著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー
ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。
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2007/10/03
鏡の法則 ‐ 野口嘉則さん
- 今回は100万部突破のミリオンセラー『鏡の法則(総合法令出版)』の著者、野口嘉則氏にお話を伺います。本書では、人生で起こりうる様々な問題を解決するルールを紹介。あなたの人生を幸せにしてくれる1冊です。
野口嘉則(のぐち・よしのり) さん
「人生の法則、自己実現の法則」の専門家。 広島大学経済学部を卒業後、リクルートに入社。その後、メンタルマネジメントの講師として独立し、のべ3万人以上に講演する。 2003年にはコーチングのプロとしての活動を始め、「自己実現力を引き出すコーチング」が評判を呼び、EQコーチングの第一人者になる。 著書はいずれもベストセラーになるが、中でも『鏡の法則』は100万部を突破してミリオンセラーに。 また、ポッドキャスト番組「野口嘉則の"幸せ成功法則"」も人気を博し、話題を呼んでいる。
ホームページ: http://coaching.livedoor.biz/
●現在のお仕事に至るまでの経緯をお教え下さい。
野口:大学卒業後、リクルートに就職しました。その後、独立して、メンタル・マネジメントの講師として、心理学や成功法則をベースにして、個人の目標達成のためのサポートをしていました。その後、コーチングと出会い、コーチング・マネジメントの会社を設立し、現在に至ります。
●本書の「鏡の法則」について、お教え下さい。
野口:「鏡の法則」とは、「私たちの人生の現実は、私たちの心の中を映し出す鏡である。つまり、自分の人生に起こる問題の原因は、すべて自分自身の中にある」ということです。
例えば、鏡を見たら、自分の髪が乱れていたとします。でも、鏡の中に手を突っ込んで、髪を直すことはできません。髪を直すには、自分自身の髪に手をやる必要があります。
うまくいかないことがあるからといって、相手を直そうとするのは、鏡の中に手を突っ込む行為と同じです。相手を変えるよりも、自分自身を変えるほうが簡単なのです。そうすれば、人生も変わっていきます。うまくいかないことを人のせいにして責めたい人は、「鏡の法則」を信じたくないでしょう。でも、自分次第で人生を変えていくことができる、あなたにはその力があるんだということを知って欲しいですね。
●本書を書かれた経緯をお教え下さい。
野口:本書で使われているストーリーは、もともとは一昨年の4月、私のブログで4日分の記事として紹介したものです。ブログの読者からのコメントやメールが多く、私の中でもその記事は印象に残っていました。
そこで、同じ年のクリスマスに読者へのプレゼントとして、このストーリーをPDFファイルとして自由にダウンロードできるようにしたんです。
すると、多くの人たちがメルマガやブログなどで紹介してくださり、あっという間に広がっていったんです。そうした反響のなか、出版社さんから「書籍化しませんか」とのお誘いがありました。
●ブログから書籍化を仕掛けたということでしょうか。
野口:いいえ、実は当初は書籍化に関しては、乗る気ではありませんでした。すでにネット上でストーリーを公開し、自由にダウンロードできるようになっているわけですし、書籍化しても売れないだろうと思ったんです。そんな疑問を編集の方にぶつけたところ、「ストーリーを前半、後半に分けて、前半部分をネットで、後半も含めた全体を書籍で読ませる形にしてみたら、どうでしょうか」と提案されました。
でも、私としては、それはしたくなかった。ブログの読者の方から「この話を知ったおかげで、10年ぶりに両親と話をすることができました」という感動的なコメントやメールを多数もらっていました。純粋にもっと多くの人たちに、読んでもらいたい。だから、ネットで公開されているストーリーの後半を削るのは嫌だと思ったんです。その後、ほかの出版社の編集者からも、書籍化のお誘いがあったのですが、同じような返答をしました。
そんななか、総合法令出版の方から連絡がありました。その方の「ネットで全ストーリー公開することは賛成です。でも、まだネットを使っていない人たちは大勢います。本にすることで初めて目にする人もいるはずです」という言葉に惹かれて、出版を決意しました。
●書籍化するにあたって、付け加えられた部分はありますか。
野口:ネットではストーリーのみの紹介でしたが、書籍では、ストーリーの読み解き方を解説編として加えました。さらに、どうすれば過去から自分を解放されることができるのか、具体的な方法を掲載しました。これが特に読者さんに喜んでいただいてます。
(続く)
●本書が100万部を超えるベストセラーとなった背景は、どこにあると思われますか。
野口:人間関係に悩んでいて、根本的な解決を求めている人たちが多いということの現われではないでしょうか。
この本では、親と子どもの関係に焦点を当てていますが、子供時代、親との関係で培われたものは大人になっても、いろんな関係に投影します。父親との関係がうまくいかない人は、職場でも上司とうまくいかない関係であることは珍しくありません。
「本書の解説通り、父親ときちんと向き合ったことで、上司とも円滑にコミュニケーションをとることができるようになりました」とのメールを多数いただいています。
●親子の関係が希薄になってきています。そう考えると、ますますこれから人間関係は複雑になっていくでしょうね。
野口:そうですね。でも、皆さん、内心は「このままじゃいけない。家族の絆を取り戻したい」と思っています。でも、実際は満たされていないというケースが多いのですが・・・・・。
●家族の仲が不安定ですと、仕事もうまくいきませんからね。
野口:福島正伸さんが「仕事と家庭は両立しかしない」とおっしゃっています。私も、その通りだと思います。ビジネスマンのなかには、家庭などのプライベートをおろそかにしていても、一見仕事がうまくいっている人もいます。でも、長い目で見ると、いつかつまづいた方が、もう片一方の足を引っ張ることになります。仕事と家庭は両立しかしないんですね。だから、私自身、家族との時間は非常に大切にしています。
●ところで、本書を買うことで、NGOに寄付することができるんですね。このような形態は珍しいと思うのですが、寄付しようと思ったきっかけを教えてもらえますか。
野口:本書のストーリーは、すでにネットで公開されているものです。また、ストーリーは実話です。なので、心おきなく売り上げの一部を寄付できると思いました。これまでボランティアの経験がないので、ちょうど良いきっかけになると思いましたし。
どこのNGOに寄付しようか考えたとき、私自身、子供がいることから、世界の子供たちの権利実現のために活動している社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに寄付することにしました。
●最後に、読者にメッセージをお願いします。
野口:上司もしくは経営者の方に、お願いしたいことがあります。上司として経営者として、部下にどのように接しているかを振り返っていただきたいのです。部下への接し方は、部下本人ばかりでなく、部下の家族やその周囲にまで影響を与えている可能性があるということを意識していただきたいのです。
たとえば、部下を一人の人間として尊重していない上司、極端な例だと、部下を目標達成のためのコマとしてしか見ていない上司がいるとします。そんな上司は、部下が結果を出せない時に、部下を人格的に尊重できないでしょう。部下に八つ当たりするかもしれません。すると、部下は家に帰ったら、その不満を妻にぶつけます。そして、妻は子どもに八つ当たりをし、子どもは学校で弱い立場のクラスメイトをいじめる・・・、こんな感じで連鎖していく可能性があるのです。
逆に、部下を一人の人間として尊重しサポートすることができれば、「相手を尊重する」という姿勢が連鎖していきます。こうして、経営者や上司の姿勢は、会社の外にまで、つまり世の中にまで良い影響を与えることができるんです。