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2024/10/25
投資依存症
投資依存症
「貯蓄から投資へ」という旗振りのもと、多くの国民が投資に夢中になっている。それは、投資依存症という一種の依存症だ。一度罹患してしまうと治療は極めて困難だ。ギャンブルで負けると、負けた分を取り戻そうとして、またのめりこんでしまう。やがて手持ちの資金が底をつきパンクする。これがお決まりのパターンだ...
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■今週の選書
■投資依存症
■森永卓郎
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■■選書サマリー
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投資依存症
【1】
「貯蓄から投資へ」という旗振りのもと、多くの国民が投資に夢中
になっている。それは、投資依存症という一種の依存症だ。一度罹
患してしまうと治療は極めて困難だ。
ギャンブルで負けると、負けた分を取り戻そうとして、またのめり
こんでしまう。やがて手持ちの資金が底をつきパンクする。これが
お決まりのパターンだ。
この依存症に罹患してしまうと、投資がいかに危険かを力説しても
聞く耳を持たれない。やがて日本中に依存症が広がって、その後に
バブルが崩壊すれば、破産者が溢れてしまう。
【2】
人間が感じる快感には、安楽と快楽の2つがある。安楽は何もかも
が満たされた快適な状態だ。その安楽よりはるかに強い快感をもた
らすのが快楽だ。
心理学に「ソルテット・ナッツ・シンドローム」という言葉がある。
塩をまぶしたナッツを食べていると、ほど良いところで止められず、
最後の1つまで食べてしまう。それが快楽だからだ。
ギャンブルも快楽だから依存症になる。これは特殊な人間だけが陥
る病気ではない。今、金融市場に参加している多くの人が、すでに
投資依存症というギャンブル依存症になっている。
依存症の人は、金が欲しくてやっているわけではない。スリルが忘
れられないのだ。そんな依存症にかかる人が増えている。新NISA
をきっかけに投資を始めた人もそうなる可能性がある。
【3】
ゼロ金利解除をきっかけに日銀は金融引き締めをはじめている。こ
れは、理論的にはやがて株価の下落と円高をもたらす。中長期的に
は、必ずそうなるはずだ。
ところが、快楽に溺れた依存症の人たちは、そうした変化を意に介
さない。だから、株価はさらに上がり、為替もさらに円安に向かう。
だが、順風は無限には続かない。
問題は、相場が値下がりトレンドに転じた時だ。冷静に判断できる
人なら、そこで損切りして手じまいできる。だが、依存症に陥った
人は損失を取り戻そうとさらに資金をつぎ込んでしまう。
すると、資産の一部だけで安全に運用してきた人も、やがて全財産
を継ぎ込んでしまう。その結果、破産者になってしまう。これは過
去のバブル崩壊で繰り返されてきた事態だ。
本当の危機は、下げ相場に転じた時に起きる。ババを引くのは、依
存症の人たちだ。余計なことをしなければ安らかな老後が待ってい
たのに、快楽を覚えたばかりに破滅の道を歩んでしまうのだ
【4】
残念ながら、投資依存症には治療法がない。唯一の救出方法は、投
資を完全に断つことしかない。あとは依存症でひどい目にあった人
と丁寧なコミュニケーションを続けることだ。
本来、それが金融教育のはずだ。ところが、政府もマスコミも金融
会社も「預金から投資へ」という掛け声のもと、逆に投資を煽って
いる。
「投資とギャンブルは違う」という人も多い。そういう人は、ギャ
ンブルはゼロサムゲームで、勝つ人がいればその分負ける人がいて、
全体のパイが増える事は無いという。
一方、投資はプラスサムゲームで、パイそのものが増えていく。だ
から短期的なアップダウンはあっても、長期的には必ず上がるとい
うのが言い分だ。実際ニューヨークダウも日経平均も上がってきた。
だが、お金が自動的に増えることなどありえない。そう考えれば、
投資も競馬や競輪と同じゼロサムゲームだ。つまり、投資もギャン
ブルなのだ。
老後資金をギャンブルで増やそうというる人はいないはずだ。だが、
投資で老後資金をまかなおうとしている人は多い。そういう人は、
老後資金を競馬や競輪に投じているのと同じなのだ。
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■■選書コメント
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お金の本です。投資の仕組み、特にバブルの歴史やメカニズムがわ
かります。インフレが続く中、預金の価値は目減りする一方です。
それでなくても、老後のお金が心配です。
そんな中、政府の「貯蓄から投資へ」の旗振りのもと、新NISAを
はじめました。メディアも報道し、投資に無縁だった人も参入して
います。それは、老後資金を賭けたギャンブルだと著者は言います。
今後、バブルが崩壊すれば、日本中に破産者が溢れると警鐘を鳴ら
します。なぜそうなるのか、どうすればそれを回避できるのか、そ
の方法を独自の視点から解説してくれます。
著者は、今の日本は投資依存症のパンデミック前夜だと言っていま
す。もちろん、投資とギャンブルは違うと考える人が大半です。私
もその一人です。
でも、著者は、投資は一見プラスサムですが、お金が自動的に増え
ることなどなく、結局はゼロサムゲームだと言います。だから本質
的にはギャンブルと同じだと言います。
老後のために、なけなしの資産をNISAで運用している人は、競馬
や競輪に老後資金を賭けているのと同じだといいます。その理由を
本書でわかりやすく解説してくれます。
はじめに、投資がなぜギャンブルかを解説し、次いでバブル発生の
メカニズムを紹介、真犯人として、金融業者、政府とメディア、投
資家自身をあげて解説、最後に対処法まで紹介します。
読めば、バブルの歴史と仕組みがよくわかります。投資の危うさも
理解できるはずです。その結果、何も考えず、自動的にお金を投資
にまわしている自分が怖くなるかもしれません。
すでに投資をしている人、これから投資をはじめたい人はもちろん、
インフレに苦しむ人、老後に不安を感じている人など、お金に悩む
人、関心のあるすべての人に広くおすすめします。
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