著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー
ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。
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2009/12/02
頭が良くなる「図解思考」の技術 ‐ 永田豊志さん
- 今回は、知的生産がテーマです。この分野で今、圧倒的に支持される永田豊志先生にお話を伺います。できる人は、図使いの達人です。永田さんもご多分にもれません。図解を解説した新刊も多くの読者を獲得しています。そんな永田さんの図解術の奥儀を学びましょう。
永田豊志 さん
著者のHP→ http://www.showcase-tv.com/福岡生まれ。1988年九州大学卒業後、リクルート入社。新規事業畑を歩み、企業向け通信サービスの営業を経て、アニメ、漫画、ポケモンゲームなどで知られるメディアファクトリーの設立に参画。様々なコンテンツビジネスに関わる。
その後、独立し、ワークスコーポレーションにてDTPWORLD(デスクトップパブリッシングの専門誌。現在は休刊)やCGWORLD(コンピュータグラフィックスの専門誌)などの編集長を務める。
同時期に、フロッグエンターテイメント代表として、テライユキなどCGアイドルのキャラクターの版権管理を行う。テライユキはCGアイドルとしては初の写真集刊行やフジテレビからのDVD、エイベックスからCDデビューなどが話題に。
その後、企業の映像プロモーションを支援する株式会社スマートイメージを設立、IT企業のマーケティング支援を行っていた株式会社フューチャーワークスと合併し、現在は株式会社ショーケース・ティービーの取締役COO。EFO(エントリーフォーム最適化)やLPO(ランディングページ最適化)など企業向けWeb改善サービスや映像プロモーションなどを手がける。
今回は、知的生産がテーマです。この分野で今、圧倒的に支持される永田豊志先生にお話を伺います。できる人は、図使いの達人です。永田さんもご多分にもれません。図解を解説した新刊も多くの読者を獲得しています。そんな永田さんの図解術の奥儀を学びましょう。
●フレームワークのリフィルが欲しかった
本書を書いたきっかけは、自分が「こんな本があれば」と思ったからです。 つまり、仕事をする上で、図解のリフィルが欲しかったのです。本というのは、普通は専門家が専門分野を解説する目的で書くのだと思います。でも、私は、いつも自分が「こんな本があればいいのに」と思うものを書いています。自分の頭を整理したり、自分が勉強する目的で書き、その成果を皆さんにも共有していただくという発想です。
●手書きにこだわる 本書は、図解の仕方を解説した本ですが、ご存じのとおり、図解の本は、すでに類書がたくさんあります。でも、本書のように「手書き」にこだわった本はありません。 ビジネスで使う図と言うと、最近はパソコンを使って書くことが多いと思います。ソフトも充実していて、たとえばマインドマップをPCで書くソフトなどもあり、私も重宝しています。 でも、やはり手書きのほうが味がありますし、微妙なニュアンスも表現できます。結局、よりよく伝わりますし、発想も広がります。書くのも早いと思います。だから、アイデア発想や会議では、手書きが適していると思います。要するに使い分けが大事なのです。
アイデア発想やコミュニケーションは、手書きの図で 当社でも会議では図を多用しています。実は、当社は会議をできるだけ短時間で終えられるように、いろいろな工夫をしています。たとえば、報告はすべてメールですし、会議自体は全員立ってやっています。そんな中でも、素早く、確実に情報を共有するには、図解が一番です。 その哲学は、本作りにも生かしました。図解の本だけに、図の下絵はすべて自分で手書いたのですが、それをスキャナ-で読み込み、編集者にデータを送り、イラストレーターが描き起こすというやり方で進めました。それでも、大変でしたが、一番効率的にできたと思います。
●図解はパターンから覚える
図解と言うと「難しい」とちゅうちょする人が多いようです。しかし、私は「誰にでもできる」と確信しています。もちろん、多少は基本を押さえたり、練習したりする必要はあります。 そもそも、世の図解本は、パターンが多すぎて使いこなすのが大変です。それに、ルールが多すぎて、かえって自由な発想を妨げています。 まして、出来上がった図が難解すぎて、解説しないと理解できないという本末転倒なことさえ起きています。 もう一つの欠点は「どの本も目的から入っている」ところです。「こういう時は、この図を使え」というものです。でも、目的から入ると、かえって発想が狭められてしまいます。 だから、本書では、形から入ることにこだわっています。まず、パターンをいくつか覚えてしまうのです。あとは、その中から自分が伝えたいことにしっくりくる図を使えばいいのです。そのほうが、習得が早く、発想も柔軟になります。
●図解はすべてに活かせる 図解は、あらゆるシーンで活用できます。たとえば、手帳にメモするときにも使えます。一般的な手帳のノウハウでは、手帳をスケジュール帳に使うことを想定しています。 でも、私はもったいないと思います。むしろ、スケジュール管理は、デジタルで十分です。手帳は、それこそメモや振りかえり、アイデア発想に使うべきです。 図解は、ビジネスの現場以外でも使えます。たとえば、本書でも最後のページで紹介しましたが、自分の夢を表現したり、ライフプランなどにも使えます。
●ライフワークは知的生産性の研究 私は、知的生産性を研究することをライフワークにしたいと思っています。 ご存じのとおり、日本は製造分野が強く、その技術は世界にも影響を与え続けています。ところが、考えることに関しては、欧米の一部のエリートが作り世界に発信しています。これは由々しい事態です。 最近は、動くことそのものの価値がどんどん下がっている時代です。ホワイトカラーの仕事は、考えることの比重がますます高くなっています。にもかかわらず、考える技術を輸入する一方では、欧米の後塵を拝するばかりです。 だから、ちょっと大げさですが「日本の知的生産性を上げることが、自分のミッション」それくらいの気持ちでやっています。
●まずは手を動かそう!
本書をお読みいただいた方には、ルールに縛られるなと言いたいです。ビジネス書の読者の中には、読んでも「いいことが書いてあった」と感心して終わる人も多いみたいです。でも、本書の読者には絶対にそうしてほしくないです。 むしろ、本書をたたき台に、どんどん改良を加えていただきたいです。その上で、ご自分のものにしていただきたいです。 そのためにも、まずは手を動かしてほしいのです。最初はうまくできないかもしれません。でも、手を動かすうちに、きっとうまくできるようになります。ぜひ、頑張ってみてください。
■藤井のコメント
永田さんの本はどれも実用的で、すぐに仕事に生かせるものばかりです。 取材の時に、手帳を見せていただいただいたのですが、ぎっちり手書きで書かれていて、図解も多用されていました。「これならコミュニケーションは円滑だろうな」と思いました。 実は、図を書くにあたっては、簡単なイラストの書き方の本で研究しているとかで、ずいぶんと努力もされているようです。 永田さんの本は、いつも参考書籍や資料が充実しています。これは、面倒なことなのですが、いつも厭わずにされています。ご自身の利便性のために書かれているということで納得しました。私たち読み手は、遠慮なく共有させていただけるわけです。 著者はベンチャー起業家ですが「自分が不便を感じたものを形にした」という意味では、ベンチャーがビジネスを立ち上げるプロセスに似ています。ご自身のキャリアがそうさせたのかもしれません。