのだ。
仮説の精度を高めるには、情報をたくさん手に入れることに加え
て、抽象化の能力を鍛えることが重要だ。そして、抽象化のトレー
ニングには、目で見て選ぶという訓練が有効だ。
【4】
仮説を立てるには「帰納法」と「演繹法」がある。帰納法とは、た
くさんの事象から共通点を導き出す思考法だ。一方、演繹法は足し
合わせる、関連づけるなどで仮説を立てる方法だ。
帰納法と演繹法、どちらで仮説を立てるにしても、仮説の精度を高
めるには、まず情報をたくさん集めて、その中から取捨選択をする
というステップは変わらない。
情報量を増やしたり、情報を選んだりするためのトレーニングとし
て、最も手間いらずで、道具も不要で、効果が高いのは「ストーリ
ーを作ってみる」ことだ。
また、仮説を立てるには、トライ&エラーも必要だ。そして、仮説
を立てた後は、実行力と検証力が大切だ。知識をベースに現実に近
い想像を巡らせるのだ。
失敗しない範囲で実行したり、失敗しても失敗ではなかったことに
してしまう無修正主義ではだめだ。失敗こそしなくても、チャレン
ジしたり、失敗を乗り越えて前に進む気概も生まれないのだ
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■■選書コメント
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脳の鍛え方です。これからの時代は、単に勉強ができるだけでは通
用しません。どんな環境下でも生き抜くことができる「本当の頭の
よさ」が求められます。これについて異論はないと思います。
ただ、その「本当の頭の良さ」が何なのかはよくわかりません。本
書は、脳科学者である著者が、それを4つの力に因数分解し、どう
磨くかまで教えてくれます。
面白いのは、頭の良さをアップデートする思考実験として「モギシ
ケン」を掲載している点です。読んで実践すれば、本当の意味で賢
くなれると思います。
過去の常識や前例が通常しない時代です。そもそも正解がないので
すから、正解に早くたどり着く能力を身につけただけでは乗り切れ
ません。むしろ自分で設問できる頭脳が求められます。
そのためには何が必要か答えを明示した点が画期的です。類書はあ
りますが、多くが個人的経験則の域を出ないものばかりです。その
点、本書は脳科学者の科学的根拠にもとづいています。
たとえば「4つの力を手にすれば、脳の前頭前野、前頭葉、ドーパ
ミンニューロンが活性化する。だから頭が良くなる」という具合で
す。説得力があります。
4つとは、具体的には「情緒に流されない力」「地図を読みかえる
力」「アニマルスピリッツ」「妄想する力」ですが、いずれも日本
の学校教育では育まれないと言います。
事実、高スペックな人でも愚かな人はいますし、学歴などなくても、
賢く生き抜く人もいます。生きるために本当に必要な脳力が何かを
知りたい、高めたい、鍛えたいと考える人におすすめします。
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