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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2006/09/04
ディベートの達人が教える説得する技術 ‐ 太田龍樹さん

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今回は『ディベートの達人が教える説得する技術(フォレスト出版)』の著者、ディベート・キングの太田龍樹氏にお話を伺います。本書では、話し方で損をしているビジネスマンに向けて、「どうすれば人から支持される説得力のある話し方をすることができるのか」を教えてくれます。
太田龍樹
太田龍樹(おおた・りゅうき) さん

明治大学在学中に、ディベート団体Burning Mindを設立。企業研修の講師、日本ベンチャー協議会、専修大学、明治大学などでディベートの講師を務める。ソニー生命保険(株)にてコンサルティング営業に従事。ディベーターとして大会で5年連続優勝のディベート・キング。現在、ザ・エンターテイメントディベートBurning Mindの代表。

●まず、太田さんのお仕事から教えてください。

太田: 現在は、ソニー生命保険にてコンサルティング営業を行なうかたわら、専修大学や明治大学、企業研修などで、ディベートの講師を務めています。

●ディベートに興味を持ったきっかけを教えて下さい。

太田:高校の時、偶然、テレビの深夜番組でディベートをやっているのを見て以来、興味を持つようになりました。
大学に入ってからは、ディベート団体であるBurning Mindを立ち上げました。
大学卒業後、就職してからも、顧客である中小企業のビジネスマンを対象に、サービスの一環として、ディベートの技術を教えていました。
でも、当時はディベートをビジネスにしようという気持ちはありませんでした。話し下手のため、対人関係で苦労しているビジネスマンは、非常に多いんです。僕自身は、社会貢献のつもりで、行なっていました。

●ディベートの技術を学ぶことで、コミュニケーションが上手にとれるようになるのでしょうか?

太田:はい。なかには、まったく話すセンスのないビジネスマンもいました。でも、ディベートの技術を学ぶことによって、見違えるように変わってきましたね。

●本書をお書きになった経緯を教えて下さい。

太田:ディベートというと、相手を論破するための屁理屈であるというイメージが根強いんです。僕は常々、その誤解をとかないといけないと思っていました。
そんなとき、ディベート・キングである僕に、フジテレビのプロデューサーからテレビ番組「ディベートファイトクラブ」への出演依頼がきました。2005年夏のことです。
 フジテレビの楽屋で待機していると、別の楽屋に予備校講師で有名な出口汪先生がいらっしゃると聞き、ご挨拶に伺ったんです。実は、僕は先生の参考書で受験勉強をしていたため、先生の大ファンでした。その後、先生と一緒に食事をするなど、親交を深めていくうちに、フォレスト出版の編集者をご紹介いただき、ディベートの書籍を出版することができました。

●本書は、ディベートに対するネガティブなイメージを打ち破るものになっています。間違ってディベートをとらえている方は多いんですか?

太田:残念ながら、そうです。あるとき、ソニー生命保険に勤める同僚から、「娘が中学校の授業でディベートを教わっているんだよ」と聞いたことがあります。ディベートのルールは、自分自身が命題に対して、賛成派であったとしても、否定派のクジを引けば、否定的な意見を言わないといけないことになっています。同僚はそのルールを知らなかったらしく、「そんなんだったら、実感を込めて、話せないんじゃないの?」と娘さんに尋ねたらしいんです。そしたら、娘さんは「ディベートなんて相手を言い負かせばいいだけのものなんだから」と答えたそうです。それを聞いたとき、僕は非常にショックを受けましたね。ディベートは相手を言い負かす屁理屈の応酬ではないんです。
実は同僚の娘さんだけでなく、ディベートを間違ってとらえている人は、非常に多いですね。

●では、ディベートとは何なのですか?

太田:ディベートとは、頭の中で論理的に思考して、プレゼンテーションする技術のことです。プレゼンテーションを聞けば、その人間がどのように論理を構築して、現在の主張に至ったのかが、分かります。その点が単なる屁理屈とは違う点です。僕は、ビジネスマンにとって、ディベートは最強のビジネス・スキルになると思っています。

(続く)

●本書を有効に使うには、どのようにすればいいですか?

太田:本書では、論理的に思考し、表現するというディベートのプロセスを紹介しています。きちんとこれらのプロセスを踏んでいるのか、チェックするための本として使ってみて下さい。意外と、自分では何が欠けているか、気づかないものなんですよ。

●ディベートでいちばん大切なプロセスは何ですか?

太田:ディベートは空理空論で、相手をやりこめるものではありません。そのため、ディベートでいちばん大切なのが、事前準備となります。情報を収集し、それらを頭のなかで整理していくという作業を怠ると、ディベートではなくなってしまいます。僕自身、ディベートの前には、20冊近くの関連書を読み、情報収集を行なうようにしています。

●いま、流行りのロジカル・シンキングに非常に似ていますね。

太田:はい、その通りです。ディベートも、思考ツールのひとつなんです。
僕は多くの人にひとりディベートを推奨しています。ディベートというと、相手がいないとできないと思っている人が多い。でも、ディベートとは、そういったたぐいのものではないんです。ひとり二役で、ディベートを行なうことで、相手の立場になって、物事を見ることができます。
僕は経営者はみんな、ひとりディベートをしながら、会社経営を行なっていると思っています。それは、会社、従業員、顧客と、それぞれの立場から物事を思考し、論理を組み立てているからです。
僕のオヤジは御徒町で時計の卸しと修理をしている経営者です。オヤジも、ひとりディベートで、会社を経営してきました。オヤジの場合はディベートの技術を教わったわけではなく、実体験で掴んだものなのですが。
経営者だけでなく、ビジネスマンの方にも、ひとりディベートは役立つと思っています。ひとりディベートを行なうと、多角的に物事を考えることができ、枠にとらわれることがなくなります。ディベートの思考方法を身につけると、強いサラリーマンになれますね。

●いまや、マスコミの情報をうのみにするのではなく、吟味していかなければならない時代です。客観的に物事を判断していくディベートの技術は、大いに役に立ちそうですね。ところで、太田さんは、日本にディベートが根づかない原因を何だとお考えですか?

太田:日本は腹芸だったり、内々に根回ししたりするのがよしとされる土壌です。そのため、ディベートが根づかないのだと思います。

●今後、ディベートは日本に根づくと思いますか?

太田:アメリカではディベートが定着しています。その理由は、アメリカに陪審制度があるからだと思うんです。日本でも、2009年までに裁判員制度が導入されることが決定しました。僕らは徹底的に情報を集め、論理的に判断し、表現していかなければならないわけです。今後、ディベートの技術は必要なものになってくると思います。

●最後に、読者へのメッセージをお聞かせ下さい。

太田:しっかり事前準備を行ない、熱き心を持って、プレゼンテーションして下さい。気持ちを込めるには、ジェスチャーが有効です。僕はアメリカのテレビを見て、ジェスチャーの研究をしています。アメリカ人は、ジェスチャーが非常に上手ですから。準備をすれば、あなたのプレゼンテーションもきっと相手に伝わるはずです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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