著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー
ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。
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2008/09/11
儲かる会社はこうして作れ! ‐ 木下晃伸さん
- 今回、ご登場いただくのは『儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」』の著者、木下晃伸氏です。強い会社、強いビジネスパーソンになるための方法について、お話いただきます。
木下晃伸(きのしたてるのぶ) さん
1976年、名古屋市生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て独立。株式会社きのしたてるのぶ事務所を設立、代表取締役就任。これまでファンドマネジャーおよびアナリストとして、訪問取材した上場企業は国内外あわせて1000社以上、詳しくリサーチした会社は数千社に及ぶ。現在はそれに加え、上場企業・未上場企業に対し、経営戦略、マーケティング、人材育成を中心に経営コンサルティングも行っている。
●現在のお仕事をお教えください。
木下:今年の2月末、ファンドマネジャーおよびアナリストとして勤めていた株式会社ファンドクリエーションを退職し、株式会社きのしたてるのぶ事務所を設立しました。現在は同社の代表取締役として、上場企業および未上場企業に対して、経営コンサルティングを行っています。
●株の世界に入ったきっかけをお教えください。
木下:初めて株に投資したのは、大学生のときです。当時、バイトをしていたコンビニの店長に勧められ、試しに60万投資してみたんですよ。そしたら、いきなり4連勝してしまい、60万が200万にもなってしまいました。もうバイトをするのが馬鹿らしくなりましたね。
ところが、その200万円が1ヶ月で60万円に減り、半年後にゼロになってしまったんです。そう、倒産企業に投資してしまったんですね。もうショックで、立ち直れませんでしたよ。
そんなとき、「株の世界には、プロがいる。彼らは、リスクを回避して、株で儲けている」ということを知ったんです。実際、自分がプロになってみて、そんな甘いものではないということが分かるんですが・・・(笑)。そこで、プロのノウハウを学びたいと思い、株の世界に入りました。
とはいえ、株はそんなに好きじゃないんですよ(笑)。世の中には株の天才と言われる人もいますが、私は間違えてしまうこともありますし(笑)。
●執筆活動を始めたきっかけをお教えください。
木下:顧客に株の運用情報を提供するのも、ファンドマネジャーおよびアナリストの仕事のひとつなんです。でも、セミナーを開いても、20人ぐらいしか来てくれないんですよ。1万人に話を聞いてもらおうと思ったら、セミナーを500回も開かないといけない計算になります。だから、効率よく、できるだけ多くの人に情報を提供するにはどうすればいいのか、考えていました
そんなとき、マネー雑誌を読んでいたら、誌面に「ご意見がある方は編集部まで」と書かれているのを目にしたんです。だったら、私の話を聞いてもらって、雑誌に取り上げてもらおうと思ったんです。
早速、編集部に電話したところ、編集長とお会いすることができました。そして、企画を提案したら、とんとん拍子で、雑誌に取り上げてもらえたんです。
また、紙媒体だけでなく、これからはネットでの情報発信も重要だということで、ブログやメルマガも始めました。
●本書は、これまで取材してきた会社を元にして、執筆されたんですよね。
木下:はい、そうです。ファンドマネジャーおよびアナリストは、企業を調べ、株式投資するか否かを判断しなくてはなりません。そのため、これまで、直接訪問して取材した会社は1000社、リサーチした会社は数千社にもなります。取材した会社は、トヨタ自動車、ソニー、任天堂、花王といった上場企業から、未上場企業までさまざまですね。
●木下さんのように、みなさん、直接企業を訪問して、調べているのでしょうか。
木下:いいえ、直接訪問することなく、投資する人も多いというのが実情です。それは、私のようなやり方は時間がかかって非効率だからです。ときには、何日も通い詰めて、話を聞くこともありますし。
でも、直接会社を訪問し、担当者から話を聞かないと、見えてこないものもあるんですよ。手間はかかりましたが、ひとつ一つ取材して得たものは、私の財産になっています。そして、これらの取材を通して得たものを、本書では紹介しています。
●本書の活用の仕方をお教えください。
木下:本書は、トヨタ自動車、ソニー、任天堂、花王といった企業を取り上げて、どうして成功することができたのかを紹介しています。そして、そこから「よき伝統がある」、「優れたビジネスモデルをもっている」、「人材の力をうまく引き出している」、「M&Aが巧みである」といった共通点などを見出し、説明しています。こうした成功事例は、強い会社、強いビジネスマンを目指すうえで、参考になるかと思います。とはいえ、ひとりひとり置かれている立場が違うので、そのまま応用するのは難しいかもしれません。参考になる部分があれば、ぜひ取り入れて、強い会社、強いビジネスパーソンを目指してほしいですね。
●本書で紹介されていた成功事例は、応用できそうですね。
木下:実は、本書を執筆するにあたって、「成功事例だけでなく、失敗事例も掲載してみてはどうか?」という話がありました。今回は本書の中にも成功に潜む失敗や失敗があったからこそ成功した事例も掲載しています。
●どういった方たちに本書を読んでもらいたいですか?
木下:会社が儲かる方法を知り、自分自身も儲けたい、という方に読んでほしいと思います。実際、活躍しているビジネスパーソンというのは、会社の儲けに貢献し、給与水準も高いはず。そうしたビジネスパーソンは、自社の戦略を知り、他社の戦略までも俯瞰している。そして、さらには他業態にまで興味を持っています。これは数千人のビジネスパーソンにお会いした中で強く感じた事でした。言い換えれば、経営者の視点でビジネスを見つめるということになるのではないか、と思うのです。
本書を読むことが、自分の会社やライバル会社、他業種のことを見つめ直すきっかけになればいいと思っています。
ちなみに、大学2年のときに、私は学習塾を起業しました。でも、なかなか新規客を獲得することができずにいました。あの頃の私に、本書を読ませたいですね。そしたら、あんなに苦労することもなかったのに(笑)。
●最後に、読者にメッセージをお願いします。
木下:私も多くの本から示唆を受け、実行に移してきたことが今を作っていると思います。本書は1,000社以上の訪問取材の中から選りすぐりの成功体験を抽出したもの。言い換えれば安価に成功が約束されたノウハウを吸収する事ができるということです。本書でご紹介するノウハウが一つでも実行に移され、役立てば、と思います。