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2025/02/21
キーエンス流 性弱説経営
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性弱説経営とは
顧客が教えてくれたニーズが、すべて新商品に採用できるとは限らない。たとえば、顧客の要望を聞いてタブレットPCの新商品を開発したとする。顧客の要望は「多少高くても良いから、小さいタブレットPCが欲しい」というものだったとする。これに対応するために、ひと回り小さい新商品を従来品より2000円高くして売り出した...
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■今週の選書
■キーエンス流 性弱説経営
■高杉 康成
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■■選書サマリー
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性弱説経営とは
【1】
顧客が教えてくれたニーズが、すべて新商品に採用できるとは限ら
ない。たとえば、顧客の要望を聞いてタブレットPCの新商品を開
発したとする。
顧客の要望は「多少高くても良いから、小さいタブレットPCが欲
しい」というものだったとする。これに対応するために、ひと回り
小さい新商品を従来品より2000円高くして売り出した。
ところが、この商品はまったく売れなかった。理由は、顧客ニーズ
の罠にはまったからだ。顧客は、商品に対して、自分が感じたこと
を話してくれる。そこから様々な要望、ニーズがわかる。
だが、顧客が話したことがすべて採用できるニーズとは限らない。
「顧客の要望通りに新商品を作れば売れる」という性善説的な考え
をしていると、この罠に引っかかる。
【2】
この場合、顧客のニーズは2つに分けて考えることができる。まず
「小さいサイズが欲しい」であり、もう一つは「価格が多少高くて
も良い」だ。問題は、これらの要望の根拠だ。
「小さいサイズが欲しい」というニーズについて詳しく聞いていく
と「色々持ち物が増えたので、小さいタブレットPCが欲しい」と
なる。ここまで掘り下げていけば、根拠がわかり、納得もできる。
次に2つ目の「価格は多少高くてもいい」についても詳しく聞くと
「本当は安い方がいいが、サイズが小さくなるなら価格は妥協しな
いといけないと思った」ということがわかった。
【3】
一見すると、どちらも「なるほど」と思えるが、価格については文
末に「思った」とあるのがポイントだ。サイズについては「持ち物
が増えた」という事実に基づいた要望だ。
ところが、価格に関する話には、具体的根拠がなく、意見に過ぎな
い。しかも内心「安いほうがいい」と思っている。本心と真逆のこ
とを話しているわけだ。そもそもニーズとして正しくないのだ。
そんな意見をニーズとして商品に反映してしまったから失敗したの
だ。コスパやタイパというように、今は効率性が求められる。仮に
小さくても、価格が上がればコスパがあわないとされるのだ。
【4】
このように、顧客の声を丁寧に分解・分析すればわかるのに、罠に
かかってしまうのは「顧客の要望通りに新商品を作れば売れる」と
いう前提に立っているからだ。
顧客の声は重要だが、言われた通りに作りさえすれば売れるわけで
はない。顧客ニーズという言葉を錦の御旗にして、要望通り商品を
作ったところ売れなかったという失敗談は星の数ほどあるのだ。
ここで「顧客の要望通りに作っても売れないかもしれない」という
前提を持っていれば「価格が高くてもいい」という顧客の思いを新
商品開発に反映させて失敗するケースはなくなるはずだ。
【5】
2つの違いは、前者が「性善説」に立っており、後者が「性弱説」
に立っている点だ。ビジネスの場において、当事者をどんな性質を
持つ人として捉えるかの違いだ。
「人は皆、本来善人であり、正しく聞けば正しく答えてくれる」
「やるべきことをきちんとできる」「物事の道理や常識をわかって
いる・実践できる」と捉えることh「性善説」だ。
一方「人は本来弱い生き物なので、難しいことや新しいことを積極
的には取り入れたがらない。目先の簡単な方法を選んでしまいがち
だ」という捉え方は「性弱説」だ。
先程の例では「顧客は自分の困りごとや感情を正確に把握して言葉
にすることは難しいかもしれない」「思いつきを何となく話してい
るだけかもしれない」という視点に立つものだ。
どちらの前提に立つかで、会社も個人も成果が大きく変わってく
る。大切なことは事実と根拠だ。「顧客の話には事実に基づかない
意見や感想も含まれている」と性弱説に立つことが大事なのだ。
★本書の詳細、お買い求めは、
→ https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296206419/tachiyomi-22
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■■コメント
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仕事術の本です。人を善悪ではなく、弱いものと捉える「性弱説」
という全く新しい考え方を説き、それを前提に仕組みや制度を整え
ていく方法を教えます。
著者は、超高収益企業キーエンスとそれ以外の会社の違いが、ここ
にあると言います。同社では、制度や仕組みがこの性弱説を起点し
ているそうです。
そんな「性弱説」という新しいキーワードを、どのようにビジネス
に生かしていけばいいのか、あらゆる側面から、とことん掘り下げ
て解説してくれます。
著者は、キーエンスの中枢である新商品・新規事業企画担当を長年
任されてきたそうです。退職後は、会社を指導しています。その中
で性弱説の重要性に気づいたそうです。
本書では、まず「性弱説」という聞き慣れない言葉を解説します。
その上で、超高収益企業キーエンスの制度や仕組みを詳しく紹介、
それらがいずれも性弱説に基づいていることを解説していきます。
後半は、性弱説視点を生かす具体的な方法をテーマごとに解説しま
す。すなわち、人を動かす、モノ・カネ・情報などの質を高める、
仕組みを動かす仕組みという具合です。
性弱説を取り入れることで、部下のやる気を引き出し、組織の成
果・効率を高めるなど、マネジメントや組織運営に大きな効果があ
ります。さらに、自分の働き方を改革することもできます。
現場で働く若手社員からチームを率いるマネジメントクラスの方、
さらには社員を束ねる経営者や幹部社員にいたるまで、あらゆる層
のビジメスパーソンに広くおすすめします。
★本書の詳細、お買い求めは、
→ https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296206419/tachiyomi-22
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