著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー
ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。
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2012/09/11
『リッツ・カールトンと日本人の流儀』 ‐ 高野登さん
- 人生の価値は、社会や周囲にどれだけ貢献したかで決まる。そのために、今日から私たちは何をなすべきか?リッツ・カールトンで「サービスの真髄」を体得し、日本各地で人財・地域づくりのサポートに尽力する著者が伝えるホスピタリティとリーダーシップ。 ...
高野登 さん
1953年、長野市生まれ。前リッツ・カールトン日本支社長、人とホスピタリティ研究所所長。プリンスホテルスクール(現・日本ホテルスクール)卒業後、渡米。NYプラザホテル、LAボナベンチャー、SFフェアモントホテルなどの名門ホテルでマネジメントを経験し、1990年にザ・リッツ・カールトン・サンフランシスコの開業に携わった後、リッツ・カールトンLAオフィスに転勤。その間に日本支社を立ち上げ、1994年にリッツ・カールトン日本支社長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
-新刊『リッツ・カールトンと日本人の流儀』を拝読しました。素晴らしい本でした。この本の内容について、簡単に教えてください
「日本人は、どんな人間か?」「これからどんな風に生きて聞くべきか?」について語りました。私は、学者でも、哲学者でもありませんので「日本人はこうあるべきだ」といった、立派なことは言えません。しかし、日本とアメリカで、それぞれ20年働いた経験がありますので、その経験と出会いを活かして書きました。人生は、社会や身の周りにどれだけ貢献したかで決まると思います。そのために、私たち日本人がなすべきことに対して、私なりの答えをまとめたつもりです。
-どうして、このタイミングで、このような本を書こうと思ったのですか?
やはり、3.11の震災が大きいです。あの時、多くの人が、自分たちが日本人であることを改めて意識したはずです。ちょうどテレビもコマーシャルを自粛していましたので「自分たちは何ものなのか」「自分たちに何ができるのか」を考えたと思うのです。それは「日本人が、日本人らしさを取り戻すチャンス」だったと思います。しかし、最近になって、早くも震災の記憶は薄れ、暮らしが元に戻りつつあるように感じます。もう一度、自分たちをじっくり考える機会を作りたいと思い本書を書きました。
―お仕事を通してお感じになったことが書かれています。そもそも、なぜホテル業界を選ばれたのですか?
私は、もともと内気で、人見知りばかりしていました。ホテル業界に関心を持ったのも、手に職を付けて裏方の仕事をしようと思ったからです。それで、ホテルのスクールに入りました。
―そんな内気な少年が、単身アメリカに渡られるわけですが、そのきっかけはどんなことだったのですか?
修学旅行でアメリカに行き、そのスケール感に衝撃を受けました。私は、長野の農家で生まれ育ったのですが、修学旅行でアメリカに行ったときに、農薬散布をする様子を見ました。それを見て、アメリカの規模を知り、「このスケール感に触れていたい」と思ってしまったのです。その後、即ニューヨークに行きを決めました。
-高野さんというと、私にはやはり「ホスピタリティの伝道師」のイメージがあります。高野さんにとって、ホスピタリティとは、いったいなんでしょうか?
ホスピタリティは、サービス産業で専門用語のように使われています。しかし、私は「生き方」そのものだと思っています。ホスピタリティを持って人と接すれば、人とのかかわり方も、生き方も、ひいては人生そのものが変わります。
-ホテルをお辞めになってからも、ホスピタリティに関係する活動をされていらっしゃいますね。
私は、大阪でリッツ・カールトンを開業したときから、ホスピタリティの精神を、様々な世界、たとえば地域や教育の現場などに伝えることが、私のミッションと考えるようになりました。実際に、リッツ・カールトンを退職してからは、日本各地で人財・地域づくりのサポートに尽力しています。
-本書を、著者としてどんな風に読んでもらいたいですか?
階段の踊り場のように読んでもらいたいと思います。現代人は、少し忙しすぎると思います。昔の人は、もっとゆっくりと、色々なことを考える時間がありました。たとえば農作業の合間の一服する時間がありました。この本をきっかけに、自分と対話する対話する時間を作ってもらえたら嬉しいですね。
-ありがとうございました
【藤井の感想】
高野さんには、はじめてお会いしましたが、やはりホスピタリティ精神に溢れる方でした。私たちインタビューアーへのご配慮も半端ではありませんでした。そのためインタビューも素晴らしい空気感の中で進めることができました。ご著書のほうは、これまで集大成のように感じました。アメリカで長く働いた方は「アメリカがどれほど素晴らしいか」「日本はどれほどダメか」を語る本が多いようです。そのせいか、日本の若者たちの中には「日本が好きではない」「日本に誇りが持てない」という人が多いのは残念なことです。しかし、本書は違います。日本とアメリカの両方のいい点をあげ、改めて日本人の素晴らしさを教えながら、これからの日本人が進むべき道を示してくれます。自分にこれから何ができるのか、いろいろと考えさせられる本でした。ぜひ、手に取って読んでみてください。
人生の価値は、社会や周囲にどれだけ貢献したかで決まる。そのために、今日から私たちは何をなすべきか?リッツ・カールトンで「サービスの真髄」を体得し、日本各地で人財・地域づくりのサポートに尽力する著者が伝えるホスピタリティとリーダーシップ。